日本昔話風〜滋賀県近江の妖怪〜penさんとのコラボ作品〜 | 全国No. 1短編小説家ー中国地方の観光&グルメレポ

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るるぶとかタウン情報おかやま、winkなどに載ってるスポットばかりアップしてます。メディア記載の場所に実体験したレポかな(笑)

ーーー滋賀県近江の妖怪ーーー




滋賀県近江の山の 麓に住む「彦兵衛」。

彼の両親は織物職人として 生計を立てていた。

彦兵衛は 母親作った織物を町に売りに行く仕事をしていた。

しかし6月は「蛍売りの仕事」も していた。

父親が籠職人なので

それに蛍を入れて 町に売り歩いていたようだ。


彦兵衛の 幼馴染に弥七という 「ところてん売り」

がいた。

年は彦兵衛と同じで今年20歳になる。

また その妹の綾乃は 亡き父の後を継いで シャボン玉を売ったり

枝豆を売ったりして生計を立てていた。

だが 最近 ずっとずーっと思い続けてきた

綾乃に 彦兵衛は 告白したけど

「返事は また後日」って

言われて  はや  よおか も 過ぎた。



聞けば  綾乃は 魔のムカデに噛まれて 若衰という病に伏せたと聞くが……

綾乃の両親も 魔のムカデに噛まれて 中年衰にかかり 去年亡くなったばかり………


魔のムカデは ムカデの数倍の大きさで 滅多に近江の町には 現れないのに


なんとか 綾乃の回復を願うばかり。

魔のムカデに 噛まれたら 5割以上は 衰弱が続き

助からない。



綾乃の兄の弥七は 妹には 合わせねえって

言ってる。



ところてん売りの前後に 綾乃の看病で たえへんそうだ。

ワシも 手伝うけん って 言っても

「いんや オラ お前に 綾乃は 会わせたくねえ」

って 頑固に 綾乃と 会わせてくれねえ


弥七と綾乃の お母さん

あんなに元気に 枝豆を売って歩いていたのに





弥七と 綾乃の おとっつあん

あんなに 子供達に喜ばれる

シャボン玉売りの人だったのに


魔のムカデのせいで…………




そして

綾乃………



近江の町一番の美女と呼ばれた綾乃に 満を持して告白したのに……


会わせてくれないなんて……

弥七よぉ お前らしくないよ。

ワシはなぁ

綾乃の返事の続きが  聞きてぇんよ



彦兵衛は滋賀県近江の八幡宮の裏山の 外れ道を散策していた。


それは 弥七の両親が 生きてた頃 

彦兵衛らが子供だった頃

けっして行ってはいけないと言われた ハズレ道を

彦兵衛、弥七、綾乃と 散策して

ポツンと一軒家が あって

そこで 優しい おばあさんに 美味しい 団子汁とか スイカとか ご馳走になったからだ。


「あのおばあさん まだ元気かなあ。

昔を思い出して

一人 歩いていたら 道に迷ったかのぉ」



渓流沿いを歩いていたら

六地蔵を発見した。

しかし

六地蔵は 妖怪ヨダレのおじさんに

ヨダレを かけまくられるという イタズラをされていた。





ヨーダ

ヨーダ ヨーダヨダヨダヨダ 

ヨダ ヨダレーー



彦兵衛は 妖怪を見て逃げるんじゃなくて 

啖呵を切った。


「お地蔵様に なにすんねん!

