ここは、どこなのだろう
隣に、あるはずもない
君の姿が見え隠れしている


ああ わたしは何を
手放したのだろうか。

それでも、
君の期待に絶対に応えられないと
そう自覚したとき
全力で諦めたのは、わたしの意思

君を解放する
たとえ何年後も後悔していたとしても
本懐である
そのことに疑問はないから

悲しい独りであっても
失望されても
それがわたしの本懐である

初めから覚悟のある始まりだった
手を取り合いたくては伸ばさず
まがらない一線が、いつも
いつも見えていた
だけど
あらゆる価値観を共有した

たくさんの時を
費やした

無駄ではない

そう、
幻になるだけ。

なのに
ここは、どこなのだろう
隣に、あるはずもない君を
ふと見てしまうのは
なぜだろう

あれから
時は止まっているようで
世界が無声映画のようで
何年たったのかさえ
解らないなんて

それでも、
解き放った君が あの時より幸せならば
本懐である

笑顔
取り戻して
己が道を行く君を
送り出せた

覚悟の辛さより
後悔より
間違わず君を解放したこと
もとよりそれが
本懐である

だからどうか、
後ろを見ないように

わたしが幻を見たとしても
君は前を向いて
二度と うしろを 見ないように



2016.5.20 廈淡