続・功夫電影専科 -13ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


「PARKER/パーカー」
原題:PARKER
製作:2013年

●凄腕の犯罪者であるジェイソン・ステイサムは、卓越した頭脳と腕力を持ち、目的だけを実直にこなす完璧主義者であった。だが、ある仕事で組んだマイケル・チクリスらに裏切られ、重傷を負ってしまう。
幸運にも通りがかった農夫に救われたステイサムは、搬送先の病院から抜け出すと速効でリベンジを開始。ターゲットの中に大物マフィアの甥っ子(ボビー・カナヴェイル)がいたため、彼は恋人や協力者たちに身を隠すよう促した。
 一方、マフィアからの連絡でステイサムの生存を知ったマイケル一味は、ナイフの刺客(演者は後述)に始末を依頼する。どうやら連中はフロリダのパームビーチに向かったらしく、ステイサムは石油業者に化けて探りを入れていく。
不動産業者のジェニファー・ロペスと知り合った彼は、マイケル一味が宝石オークションで強盗を計画している事を察知。その過程でステイサムたちは親密になっていくが、刺客の襲来で状況は一変する。
深手を負いながらも復讐を遂行するステイサムと、彼に恋人がいたと知って動揺を隠せないジェニファー。やがてマイケル一味が宝石強盗を成功させ、ここに最後の対決が始まるのだが…。

 今月はステイサムの出演作を集中紹介していますが、一般的にステイサムといえば最強&無敵というイメージが強く、その印象はセガールにも劣らないと言えるでしょう。
しかし実際の作品を見てみると、確かに最強&無敵な描写も多いのですが、逆境に立たされるシーンも相応に存在します。本作においても、敵となるマイケル一味は手強い相手ではありませんが、ステイサムは何度となく手傷を負っていました。
最強&無敵が行き過ぎると、セガールのように芸風が固定化し、主演作もワンパターンになってしまう危険性があります。しかしステイサムは適度なバランスでそれを回避しており、そうした案配の良さも彼が支持される所以…なのかもしれません。
 さて作品についてですが、ストーリー自体はシンプルな復讐劇ではあるものの、リベンジに突き進むステイサムの姿が痛快に描かれており、そつなく纏まった逸品に仕上がっています。
また、ジェニファーとの関係もあまり踏み込んだ描写になっておらず、このサッパリした描かれ方も作品の雰囲気と程良くマッチしていました。個人的には、ワガママだけど血だらけのステイサムに動じないジェニファーの母ちゃんがツボにきました(笑

 アクションシーンは前回の『SAFE/セイフ』よりも控えめですが、ストーリーの都合で派手なドンパチができないため、素手でのバトルがほとんど。スタイルは荒っぽい殴り合いタイプで、ステイサムの前にはマイケル一味も敵ではありません。
そんな彼をタイマン勝負で追い込み、本作最大の強敵として立ちはだかるのがナイフの刺客なんですが、演じているのはなんと『ブラッド・スポーツ2』のダニエル・バーンハード! その軽快な体術は健在で、ステイサムと互角に渡り合います。
 ダニエルはヴァンダムのフォロワーとして頭角を現し、多数のマーシャルアーツ映画で活躍。この手の格闘俳優にありがちなモッサリ感のない、スピーディな立ち回りを売りにしていました。
その後、主演俳優としては伸び悩むようになりますが、徐々に助演としての活躍が増えます。『地獄の銃弾』ではチャック・ノリスと戦い、最新作の『ファイナル・ブラッド』では元祖ブラッド・スポーツのヴァンダムと夢の対決を果たしました。
 本作ではステイサムを狙い、激闘の末に壮絶な死に様を披露。この一戦でステイサムは負傷し、本来なら真っ向勝負で潰せるマイケル一味に苦戦せざるを得なくなるという、なかなか重要な影響を及ぼすキャラクターとなっています。
と、このように往年のアクション俳優とも共演していたステイサムですが、ある大物アクション俳優との出会いが彼を待ち受けていました。果たしてステイサムは何処へ向かい、何を目指すのか……次回、いよいよ特集ラストです!