うせろーー」


風呂敷鞄の中の塩を ヨダレのおじさんに撒いた。


ヨダレのおじさんは 逃げ出した


ドタドタドタ………


「可哀想に こんなに ばっちぃヨダレを かけられてからにー」


彦兵衛な 渓流沿いの水辺に桶らしきものを発見した。

それに水を入れて お地蔵を洗った。

さらに 売り物の 織物で 綺麗に 

六地蔵達を拭いた。

「こんなもんで 勘弁してなぁ。お地蔵様達」


さらに 母親お手製の

織物頭巾を

お地蔵様にかぶせた。

「よっしゃあ 畳んでた頭巾だけど

これ 売り物だけど

ちょーど6個あったーー

よし!これは

脱臭効果もあるんです。

お地蔵ーー また来ますけん

今日一日は これを 装着してえてくださいな」



六地蔵達は なんだか笑顔になった 

ような気がした。



渓流沿いの六地蔵から 真っ直ぐ歩くこと3分。

昔 綾乃達と来た道を 突然思い出して

渓流沿いから 北東へ さらに3分歩いた。


すると






昔 優しくしてくれた おばあさんの家に たどり着いた。

「おやっ

今日は ひとりかい

随分みかけないうちに 大きくなったねぇ」


おばあさんの優しそうな雰囲気は そのままだが

姿が7年前と全く変わってない


怪訝な表情になる彦兵衛。


しかし おばあさんは こう言ってきた。

「なんか 訳ありのようだなぁ

ワシに 話してくれよ

少しでも 話せば楽になるよ」


おばあさんは 団子汁や 山菜の天ぷら、スイカを

どんどん運んで来てくれた。


美味しくいただいたら

今度は  養命酒、甘酒、泡盛

酒を たらふく飲ませてくれた。


しっかり語り疲れた 彦兵衛は ぼぉーっとしてきて 千鳥足になった

「彦兵衛や

今夜は 遠慮なく 隣の部屋で 寝ていかれぇ。

明日の朝に帰りんしゃい」


酔っ払った彦兵衛は 相変わらず優しい おばあさんの お言葉に甘えて 一晩泊まらせていただくことにした。




どれくらい時間が経ったのだろうか??

彦兵衛は

飲み過ぎたせいか 小便が出たくなって

厠へ行こうとした。



ガコガコ

ギコギコ



変な音が 聞こえてくるぞ。


彦兵衛は 思わず

そおーっと

障子に穴を開けて 覗いた。








そこには 優しいおばあさんから

鬼婆に変化した 恐ろしい妖気を放った妖怪がいた。

また 最近 滋賀県近江で 妖術で悪さをする悪噂の高い狸妖怪まで いるではないか 

信楽狸という妖怪らしい。

(多分 酒好きな信楽狸は

鬼婆から 酒をもらいに来てるだけのようだ。(^^)







「あわわわ

見てはいけないものを見てしまった」


案外 冷静に 音を立てずに

その場を立ち去り ポツンと一軒家から

数十m離れたと思っていた



しかし


「またれぇーーい!

ワシに食われろーー 

生きた血が 我が寿命なりーー

逃すかーー」


猛スピードで 鬼婆が追ってきた。


「化け物めぇ とんでもねえ速ぇええ」


ドーン!!



大きな口で彦兵衛が食われそうな時に

そこには 大きな石の壁が 

鬼婆の攻撃を防いだ。


「我々は 今日の夕方に あんさんに 助けてもろうた地蔵です。

あんさんに 恩返ししたい。」


六つの顔を持つ 大きな岩の妖怪風な生き物は彦兵衛に 鬼婆を通せんぼしながら

言った。


「こしゃくなーー!」

鬼婆の攻撃は やはりエグい!


どんどん 六地蔵の顔が拳や蹴りで 砕かれている


「早く行きなさい あんさん

この鬼婆は強い。

我々は 足止めにしかならぬ。

早く 逃げて」


なんとか 体当たりで鬼婆を食い止める地蔵の合体した妖怪の言う通り

彦兵衛は

必死で逃げた。


「六地蔵様達  ありがとうごぜえます。

ワシのために 身を呈してくださるなんて」


どういうわけか

必死で逃げた先は

山の麓にある

弥七と綾乃の住む家の中だった。


「てぇへんだあ

てぇへんだあ

昔 ワシらあで 行った あのポツンと一軒家の主

なんと 

鬼ババアだったんじゃあ!!」


必死になっていたのか その言葉に我を忘れたのか

「あんだってぇー!?」

と 驚いた 弥七は

襖を開けて


会いたくないと言ってた 綾乃の姿を

無意識に 彦兵衛に見せてしまったのだ。



うぇうぉうぇ?WHY?

あまりに変わり果てた 綾乃の姿を見て腰を抜かした彦兵衛。



こ こんな  す  が た だから 

彦兵衛 に 会いたくないと  あたし 言ってた の ご  め ん……

あの時の返事の 続き  あなた 

の  こと ほんとは あたしも  す、 す

好き〜

ハァハァ  ハァハァ

ゴホ ゴホッ!


