今回は「コット、はじまりの夏」(2022)
(原題 An Cailín Ciúin/英題 The Quiet Girl)
を紹介します。



監督・脚本は初の長編作品を手掛けることとなったコルム・バレード監督。主演は本作で鮮烈デビューを遂げたキャサリン・クリンチ。
制作はアイルランドで劇中では英語とアイルランド語が入り混じります。
第72回ベルリン国際映画祭では、国際ジェネレーション部門でグランプリを受賞、第95回アカデミー賞ではアイルランド語映画として初の国際長編映画賞にノミネートされています。



あらすじ
舞台は1981年、アイルランドの田舎町。
大家族の中、孤独を感じる9歳の少女コットは母親の出産が終わるまで、夏休みの間親戚夫婦の元へと預けられる。妻アイリンと夫ショーンのもとで愛を受け、自分の居場所を見つけていく。



ほぼ育児放棄の父親、多産DVも疑われる大家族の世話で手一杯な母親、貧困家庭。学校でも馴染めないコットが、一夏の間心の拠り所を見つけた。


最初は無口で寡黙だったコットが次第に口を開き生き生きとしてくる過程が繊細に描かれていた。特に素っ気なかったショーンと打ち解けていき二人の関係性が丁寧に紡がれる様子は、ほっこりと温かい気持ちに包まれた。




ドアの外から一歩引いて画を映しているのが印象的だった。コット目線の描写や車の窓から見える景色、木漏れ日、自然の音全てが綺麗で心地よく落ち着いた。

機能不全の家庭とコットの閉じた心を思わせるどこか無機質で冷たい質感と親戚夫婦の陽射しのような温かさが混在している。



特に胸に沁みたのは、ショーンとコットが夜の海辺で話すシーン。ショーンの「沈黙は悪くない。たくさんの人が沈黙の機会を逃し多くのものを失ってきた。」という台詞。良いことと言うなあ…心に留めて置きたい言葉。


ラストは思わず涙が溢れます。

あの呼びかけは泣ける、、




静かでじんわりと心にくる良作です!

上映館は少ないですが、近くの劇場で上映していたら是非とも観に行ってみてくださいクッキー