「SAFE/セイフ」
原題:Safe
製作:2012年

●かつては凄腕の刑事、今は賭け格闘の選手として燻っていたジェイソン・ステイサムは、負けるはずの八百長試合で誤って勝利してしまう。
これに激怒した雇い主のロシアンマフィアは、ステイサムの妻を殺した上に“親しくなった人間を片っ端から殺害する”と脅迫。かくして四六時中監視される身となった彼は、浮浪者同然の生活を余儀なくされるのだった。
 一方、一度見た数字を完全に記憶する天才少女のキャサリン・チェンは、ジェームズ・ホン率いるチャイニーズ・マフィアに拘束され、アメリカで帳簿代わりに働くよう強いられていた。
彼女も悲惨な境遇に置かれており、唯一の肉親だった母から引き離されたばかりか、その母も程なくして病死。さらに不幸は続き、とある暗号を記憶させられたキャサリンは、その矢先にロシアンマフィアから襲撃を受けてしまった。
 地下鉄の中を必死で逃げ惑う彼女を目撃したステイサムは、眠っていた正義感を揺り動かしてマフィアを一蹴! そのままキャサリンを連れて逃避行を開始する。
だが、彼女の記憶した暗号は3000万ドルと重要な機密の鍵であり、ロシアンマフィアやチャイニーズ・マフィア、さらには悪徳警官までもが少女を狙っていた。四面楚歌な状況の中、孤独な2人はどこへ向かうのだろうか…?

 従来のハリウッドにおけるアクションスターとステイサムには大きな違いがあります。かつてシルベスター・スタローンやシュワルツェネガーは、その強靭な肉体をスクリーンに刻み付け、有無を言わさぬ迫力でハリウッドを席巻しました。
しかし、そのアクションは力強さが第一とされており、香港映画的なスピーディーで流れるような動作とは縁遠いものでした。のちに格闘特化型のヴァンダムやセガールなどが登場しますが、こちらも香港流のアクションとはスタイルが異なっています。
 香港流に対応できるハリウッドのスターと言えば、マーク・ダカスコスのようなB級どころのスターぐらい。そんな風潮が長らくハリウッドに漂っていましたが、『マトリックス』の大ヒットでアクションシーンに対するグローバル化が進み始めます。
その後、ハリウッドでは香港流の立ち回りが一般化し、アクションスターに要求されるスタイルにも変化が生じ始めました。ステイサムはその流れに順応し、あらゆるシチュエーションに対応できる柔軟さを身に付けたのです。

 本作は、そんなステイサムが全編に渡って無骨な殴り合いを繰り広げる、実に彼らしい作品となっていました。前半は彼とキャサリンがとことん追い込まれ、視聴者の焦燥感を煽る展開がこれでもか!と続きます。
そして地下鉄の一戦でステイサムは完全復活し、ここからは3つの巨悪を相手取った丁々発止のバトルが開幕。それまで好き勝手やっていた連中を容赦なくボコっていくステイサムの姿は、まさに期待した通りの勇猛さに溢れています。
 ところが最終的に2つのマフィアは壊滅せず、健在のまま物語は終了します。いくら凄腕とはいえ、たった一人で戦う主人公が巨大組織を潰すのは極めて困難なのでしょうが…あれだけ非道を尽くした連中が生き延びるラストは釈然としません。
特にステイサムの妻を殺し、彼を追い込んだロシアンマフィアの若頭が死ななかったのにはガッカリ。キャサリンを養子にしたレジー・リー(こちらも凄まじいゲス野郎)も、主人公ではなく後半から登場したアンソン・マウントに瞬殺されていました。
たとえマフィアのボスが無理でも、こういう敵キャラはステイサムが直々にガツンとやって欲しかったんだけどなぁ…(やり過ぎて余計な遺恨を残したくない、という主人公の考えも理解できるのですが)。

 もうひとつの問題がアクションにおける格闘シーンの少なさです。本作はアクションが濃厚なので見過ごされがちですが、銃撃戦がやや多めの比率となっており、あまりステイサムと互角に戦える相手もいません。
また、賭け格闘の選手という役どころにも関わらず、試合を行うステイサムの描写は序盤の僅かなカットのみ。ラストではようやくアンソンという強敵らしい相手が現れるも、両者の対戦は腰砕けな決着を迎えます。
 ちなみに本作でファイト・コレオグラファーを務めたのは、キアヌ・リーブスの『ジョン・ウィック』を監督したチャド・スタエルスキーなので、ここはビシッとタイマン勝負で決めて欲しかったですね。
ラストシーンが情緒的ではあるものの、色々と外してしまったポイントのある惜しい作品。私としては、そろそろステイサムがガチなタイマン勝負を決めてる姿を見たいので、次回は夢の対決が実現したリベンジ・アクションを紹介したいと思います!