弱々しく むせながら

綾乃は 病床づてに言った。


「綾乃はむごたらしい姿を君に見せたくなかったから

君と会いたくても会えない

ずーっと苦しんでたよ」

弥七は 小さな声でそう言って涙した。



その時


ガシャっ!


大きな音と共に 鬼婆が入ってきた。


「臭いで わかったぞ

見つけたぞ!

彦兵衛、

そして 弥七だな あんたは

そして 病床の女性


もしかして……」








病床の弱々しくなった綾乃を見て 急に攻撃的だった鬼婆が 優しいおばあさん時の表情になった。


「綾乃……昔の ワシを思い出したわい。

ワシも綾乃の頃の年の時に 魔ムカデに噛まれて若衰になったんよ。」


…………

…………

彦兵衛と弥七は 思わぬ鬼婆の発言に

目がテンになったようだ

「そして 

いよいよ死を悟った時に 妖怪王ぬらりひょんが 現れたんじゃ。」


「あの 伝説の妖怪王のことか?」

彦兵衛は 鬼婆に ささやいた。


「そうじゃ。

ぬらりひょんは こう言った。 今から見た目年齢20歳のままで50年は生きれるように妖術をかけよう。

ただし 人間を一人食い殺すことにより どんどん寿命が伸びる術じゃよ。

いや 正確には 人間を食うことは すきやきを食うのとは 比べ物にならないほど貴様は幸福ホルモンに満たされようぞ。

どうする? 術を拒むか 受けるか 決めてくれ

と 言ってきたから ワシは 術を受けた。


が、ぬらりひょんから受けた妖術の副作用で7日後から 見た目年齢80以上になってしまうし 人を食うのが何より楽しみになってなあ ………。


 7年前は まだ君らはガキだったから見逃しただけじゃ」


そう語り終えると鬼婆の目から涙が溢れているのがわかった。


「なんか皮肉なもんじゃ。

ワシの若い頃と 年齢も見た目も よー似てる

綾乃には親近感を感じる。

ここで おまえらに問う。

副作用があるやもしれん。

けど この娘を助けたいと思わんか?!」



みんな食われるんかと思っていたら

思わぬ 綾乃を助ける 選択肢を投げかけてきた鬼婆。


みんな満場一致で 黙って うなづいた。


すると 鬼婆は何やら テレパシー玉というのを 妖怪狸に 送るため30分 彦兵衛らを外に出した。


そして 約束の30分後、綾乃が伏せっている部屋に入ると……


鬼婆が 自身の心臓を 取り出した。


ハァハァ……

うぐぐが………

ワシの ぶんまで

綾乃よ


幸せにな……

 この 心臓だと あと50年は 病知らずで生きられる


鬼婆は自身の心臓を 綾乃の心臓に注入した。



そして 鬼婆は力尽きた。

綾乃は 日に日に 急激に回復して

3日後には元の美人な綾乃に戻った。




「改めて復活おめでとう 綾乃。」と弥七。

「ワシ、綾乃と3日後に 式を挙げることになった」

はしゃぐ彦兵衛。

「もぉ、ウチが回復した途端

彦兵衛ったら、プロポーズするんだもん。

照れるわよ」と綾乃。



そして さらに3日後には

両親も親族も集めて 結婚式が

とり行われることになった。


しかし 綾乃が 顔に 被り物をして

なかなか 取ってくれない。

弥七らが

はよーとれ 被り物をーーと しゃしゃりたてる。


彦兵衛は言った。

「鬼婆の後遺症とは

このことか??

まぁ ワシやぁ 元気な綾乃と何十年も暮らせるなら

それでええ」


綾乃は自ら

顔の被り物を取って放り投げた。


すると


綾乃の顔は




綾乃の顔は?



綾乃の顔は

鬼婆の心臓移植蘇生術の例の後遺症か!?





綾乃の顔は









のっぺらぼうになっていた。



彦兵衛と のっぺらぼう綾乃は そのあと50年くらい生きて幸せにくらしたそうな めでたし めでたし


追加。


魔のムカデな 信楽狸妖怪の「引き寄せ集合酒の術」により 全て(全部で100匹)集められ

信楽狸の焔の術により 全て 消滅したそうな


その後  滋賀県の信楽狸は 神格化され

「信楽焼」として 世に広まったそうな


おわり