さて、つづきです。

●7番手は澤田亜紀。試合では、絶対に転ばないねばり強い着氷に夢中になるのだが、エキシビではまた別の魅力が。北村明子の演技を見てはっとさせられるのとは逆の「はっ」を、何度か感じる。ふとした時にぱしっと手首をくねらせたりする仕草が、普段のスポーティーな印象と相反するようなのに、彼女のスタイルとして同居していて・・・なんだかおかしな文章だが、どきっとさせられ、「もう一度、今の動きを見たい」と思わされる。本当にとっても好きな選手です。

●今年の岸本一美は、黄色のジャケットに緑のシャツ、ピンクのネクタイに黒のシルクハットとパンツ姿で、ピンク&黄色の照明の中で。パンフレットを見て、「MASK」の音楽だったと知り、カラフル衣装に合点がいく。右手でハットを押さえつつ、ちゃんとジャンプを跳ぶ。ジャケットを脱ぎ捨てたあたりからアップテンポになり元気に踊っていて、去年の忍者仕様とも違う秘めたおもしろさを大発揮していた。

●ふたりとも黒ずくめの衣装の都築&宮本組は、銀色のながーい棒を持って登場。その棒を都築のエッジに引っかけたり、ぐるんと鉄棒のように使ったり、シリアスながらエネルギッシュなプログラム。組んだばかりのシーズンには、前のパートナーとの演技をどこかで比較しながら見ていたのだけど、いまや、このふたりがとてもしっくりくる。こういうとき、カップル競技ってとっても不思議だなあと思う。宮本は白のストロー素材っぽいハットをかぶっていた。それにしても、ハット使用男子、多いなあ。

●茶髪ではなくほぼ金髪になって元気に登場したのが、織田信成。昨シーズンのSP「スーパーマリオ」だった。小塚と同様織田の演技にも、スケーティングの滑らかさにため息が出る。彼の長所のひとつは、表情が豊かであるところ。視線や笑顔だけでなく、口元の動きもまた、演技をより楽しいものにしている。ところどころで見せるくいくいっとした腰のひねり方も彼特有で、演技にメリハリをつけているんだなあ、と。もう一度このプログラムを見られてよかった。

●選手登場口のカーテンから、ぱっと顔を出したかと思ったら隠れ、また顔を出したと思ったらまた隠れて・・・と浅田真央が登場。小さな泉のある森(なんて、行ったことないけど)の朝のようなすがすがしさを感じる。出てきた途端に2Aをぽんっと跳ぶ。そして片膝をついて考える人のようなポーズで西側を向いて一時停止すると、ボーカルバージョンの「Over the Rainbow」に音楽が切り替わる。その、顔を上げたときの表情に鳥肌が立った。「うわ~」っていう、彼女の内側から沸き上がってくる清しい喜びのようなものが、確かにそこにあった。東側の席、西側の真ん中あたりの席ではその表情が見られなかったのだが、西側の若い番号の客席に座った人たちは、それを見ていると思う。中学3年生でこの愛らしさ&清しさは本当に貴重だし、今後もずっと見守りたい切ない気持ちでいっぱいになった。

●第1部最後は、東京女子体育大学のシンクロ。やっぱり、照明の中で見ると随分と印象が変わって、神秘的な雰囲気だ。部員のケガや病気などで2日前に急遽14人編成になると決まったそうだが、その緊急事態の中でちゃんとある程度まとめていた。急な人数変更でフォーメーションが変わっても対応できるのは、ある程度シンクロを続けていると、振付の流れで「次はこの人と手をつないでこっちの方向に動いていくんだなあ」ということが体感として分かるのだという。4月の世界選手権が終わって、主力選手も何人か抜けてしまい厳しい状況だけど、最終盤の、ミファソファミソーファミーーーのところでいったん停止してから一列になって東側に向かってぐーっと滑ってくるところで、全員がぱっと顔を上げるシーンがある。その時の選手たちの笑顔にぐっと来た。

~そして、整氷です。