「ワイルドカード」
「WILD CARD/ワイルドカード」
原題:Wild Card
製作:2015年

●ネバダ州ラスベガス。栄光と挫折が渦巻くこの街で、元兵士のジェイソン・ステイサムは堕落した生活を送っていた。酒とギャンブルに溺れ、嘘を吐き出し、冴えない用心棒として殴り殴られる…そんな日々を彼は繰り返していた。
ある日、彼の前に護衛を依頼したいという青年(マイケル・アンガラノ)が現れる。時を同じくして、ステイサムは元恋人のドミニク・ガルシア=ロリドから「私に乱暴したゲス野郎に復讐したい!」と迫られた。
 嫌な予感を覚えつつも調べてみると、ドミニクに酷い仕打ちをした相手はイタリアンマフィアのボンボン(マイロ・ヴィンティミリア)で、さすがのステイサムも「こりゃヤバい」と困り顔。彼女に断りの電話を入れ、マイケルの御守りへと戻っていく。
だが思い直した彼は、敵が滞在するホテルの一室に直行すると、あっという間にマイロとその護衛を一蹴。合流したドミニクはリベンジを果たし、報復が来る前にラスベガスを後にするのだった。
 その後、マイケルの所に戻ったステイサムは「ベガスを去る前にひと勝負」と、マイロからせしめた金でギャンブルに挑む。するとツキがツキを呼び込み、一夜にして50万ドルもの大金を得た。
しかし、それも一時の栄光でしかなく、最後の勝負で全てを失ってしまう。挙句に逃げるタイミングを失い、地元のマフィア(スタンリー・トゥッチ)に確保されたステイサムは、ほくそ笑むマイロの前に引きずり出された。
どうにかその場は切り抜けたが、マイロが殺しに来るのは確実だ。彼は行きつけの喫茶店で最期の食事を採るが、そこへフラリとマイケルが現れ、ある物を手渡した。果たしてステイサムが辿るのは栄光か、それとも……?

 今回は前回と打って変わって、最強路線を確立した後のステイサム主演作の紹介です。この作品は、ラスベガスを舞台にステイサムが大暴れを演じる大活劇…ではなく、ある男の旅立ちを描いた物語となっていました。
全体的にアクションは控えめになっており、序盤はイケてない主人公が元カノの復讐に振り回され、重い腰を上げるまでの物語を淡々と描いています。
 その後、リベンジのほうはアッサリと片付き、欲をかいた末に一文無しになるステイサム。正体を明かしたマイケルからギャンブル中毒を指摘されるも、彼は踏ん切りをつけることが出来ず、自分を認めようとしません。
しかし自らの死が目前に迫り、マイケルから手を差し伸べられたステイサムは、目の前の現実から逃げずに立ち向かうことを選択します。それは自堕落な過去との決別を意味し、マイケルを救おうとした事で彼自身も救われた瞬間でもあるのです。
 ドンパチ賑やかな物語ではないものの、ハードボイルドな雰囲気が徹底された中々の良作。私としては「ああこりゃ破滅エンドだな…」と覚悟していたので、まさかここまで前向きな終わり方をするとは思いもよりませんでした。
ところで“ギャンブル中毒の主人公がベガスで戦う話”といえば、こんな作品もありましたね。もっとも本作のステイサムは過去に見切りをつけているので、あっちと違って中毒の再発はしないと思われますが…(苦笑

 さて、アクションについても控えめと表記しましたが、個々のシーンはケレン味にあふれていて迫力十分。マイロと接触した際はクレジットカードで額を切り裂き、カジノでは襲いかかる雑魚どもを叩きのめすわと、パワフルな殺陣が炸裂しています。
本作のファイト・コレオグラファーはステイサムと何度も仕事をしている元奎(コリー・ユン)ですが、香港アクションのノリをそのまま持って来た『トランスポーター』と違い、あくまでハリウッドらしい雰囲気を崩さない殺陣が構築されていました。
 ラストのレストラン裏での対決では、銃を所持した5~6人をバターナイフとスプーンで瞬殺! その凄惨かつ鮮やかな立ち回りは、ストーリーの展開とも相まって実に痛快なファイトに仕上がっています。
残念ながらラスボスに相当する相手はいませんが、作品的にはこれぐらいの規模がベストでしょう。とはいえ、ステイサムといえばやっぱり暴れてナンボのアクションスターです。そろそろ彼の本領を発揮した作品を見たいところですが…続きは次回にて!


