「あれ?ここは…あっ寝ちゃった?ごめん…ほっといてくれてよかったのに…」
「いくら俺でもこんな所に死体みたいにほっとけるか」
「今夜はありがとう」
「あぁ…」
「今、いつでも呼んだら来てやるとか思わなかった?」
「そんな事思うか」
「そうだよね…」
「なぁ…」
「なに?」
「いゃ…」
「ねぇ?メールやってる?」
「仕事でもしてるしお前ともしてる」
「そうじゃなくてメル友っている?」
「メル友?」
「そうメル友」
「いや…あぁ一人いた…もう別れたけど」
「メル友も別れたって言うの?女の人?」
「たぶん…メル友って不思議だよな…名前も歳も顔も何処に住んでいるのかもどんな人なのかも性別すら解からないのに、物語のキャラクターのように創りあげて話してるなんてな」
「その人の事好きだったの?」
「いや…好きな人の事を相談してた」
「そんな人いたんだ…」
「彼女のアドバイスのせいで、毎日胸が苦しくて苦しくて…辛かった…」
「ひどい人ね。メル友のアドバイスなんか真に受けるからよ」
「もう別れたけどね」
「男か?」
「たぶん…ブリザードさんって言うんだけどね」
「ブリザード?」
「そう。南極とか北極で何日も吹き荒れる嵐よ。やっぱり不思議よね。そんな名前の人なんていないのにブリザードさんって話してる…そんな感じのする人だったな…ブリザードが過ぎるのをじっと待っているって感じで好きな人に告白も出来ずに悩んでた。メールって相手の事が解からないから嘘もつけるけど、つい本音を言っちゃうって事あるでしょ?」
「あぁ…」
「ブリザードさんの好きな人ってね…どうやら彼に負い目があるみたいなのね…彼はそんな事は関係ないって言うんだけど…それに今は彼女の事をすごく愛してるけど、女性遍歴がね…告白しても彼女は受け入れてくれないって。そしたら友達も好きな人も一度に失うからどうしても勇気が出ないって…そんなの言ってみないと解からないじゃない?友達が恋人になるかもしれないし…そう思わない?だから言ってあげたの。“彼女が負い目を忘れるくらい温かい心で包んで、彼女があなたの愛を信じられるように、彼女だけを心から愛してあげたらいいだけなんじゃないの?”って」
「そうだな…」
「そうよ簡単な事よ…ブリザ-ドさんも解かってくれて告白するって。断られてもあきらめないって。だからもう相談しなくても大丈夫だからさようならって…それで別れたのよ」
「そいつの事好きだったのか?」
「うぅん…好きな人の事話してた」
「そんな奴いるのか?」
「片思いのね」
「片思い?」
「そう片思い…ブリザードさんの彼女がどんな負い目を感じているのか知らないけど、私もその人に負い目を感じてるから彼女の気持ちが解かるような気がする」
「お前に負い目なんか無いじゃないか」
「あるわよ。負い目も秘密にしてる事も…だから片思いでいい…それ以上好きにはならないってずっと思ってきた。でもね…ほらよく言うでしょ。落ち込んでる人を励ましてて逆に自分が励まされる事があるって…私もブリザードさんから逆に励まされて約束したのね。告白は出来ないけどもう忘れるなんて言わない。好きだという気持ちに嘘をつくのは止めるって」
「告白したら?そいつに伝わるかもしれないぞ…お前の気持ち」
「それはないわ」
「なぜ?」
「ブリザードさんは彼女を心から愛してるけど…」
「そいつはお前を愛してないのか?」
「だから片思いだって…友達くらいに思っていてくれると嬉しいんだけど…」
「そっか…そろそろ部屋に戻るか」
「そうだね…海はいいけど潮風でベタベタ。それに砂まみれ。早くシャワーしないと気持ち悪い」
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