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今日の一冊:清水明 『量子論の基礎-その本質のやさしい理解のために-』 サイエンス社 2003年出版 1,819円+税


量子論の本です。『量子力学の基礎』となっていないところがポイントです。量子という言葉がつく用語は数多くあります。量子力学・量子統計・場の量子論・量子情報・量子計算・量子コンピューター・量子暗号・量子テレポーテーション・量子脳理論・量子スピン・量子材料・量子エレクトロニクス etc...

これら量子と名の付くもの全ての基礎に量子論があります。大学で理系の学生が最初に学ぶのは通常量子力学で、これは量子論という大きな学問体系の中の一分野と言えます。

量子論=シュレディンガー方程式だと思って、何を言いたいのか見失っている人に、ぜひこの本を薦めます。本書中にももちろんシュレディンガー方程式は出てきますが、量子論という大きな枠組み・一番本質的な部分を軸にして展開されているので、見通しよく読んでいくことが出来ます。

まえがきにも書かれていますが、本書は基本的に初学者のために書かれています。同時に、大学院生以上が量子論を整理しなおすのにも使えます。この本は著者:清水明先生の大学での講義が元になっているのですが(私も受講しました)、文系学生向きに講義をしたときも好評だったそうです。まえがきに、まったくの初学者―例えば大学の1年生や文科系の大学生、あるいは、向学心に燃える高校生―が読んでも判るように、必要な事は(複素数などの初等的な数学を含めて)全て書いたとあります。実際、記述は非常に明解です。

先週紹介した固体物理の教科書と違って、本書の展開は非常にユニークです。新しいスタイルの入門書が書きたかったという著者の目的は果たされたと言えます。目次を示すと、

0. 抽象化された自然観への序説
1. 古典物理学の破綻
2. 基本的枠組み
3. 閉じた有限自由度系の純粋状態の量子論
4. 有限自由度系の正準量子化
5. 1次元空間を運動する粒子の量子論
6. 時間発展について
7. 場の量子化―場の量子論入門
8. ベルの不等式
9. 基本変数による記述のまとめ

となっています。私自身は、8.ベルの不等式 の章が大変勉強になりました。購入を考えている人は、2.基本的枠組み を立ち読みしてみるのもいいでしょう。8ページの短い章ですが、読めばこの本のスタンスがよく判ると思います。

私は持っていないのですが、本書は新版としてサイエンス社から単行本が出ています(それだけ人気が出たということです)。値段は2,100円で、記述がより詳しくなっているそうなので、今から買う場合にはそちらのほうが良いでしょう。