薄明の世界 第二十七話
宗弦が数珠を握る様を見て、綾は微笑んだ。
何故微笑むのか分からずに、宗弦はただ当惑するばかりだった。
再び殺そうとしているのだぞ。
今度は、魂すら滅ぼそうとしているのだぞ。
何故、微笑みかける?
「私があなた様を愛しているがゆえにございます」
綾は答えた。当然のように。
「もう抱きしめることも抱きしめていただくことも出来ませぬが……」
「おまえはもう戻ってこないのだな、綾」
宗弦は話を逸らすように言った。
「私の身体は蘭と共に在ります。あの子は寂しがり屋で一人ぼっち。私がいなければなりません」
「だからおまえはその蘭という子供の犠牲になったというのか! 自らの命をも天秤にかけなければならなかったのか!」
「そんな私を愛してくださったのは、あなた様だったと信じております」