ワインを題材にした人気漫画『神の雫』が、現在テレビドラマ化されておりますが、これにより再度の新たなる葡萄酒ブームが起こりはしないかと心配でなりません
勿論、偉大なる醸造酒のワインが世の中の多くの方々に深く認知されて、更なる存在感が広く流布して行くことには全く異論や反論などありませんが、知名度が上がることで現実離れした価値が世間を横行するようになってしまう懸念が否めない点を危惧しております
これまでに、ボルドーメドックで一級品を名乗る五大シャトーの1つに数えられるラトゥールやブルゴーニュで特級畑の赤を代表する一本とされるロマネ・コンティ等が、信じられないような常軌を逸したかの値段を付されて売りに出される機会と幾度も遭遇して参りました
ラトゥールは同じポイヤック村のラフィットを遥かに凌ぐ価格で市場を席巻する場面に直面したことがありますし、ロマネ・コンティに至っては味よりも値段が高いと言われることもある位ですから、ロマネ・コンティに法外な金額を払うことを避けて、ニューワールドのカリフォルニア・ワインであるカレラ・ジェンセン・マウント・ハーラン・ピノ・ノアールを採る方が賢い気が致します
もっとも、今ではロマネ・コンティと見紛う程の味を持った逸品として知られ過ぎている為に、割りと高値で目にするようになってしまったきらいもあるのですが、それでもロマネ・コンティの比ではありません
誰しも必要以上の金銭を支払ってまで高い買い物を為さりたいとは考えない筈なのです
確かに価値観は十人十色で千差万別な人それぞれのものではあります
しかしながら、仮に有り余る程の経済的な余裕が有ったとして、等価交換が成り立たない経済行為を甘んじて受け入れる選択肢は、実に愚かしい行動であると断じるべきものです
そのような傲慢な精神的土壌こそが、喪失した10年の直接的な契機になったバブル経済期を助長したものでありましょう
「国際優良銘柄の一角を形成する多国籍企業が主導の、世界戦略を念頭に置いた積極的な海外への資本流出こそ、国内に於ける労働力や産業の生産力と言った面での経済の空洞化を招いた背景になり、更なる1985年の円高誘導政策プラザ合意がバブル経済を引き起こす決定的な要因に繋がる引き金となった」と主張・理論を展開する方もいらっしゃいますが、それだけが原因ではないようにも思えるのです
派遣や契約と言った形態での雇用を採り入れて是が非でも利益を追求して行こうとする経営者の在り方や、物質的な繁栄にのみ幸福を見い出そうとする拝金主義が罷り通って誤った認識が為されている今の世の常識や価値観、著しいスピード化が発達した現代社会に在って利便性が上がりながらも精神面に余裕が無くなった生活スタイル等は、考えてみると全て人間の欲求や損得勘定を抜きには語れないものばかりです
極端な話が、あらゆる事柄は人間の欲や煩悩を充足させる為の動機が根底に存在して、初めて成立し得るものであると言えます
人間や人類にとって最も身近な生死の問題に関わるのが経済行為であるからこそ、経済学に於いては「経済は下部構造を為す」と位置付けた上での学術考察が進められて参りました
その根本を成り立たせている人間の心の持ち方や志向する先が僅かでも狂ってしまえば、行き着く先も望まざる結果を導くことになるのは必至です
狂気的に過剰な利得・利潤を追い求めることや排他的な競争心の跳梁跋扈する姿は、資本主義の完全なる負の側面であると言えるものであり、ひいては全生命体にとっての悪しき部分と呼ぶべきものではないかと思います
長い歴史を築きあげて来た我々は、本気で自身の進化に取り組まなければ生き残りを果たせないのではないでしょうか