「ザ・ワン」
原題:THE ONE
中文題:最後一強
製作:2001年

●この世界は125の多次元宇宙に分かれており、MVAと呼ばれる機関が均衡を守っていた。だが、MVAの一員だった李連杰(ジェット・リー)は別次元の自分を抹殺し、唯一無二の存在――“ザ・ワン”になろうと企んだ。
1人が死ねば、そのエネルギーは別次元の1人へと流れ込む。その法則を利用した李連杰は自分を殺し続け、恐るべきパワーを身に付けた超人と化していった。
 MVA捜査官のデルロイ・リンドジェイソン・ステイサム(公開当時の日本語表記はステーサム)は、やっとの思いで彼を逮捕するも、刑の執行直前に逃走されてしまう。
一方、最後の1人となった別次元の李連杰は、愛妻のカーラ・グジーノや同僚に囲まれて穏やかに暮らしていた。だが、驚異的な力が発現するようになり、次元を超えて現れた李連杰の猛攻を受ける事となる。
悪の李連杰によって殺人の濡れ衣を着せられ、窮地に陥る最後の李連杰。ステイサムと手を組んだ彼は、カーラを殺した悪の李連杰に決戦を挑むが…。

 突如としてハリウッドのアクション映画戦線に現れ、今ではドウェイン・ジョンソンらと並んで業界をリードする存在となったジェイソン・ステイサム。その活躍は留まるところを知らず、最近では成龍(ジャッキー・チェン)との共演が噂されています。
今月はそんなステイサムの魅力に迫りつつ、あまり当ブログでは紹介してこなかった彼の出演作を一気にレビューしてみましょう。さて、初回となる本日はステイサムがアクションに開眼し、ある重要な人物と出会いを果たした作品の登場です。
 本作は李連杰が『マトリックス・リローデット』のオファーを蹴ってまで出演したSFアクションで、ステイサムは彼と共闘する若き捜査官に扮しています。
ただし、SFといっても内容の8割は現代のロサンゼルスが舞台であり、それらしい雰囲気はあまり感じません。序盤で世界観の説明をしたのに、劇中でも登場人物たちが説明を繰り返す(つまり序盤の説明は不要)など、ストーリー構成も実に大雑把でした。

 また、この手の一人二役アクションにありがちな事ですが、2人の李連杰が絡むカットはアクションである以前に特撮なので、生の迫力に欠けています(ちなみに代役を演じたのは、いずれもベテランの武術指導家である黄凱森・國建勇・林峰)。
その他の格闘シーンもCGでデコレーションされており、立ち回りにおいてもやや難点のある本作。とはいえ、李連杰による堂々とした悪役演技や、別次元のデルロイに礼を言うステイサムなど、それなりにグッとくるシーンはあったと思います。
ところで肝心のステイサムですが、意外にも本作ではアクションらしいアクションをしていません。もっぱら銃を撃つばかりで、格闘戦はなんとデルロイが担当。設定上もそれほど強いわけではなく、今のステイサムからは考えられないような光景が見られます。

 しかし彼は本作でアクションに興味を持ち、動作設計を担当した元奎(コリー・ユエン)と不思議な縁で結ばれる事になるのです。元奎は李連杰と何度もタッグを組み、『リーサル・ウェポン4』でアメリカ進出した李連杰のアクション指導も務めました。
本作の後、フランスに渡ったステイサムはリュック・ベッソン製作の『トランスポーター』に参加。そこで監督兼武術指導を担当したのが、『キス・オブ・ザ・ドラゴン』でベッソンの目に留まった元奎だったのです。
 そして『トランスポーター』シリーズはステイサムの出世作となり、彼がアクションスターとして本格始動する起爆剤となりました。もし元奎と出会っていなければ、ステイサムの覚醒は無かった…のかもしれませんね。
その後、2人は再び李連杰と共演した『ローグ・アサシン』、間接的な接触となった『エクスペンダブルズ』で再会。続いて骨太なアクション大作でまたも巡りあうワケですが…続きは次回にて!


