渡島大野駅〜新函館駅 | ある映画プロデューサーのブログ
森田芳光監督「ときめきに死す」(1984年公開)で登場する避暑地の駅として撮影した。

テロリスト(沢田研二)が、降り立つ駅。そしてクライマックスで信仰宗教の教祖を暗殺しようとした駅としてロケーションした。

函館から18キロほど離れたところにある駅で、近くに鉄骨の歩道橋があって、それがメインタイトル・バックになっている。

撮影で使った駅舎や歩道橋は、北海道新幹線の駅になる為に取り壊されたようだ。
新函館駅になって、まったく違う風景になってしまうのだろう。

「ときめきに死す」は森田監督が「家族ゲーム」を撮った後の作品で、この後「メインテーマ」(角川映画)を撮ることになっていた。まだ「家族ゲーム」で数々の映画賞を受賞する前だ。

丸山健二原作、沢田研二主演、樋口可南子、杉浦直樹が出ていた。

夏の函館近郊で、約一ヶ月撮影した。

渡島大野駅では数日撮影したが、クライマックスは教祖が駅に到着するのを歓迎する群衆に交じってテロリストがナイフで暗殺を実行しようとする場面の撮影。
エキストラを集めるのに苦労したが、当日2~3千人は集まっていたんじゃないかな?
遠く札幌からも来てもらった。

北海道の夏は涼しい。劇中の台詞で「涼しいですね~」というのが何度か出てくるが、これは台本にはなくて、その場で監督が考えたものだったと思う。

この映画では、いくつもの実験的なカメラワークを監督は演出している。

1.レストランでのシーン(函館五島軒本館で撮影)
 沢田研二と、樋口可南子、杉浦直樹が食事をするシーンで、部屋の両側に同じ窓があり、同じ風景が見えるという設定。左右の人物を入れ替えて撮影したが、編集すると、そうは見えず、カットが変わるごとに左右の人物が入れ替わるというシュールな映像になっていた。また窓の外に見えるビルの屋上では、男同士が殴り合いの喧嘩をしている。なんだかわからないが不思議な感覚のシーン。(ちなみに屋上で殴り合っているのは、私と美術デザイナー)
2.海水浴場でのシーン(松前の方の海水浴場だったと思う・・・)
テロリストが車を発進させようとして、駐車している車にぶつけて、そのドライバーと喧嘩になる場面で、途中から画面が反転する。右ハンドルが左ハンドルになるのだ。
これは、小さな鏡をカメラの前に置いて反転して撮影したのだ。意味はわからないがなんか変な感じのシーンになっている。
3.三人が無言で乗っている走る車の中。
外から中の三人をとらえたカメラが、車の廻りをグルッと一周する場面。
まだビジコン(カメラの映像をモニターに出すシステム)など使っていなかった時代だったから、撮影は大変だった。
車の屋根に回転板を取り付け、長い材木を固定し、その先に35ミリカメラと照明をぶら下げる。屋根の上に回転板を回す特機のスタッフとカメラのスイッチを入れる撮影スタッフだけが乗っての撮影だ。
走っている車の廻りをカメラが回るのだから、監督もカメラマンも映像を覗けないのだ。止まっている状態で何度もテストを繰り返し、本番撮影。
本番でうまく撮影出来たかは現像してラッシュを見てみないとわからないのだ。
昔は、そんな現像してみないとどう映っているかわからないという緊張感が映画の現場にはあってよかったな~。
ラッシュの結果は、屋根の回転板が写っていたり照明のライトが車の窓に反射していたりしていた(今だとCGとかで消したり出来るが、その頃はそんなの出来ないからトリミングするだけだった)だが、面白い映像が撮影出来ていた。

そんな面白い実験映像が沢山つまった不思議なシュールでスタイリッシュでモダンな映画だった。

鉄橋
タイトルバックになった歩道橋。昨年行った時には、まだあったが今はもうないようだ。

渡島大野駅
駅舎。撮影の時はもっと古い駅舎だった。これも今はない。