「まぁお坊ちゃん。こんなに酔って…マスターありがとうございます」
「構いませんよ。ここのところ珍しくずっとうちに来てたんですけど、今日は飲み過ぎたみたいで…早く寝かせてやって下さい…じゃぁな」
「ありがとな」
「もうこの子ったら…ぎりぎり間に合ったわね。この人がこの前話した…」
「…先日は…母が大変…お世話になったそうで…ありがとう…ございました…」
『あー!』
『ぅん!』
「あんた!」
「あんたって言うな!」
「あなたたち知ってるの?」
「知ってるも何も…この前話した“最低男”!」
「えー!?」
「お前ここで何してるんだよ!?」
「裕。失礼よ。この前話した親切にしていただいた人」
「この最低女が?」
「じゃぁあんたが、いい歳して毎晩遊び歩いてる問題児の息子?」
「なんだと!」
「二人とも止めなさい!いったいどうなってるの?」
「今日はお招きいただきありがとうございました。さようなら」
「えっちゃん、さっきの話し考えてね」
「さっきの話って?」
「私の秘書を頼んだの」
「冗談じゃない!会社で毎日こいつと顔を会わせるなんて御免だ!」
「こっちこそ!きっぱりお断りさせていただきます!」
「そんな事言わないで考えてあげて下さい」
「Hさん、美味しいお料理ごちそうさまでした。二度と食べられないのは残念ですけど」
「さっさと帰れ!」
「言われなくても帰ります。その前に忘れ物!」
ビシッ!!
思い切りひっぱたいてやった
「今度会ったら殴ってやるって言ったでしょ。いつまでもお母さんに心配かけるんじゃないのよ!失礼します!!」
「裕、いったいどうなってるの?」
「お坊ちゃん大丈夫ですか?」
「……………」
「でも奥様。昔を思い出しましたね。お坊ちゃんがまだ小学生の頃…」
「ああそう言えば…女の子とお母さんがいらして“うちの子をいじめないで”って」
「そうでしたよね…お坊ちゃん、他の子には優しいのに好きな子だけいじめて…」
「そうそう…それで玄関でその子に“大嫌い!”ってひっぱたかれて失恋。裕…小学生の頃から成長してないのね」
「どういう意味だよ」
「この前もえっちゃんをいじめたでしょ?泣きながら電話してきたわよ。その“最低男”が裕だったとは…」
「あいつが憎らしい事ばかり言うから…」
「女の扱いには慣れてるんじゃなかったの?何でえっちゃんだけいじめる訳?」
「別に理由なんて無いよ…いじめてるつもりもないし…」
「だったら秘書にしてもいいわね?」
「それだけは勘弁してくれよ。俺がいるんだからもう引退すればいいじゃないか」
「私はいつまでも現役でいたいの」
「だったら、秘書じゃなく付き人を募集して買い物するなりパーティに行くなりすればいいんじゃないか?そしたら、お袋のわがままに付き合って長く勤めてくれる人が見つかるよ」
「私はあきらめませんからね。えっちゃんを秘書にして裕には語学の先生をしてもらいますからね!」
「そんなのいつもみたいに語学教室へ行けばいいじゃないか。なぜ俺が教える事になる訳?」
「早い方がいいわね。明日えっちゃんに会社を案内する事にするわ。裕、いいわね。朝彼女を迎えに行くから車よろしく!」
「何で俺が行かなきゃならないんだよ!」
「会長命令よ!」
「はいはい…解かりましたよ。もう寝るよ。頭痛くなってきた」
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