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職業病? ありますとも。大アリです。
電車とかバスに乗っているじゃないですか。
そんで、なんとなく窓の外を観ていると、気になる地形が・・・。
「あれは絶対古墳だな。」とか、なんか工事っぽいことをしているんですけど、ちょっと工事とは違う現場を観ると、「あれ、発掘調査だな。」と。

例えば、こんな風景。
私、これでも(どれ?)本職は遺跡の調査なのです。
よく、新聞やテレビで視るアレ。発掘調査というヤツです。
全国で、たった6千人しかいない、超レアな仕事をしているのですよ。
で、遺跡調査の第一歩は「情報は自分の足で稼げ。」
よく報道などでは地面を掘っている様子が流れていますが、そこに行き着くまでにはたくさんの時間と過程が必要なのです。
なにかの映画のパクリではありませんが、「事件は会議室で起こってるんじゃない!事件は現場で起こってるんだ!!」と同じように、室内で地図とにらめっこをしても遺跡のことはわかりません。
遺跡は現場にしかありませんから。だから、遺跡の調査は現場主義なのです。
かといって、現場に行けばなんでもわかるというと、そんな簡単な話でもありません。
古代から現代にかけて、人間は自然を改変しながら生きてきました。
昔と地形が変わっていたり、あったはずのものが地面に埋もれてしまったり。
難しいケースも少なくないんです。
そこで重要なのが経験値。日頃の訓練が大切なのです。
そうなると、自然と地形を読むクセが付いてしまうんです。
この職業病は私だけではなく、同業者のほぼ全員が同じことをいっています。
もう完全な職業病ですよね。
しかも、全国に6千人しかないので、発掘調査現場を観ると、「ここは○○○市だから・・・。あぁ、彼の現場か。」と、誰が担当している発掘調査か?までわかってしまうのです。
パッと観ただけで、「あいかわらずうまいなぁ。」とか「あいつ、ぜんぜん上達してねぇじゃん。」までわかってしまうんです。
逆にいえば、自分の仕事もバレてるということ。
実際、突然、「あそこで現場してたでしょう?」って、電話がかかっていることがありますもん。
狭い業界ですので、けっこう怖いんですよ。
まぁ、いいヒマ潰しにはなりますけどね。
飛行機みたいに雲の上に出てしまうと無意味ですけど、陸上を走っているかぎり、ヒマ潰しには事欠きません。
遺跡なんて、実際はどこにでも存在しているのですから。
弥生時代ってあるじゃないですか?
あれ、実は、東京大学本郷キャンパスの中の遺跡が起源なんですよ。
通称「本郷キャンパス」と呼ばれていますけれども、住所的には「弥生町」が含まれていて、その「弥生町」から出土した土器だから「弥生式土器」という名前が付けられたんですね。
で、そのころ、まだ弥生時代がなくて、全て「古代」ということだったんですけど、「弥生式土器」は「古代」で一括りにするには特徴がはっきりしすぎている。
じゃあ、ということで、「弥生式土器」を使用する時代だから「弥生時代」にしよう、と決まったわけです。
弥生時代って、名前の由来は「住所」だったのですよ。
まさか、あの東大の中に遺跡があるなんて、普通考えませんよね?
でも、私たちにとっては、なにも不思議ではないのですよ。
遺跡は、マイナス海抜、つまり、海面より下でも発見されるんですから。
遺跡にとって「ありえない」こそ「ありえない」です。
だから、ぽけ~っと窓の外を観ているだけで、自分の経験値稼ぎにもなるし、時間も潰れるし、一石二鳥なわけなのですよ。
そりゃあ、職業病にもなるはずです。
遺跡だけじゃなくて、お寺や神社、屋根の色まで観察対象になるんです。
屋根の色?と思うかもしれませんが、場所によっては、「この辺、赤い屋根が多いな。」とか、「緑の屋根って珍しいけど、なんか意味があるのかなぁ?」とか。
あとで調べると、やっぱり意味があったりして。
窓の外を観ているだけも十分に楽しめるわけなんですよ。
この業界は、ゲームと同じで経験値が重要になるんですよ。
だから、最初のうちは「どれが古墳なの?」とわからないと思いますけど、慣れてくれば、誰だってわかるようになりますよ。
普通、移動中には、本を読んだり寝てたりするでしょうけど、一度トライしてみてください。
意外とおもしろいですよ。
なにせ、一番お金がかからない職業病ですから。
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