「すみません電話が……ちょっと失礼します」
「もしもし…どうしたの?えっミルクが…?ミルクしっかりして!お母さんが帰るまで頑張って!」
「もう頑張らせるのは可愛そうだからこのまま自然にって先生が言われてるんだけど…どうしよう…」
「そんなの駄目よ!ミルク!頑張って!ミルク……………もうお母さんを待たなくていいよ…お母さんが優しくないってよく知ってるでしょ?お母さんは帰れない…帰らないから待ってても無駄よ…もう頑張らなくていいよ…そしたら楽になれるから…ね…」
「ミルクの事頼むね…お花いっぱい入れてやってね…おやつもいっぱい入れてやってね…それからいつまでも泣いてたらミルクが天国へ行けないって言うから…じゃぁ頼むね…」
「愛夢さん?どうかしましたか?大丈夫ですか?休憩にしましょうか?」
「いいえ…大丈夫です…」
「絵美さん大丈夫?スタッフの方が、聞き忘れた事があるって言ってらっしゃるんだけどロビーまで降りて来られる?」
「あの?失礼ですけど…村川絵美さんのお友達の方ですか?」
「ええまぁ…あなたは?」
「僕は三村裕久と申します。村川さんとは…」
「あぁ…彼氏さん?…打ち合わせがあるから降りてきますのでここでしばらく待ってましょう」
「打ち合わせ?」
「いいですよとぼけなくても…彼氏さんなら彼女が何故ここに来てるのかご存知でしょう?私は愛夢さんの担当のWです。よろしく。今日はミルクの事で彼女大変だったのよ。“もう頑張らなくてもいいからそしたら楽になれるから”って言ってね…それを聞いてミルクは死んだの…打ち合わせの最中でさぞ辛かったでしょうに最後まで頑張ったのよ」
「………?」
(愛夢?愛夢さん?あの愛夢さん?いったいどういう事だ?あいつが愛夢さん?)
「心配して来て下さったのね。良かった…慰めてあげて下さいね…三村さん?三村さん!」
「あっ失礼…僕がいたらお邪魔でしょうから終わったら電話して頂けますか?」
番号を渡して部屋に戻った
「もしもし…三村さん?あなたがいらしてる事を言おうとしてたのに、彼女ったら“ちょっと海を見て来る”って出て行ってしまったんです。こんな時間だし止めたんですけど…一応お伝えしておこうと思って…」
「Wさんわざわざありがとうございます。僕が探しに行きますので、ご心配なく」
「もしもし…俺だ。今どこだ?」
「どこって?今は海の見えるホテルの部屋よ」
「そうか…ミルクの事は心配するな。ちゃんと見送ったから」
「付いててくれたの?ありがとう…あなたがいてくれて良かった」
「あの子達だけで見送らせるのは可愛そうだろ?お前は?大丈夫か?」
(あっ、居た)
「私は大丈夫。いつまでも泣いてるとミルクが虹の橋を渡れないって言うから…」
「今夜くらいミルクの事を想って泣いても虹の橋を渡れるさ」
「あっ!えっ?どうしてここに?ミルクの事で泣いてると思って来てくれたの?」
「そんな訳ないだろ?急な仕事が入ってな」
「そうだったの…」
「でも俺ので良かったら、胸、貸してやってもいいぞ」
「……今夜だけ…貸してくれる?」
そう言って顔をうずめた
(一人で泣くつもりだったのか?今までもそうやって一人で泣いてきたのか?)
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