<仁希の場合>
兄貴が、変わっていったのはこの人のせいか…
最初見た時は
「おいおい兄貴…まさか…だろ?」
と思ったけどなるほどね
でも、この人のどこにあの兄貴をこんな風に変えてしまうほどの魅力があるんだ?まだ信じられないんだけど…
スタッフ達も帰り彼女をホテルまで送りがてら、仁希が「久しぶりに一杯呑もうよ」と言っていたので一緒に帰ることにした
「明日は、僕が街を案内するから9時に迎えに来るよ」
「そんなの気にしないで…お休みなんだからゆっくり休んで」
「休みだから僕が案内したいんだ。朝ご飯も少し我慢してて」
「朝は食べないけど起きられるかどうか解からない」
「モーニングコールしてあげるよ」
「ほんと?じゃぁお願いします」
彼女とのやり取りを仁希は、“兄貴…冗談だろ?”と言うような目をして聞いていた
チェックインを済ませ戻って来ると「明日早いなら兄貴の部屋で呑む?」と言ってくれたので部屋に帰った
「あの人のせいなのか?兄貴の様子が変わったのは?」
「変わったかな?」
「変わっただろ?エスコートはしてこないし…うまく言えないけど会う度に目が穏やかになって…何かあったのだろうとは思っていたけど、まさか女の人とはね」
俺の過去を知っている仁希は仁希なりに心配してくれていたんだと思う
「どこで知り合ったのか?」
「どこに住んでいるのか?」
「どういう人なのか?」
俺を質問攻めにした
俺はすべてに正直に答えた
「で?」
「え?」
「え?って愛してるわけ?」
「会うのは今日が二度目だよ」
「こういうことって、会った回数や付き合いの長さじゃないだろ?あの人を愛してるわけ?」
<真珠の場合>
彼女を愛してる?
この感情は愛なのだろうか?
<仁希の場合>
若かったとはいえあれだけ傷ついて以来、女の人を愛せなかった兄貴がまさかあの人に?どう考えても信じられないんだけど…
でも、兄貴の変わりようからすると本気みたいだ…本当にそうなら今度こそ幸せになって欲しい
その夜俺は、遠足の前日の子供のようになかなか眠れなかった
次の日はとても幸せだった
彼女を迎えに行き、写真集を見ていて眠れなかったと、まだ眠そうな彼女と少し遅い朝食をとり、流行りのスポットだのカフェだの若者たちがするようなデートを楽しんだ
ゆったりと夕食をとり彼女を駅まで送って行った
「楽しかったわ、ありがとう」
笑顔で手を振る彼女を見送った時、夕べの仁希の言葉を確信した
(俺は、彼女を愛している)
ドアが閉まり新幹線が動き出した時、なにかで刺されたように胸が痛くなった
(もっと一緒いたいと言えば良かった…帰らないでほしいと引き止めれば良かった…)
後悔で胸が痛く、動けなかった
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