 ひょんな事から『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱』に魅了された私は、徐克(ツイ・ハーク)が手掛けたワンチャイシリーズの制覇に乗り出しました。
しかし、あくまで私が興味を持ったのはワンチャイというシリーズそのものであり、李連杰(リー・リンチェイ)が主演した他の映画には目もくれなかったと記憶しています。
 その後、私はワンチャイシリーズの本家を制覇すると、今度は亜流作品にまで手を出し始めました。まず最初に見たのは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝 アイアン・モンキー』で、こちらは本家と同じ徐克が製作を担当しています。
主演は甄子丹(ドニー・イェン)と干光榮(ユー・ロングァン)で、物語は黄飛鴻の父・黄麒英と義賊・鉄猿が朝廷の悪人と戦う!というもの。ストーリーもさることながら、重力を無視したワイヤーワークも素晴らしく、外伝としては一級品の傑作でした。

 続いて視聴した『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝 鬼脚』は、反対に徐克が関わっていない完全な亜流作品であり、内容はあまり洗練されているとは言えません。
しかし、主演の元彪(ユン・ピョウ)による立ち回りはとても軽快で、加えて任世官(ニン・シークワン)や元華(ユン・ワー)といった実力派スターが投入されており、アクションに関しては本家にも負けない健闘を見せています。
 そして最後に見た『ラスト・ヒーロー・イン・チャイナ/烈火風雲』は、久々となる李連杰の黄飛鴻が楽しめる番外編。こちらは李連杰が自身のプロダクションで製作した作品で、あの王晶(バリー・ウォン)がメガホンを取っています。
おかげで本家よりもコメディ描写が多く、残酷なシーンも無駄に充実していますが、アクションシーンについては上々の出来です。ただ、当時の私は劉家輝(ゴードン・リュウ)や徐忠信(アラン・ツィー)については全く知りませんでした(苦笑

 さて、こうして私のワンチャイシリーズに対する情熱は持続していた訳ですが、そんな状況に冷や水を浴びせる事件が起きます。
ひと通りシリーズに目を通した私は、『天地発狂』や『アイアンモンキー・グレート』といった怪しい作品に手を出そうか悩んでいました。するとその時、突如としてレンタルショップに本家スタッフによる新作が続々と入荷されてきたのです。
「まだシリーズは続いていたんだ!」と喜びながらレンタルした私は、その中の1つをワクワクしながら見たんですが…そこに映されていたのはフィルム撮りではない違和感のある画面、淡々と進むストーリー、暗い演出の数々でした。
 実はこの作品は、電視劇(TVドラマ)として製作されたものの再編集版。私が見たのは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 八大天王』で、監督は『ブラック・マスク』の李仁港(ダニエル・リー)が担当しています。
李仁港といえば凝った映像に拘る監督として有名ですが、この作品ではビデオ撮影&暗い画面でスローを多用したため、アクションの迫力は本家どころか亜流作品にも及んでいません。
 また、今まで親しんできた日本語吹き替えのキャストが一新されており(『天地風雲』では池田秀一だけギリギリ残ってくれましたが…)、この状況に大変なショックを受けた私は、ワンチャイシリーズに対する熱意を急速に失っていくことになります。
結局、それ以外の再編集版である『理想年代』や『辛亥革命』は見る気になれず、まだチェックしていない亜流作品に対する興味も無くなってしまいました(特に電視劇の再編集版については未だに手を出していません)。
しかし、このまま香港映画に対する情熱を失うかに見えたその時、私を奮い立たせたのは李連杰の先達である2人のドラゴンでした。彼らと出会ったのはまたしてもBS2の映画番組で、その作品は連続して放送されたのです。

 1つは少林寺の名誉を守り、妹の敵を討つために戦う壮絶なアクション大作。もう1つは飄々とした若者が酔いどれ師匠に修行を受け、恐るべき足技の達人と雌雄を決する作品です。
そう、前者は李小龍(ブルース・リー)主演の『燃えよドラゴン』! 後者は成龍(ジャッキー・チェン)主演の『ドランクモンキー 酔拳』! この歴史的傑作と間髪入れずに出会ったことで、再び私の香港映画熱が燃え始めます。
「まだまだ香港映画には凄い作品が沢山ある!」と悟った私は、果てしない香港映画への探求を始め、その途中で日本の空手映画や欧米の格闘映画と遭遇。より深く、より広く知ろうとしました。
 そして今、アクション映画への情熱をブログという形で発信するようになり、いつの間にやら10年が経ってしまいました。その情熱は未だに冷めることはなく、新たなアクション映画との出会いを常に求め続けています。
Once Upon a Time...もはや遠い過去の出来事となりましたが、『天地大乱』の出会いとそれにまつわる悲喜交々は、今でも私の心に思い出としてシッカリと刻まれているのです。
香港映画に対する情熱がいつまで続くかは自分でも解りません。ですが、『天地大乱』から受けた衝撃は私の情熱の原動力として、今も…そしてこれからも燃え続けることでしょう。銀幕を力強く駆け抜けた、あの黄飛鴻のように―――(特集、終わり)