薄明の世界 第八話
若い僧を見なかったか、だって?
おいおい、この辺には寺なんてひとつしかねぇんだよ。どこにあるかだって?
そんなもん、自分で、探せよ。
せっかく昼寝してたってのにわざわざ起こした挙句にくだらねぇこと訊くもんじゃねぇ。
そりゃ、野暮ってもんだぜ。
知らないなら、いいだと?
ちょっと待てよ、そこのお侍。おいらを誰だと思っていやがる。
この辺じゃ有名な佐吉ってもんだぜ。知らねぇ? そりゃそうかもな。
あんたみたいな身なりのお侍の耳にまで入っていたら、おいらはとっくに首が飛んでるぜ。
馬鹿言ってんじゃねぇ、すりでもねぇし火付け盗賊でもねぇやい!
こう見えても身は潔白なんでい!
この辺のことなら、何でも知ってるぜ。だが、タダで教えるわけにゃいかねぇなぁ。
ほほう、金なら幾らでも払うと来たか。そうこなくっちゃな、お侍。
あんたぐれぇの身分のお侍なら、気前がよくなくっちゃいけねぇや。
若い僧のことを教えてくれってか。
さっき、何でも知ってるたぁ言ったが、その坊主のことは何も知らねぇな。
だが、調べてやってもいいぜ?
もちろん、報酬は割り増しでなきゃ、やらねぇがな。
よし! 交渉成立だ。
捜してやるぜ。
宗弦という坊主だな?
どうも辛気くせぇ名前の坊主だな。
見つけたらどうするんでい?
……分かった。気は進まねぇが、行ってやる。
しかし、大名屋敷とはねぇ。
間違ってもおいらをその刀で殺そうなんて真似しやがるなよ?
なぁに、すぐ見つけ出してみせらぁな。
心配しねぇでお侍はどこかで酒の一杯でも引っ掛けてから帰りなよ。
さっそく、捜してくるぜ。
あんたのお殿様によろしく言っときな。
この「石田の佐吉」が必ず、見つけ出しておくから覚悟しておけってな。
まぁ、この名前は頂き物だが気に入って使ってるんだ。
頂いた本人ぐれぇ、でっかくなれりゃ俺もせいぜい贅沢な暮らしができるってもんだがな。
おっと、話がそれちまった。
大船に乗ったつもりで、胸張って待ってろや。
ちょっくら行ってくらぁな!