謎の'60年代在米日本人ミュージシャン、Harumi! | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

謎の在米日本人、ハルミによる68年唯一作&サイケ秘境的名盤『ハルミ』が帯解説付き国内仕様で登場
芽瑠璃堂>芽瑠璃堂トピック #73208
鬼才トム・ウィルソンがプロデュースを手がけ、1968年にヴァーヴ・レコードからリリースされた、在米日本人ミュージシャン・ハルミによる唯一作、サイケ・カルト名盤として評価を集める傑作『ハルミ』の輸入盤がオールデイズレコード特別国内仕様で2024年3月29日(金)に発売。

ハルミ『ハルミ』
ODRIM1027 (オールデイズ レコード)
2024.03.29発売予定
定価1,980円→ポイント特価1,683円 

オールデイズ厳選の世界中のグッドミュージックな輸入盤を国内仕様でリリース!
知る人ぞ知る台湾発のリイシューレーベル「ONCE MORE MUSIC」でリリースされた作品にオールデイズレコードおなじみの紙ジャケットと帯解説が付いたスペシャル仕様!
謎の在米日本人、ハルミによる68年唯一作! 

鬼才トム・ウィルソンがプロデュースを手がけ、1968年にヴァーヴ・レコードからリリースされた2枚組大作『Harumi』。Harumiことハルミ・アンドウは在米日本人のギター青年。彼の詳細は不明であり、また本作も長らく一部のコレクターや愛好家の間においてのみ、カルト的な人気を誇っていたまさに秘境的名盤であった。 

東洋と西洋の音楽的要素が見事に融合された、その独特なボーカルと詩的な歌詞(英詞)の世界は、GSをも彷彿とさせる仕上がり。作詞作曲はすべてハルミが担当。内省と外の世界への開放性を行き来するサイケ~フォーク・ロック・サウンドをベースに、ストリングスやヴァイブを散りばめたソフト・ロック/ポップスの感触は、まさに音のカレイドスコープ。そして極め付けは約20分にわたるラスト・ナンバー(M-13)。ハルミに加えアンドウ一家が語る“若者文化とロック”、その放談と演奏が織りなす前衛的な音空間は、以降のモンド・ブームで注目を集めた必聴トラック! 

 
<輸入盤情報>
発売元:ONCE MORE MUSIC (台湾)
輸入盤番号:ONCE1027
 
収録情報(予定)
01. TALK ABOUT IT
02. FIRST IMPRESSIONS
03. DON'T KNOW WHAT I'M GONNA DO
04. HELLO
05. SUGAR IN YOUR TEA
06. CARAVAN
07. HUNTERS OF HEAVEN
08. HURRY UP NOW
09. WHAT A DAY FOR ME
10. WE LOVE
11. FIRE BY THE RIVER
12. TWICE TOLD TALES OF THE POMEGRANATE FOREST
13. SAMURAI MEMORIES
(メーカー・インフォメーションより)

 これはまた、春からとんでもないアイテムがリリースされました。アメリカ本国での初発売は1968年3月16日(または3月23日。1968年1月24日という別説もあります)、発売当時にはジャーナリズムに好評で迎えられて新聞・雑誌で賞賛され、ジャケット違いのカナダ盤とドイツ盤も発売されて、ラジオ用プロモーション・シングル「Talk About It c/w First Impressions」のオンエアに伴いラジオ番組「The Music Factory」に出演、1968年4月16日のボストンから最後のハワイ公演まで5週間に渡り全米13都市ツアーまで行われるも、この1作で消息を絶った在米日本人ミュージシャン、Harumiことアンドウ春海(1944年1月11日生~2007年1月7日没、享年62歳)の本作は、初発売から45年あまりを経たHarumi逝去直後の2007年5月1日にインディーのFallout Recordsから初CD化されてallmusic.comで★★★★☆の高い再評価を受け、2015年にはオリジナルLPがオークション・サイトで80万円(!)の落札価格を記録するカルト・アルバムとなりました。Fallout Records盤CDも廃盤になるやたちまち高プレミアで取引され、2018年1月12日には再びインディーのEarly Dawn/Early Recordsから再CD化されます。Early Dawn/Early Records盤CDもプレミア廃盤化し、今回初めて台湾のインディーONCE MORE MUSICからの3度目の再CD化が日本のインディー・レーベル、オールデイズレコード/芽瑠璃堂から輸入盤日本国内流通仕様でリリースされました。全編79分、アナログ盤ディスク1には11曲(A面6曲・B面5曲、M1~M11)のポップ・サイケ曲が収められていますが、1968年(昭和43年)当時の英米のサイケデリック・ロック/ポップ、日本のサイケ系GSともまったく似ていないサウンドです。故・ハルミさんは商社勤務の家庭で幼少時からニューヨークで育ち、英語が日常語で日本語は堪能でなかったそうです。また幼児の頃から楽器演奏に熱中し、自作曲を披露してご両親を驚かせていたと言われます。旧LPのAB面に収められたサイケ・ポップ曲はそうして書きためられたものでしょう。ハルミさんはギター、キーボードを始めとするマルチ・プレイヤーだったそうで、アルバムもおそらく一流スタジオ・ミュージシャンを動員して制作されたものですが、ヨレヨレのヴォーカルや万華鏡のように歪んだサウンドは、ロック動乱期の1968年においても追従を許さないものを感じさせます。

 さらにトム・ウィルソンがプロデュースしたフランク・ザッパ&ザ・マザーズ・オブ・インヴェンジョンのデビュー・アルバム『フリーク・アウト (Freak Out!)』(ヴァーヴ, 1966.6.27)に倣ったか(同作も2LPでディスク2のC面・D面は片面1曲ずつでした)、アナログLPディスク2(CD面)は片面1曲ずつ、C面(M12)「Twice Told Tales of the Pomegranate Forest」は24分、D面(M13)「Samurai Memories」は18分もの実験的トラックになっています。このアルバムについては改めて詳しく取り上げたいと思いますが、今回の再CD化を買い損なえば次の再CD化は早くて10年後、再度の日本盤発売はほぼあり得ないでしょう。ほとんどティム・バックリーやシド・バレット、加藤和彦や早川義夫に匹敵する(!)、まぐれ当たりのようなこのモンスター級サイケデリック・ロックの怪作はYouTubeでも聴けますが、入手するには今がチャンスです。2イン1CDで1枚に79分、アナログLP2枚組分が1枚のCDで一気に聴けます。1968年3月といえばLP2枚組アルバムの先駆にボブ・ディラン『ブロンド・オン・ブロンド (Blonde On Blonde)』が1966年5月、ザッパ&マザーズ『フリーク・アウト』が1966年6月にあり、1968年7月のクリーム『クリームの素晴らしき世界 (Wheels of Fire)』、1968年11月のビートルズ『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム) (The Beatles)』、1969年10月のピンク・フロイド『ウマグマ (Ummagumma)』よりも早く、ベスト盤類を除くポピュラー音楽(クラシックでは大作の交響曲類がありますが)のLP2枚組オリジナル・アルバムとしては画期的なほど早いのです。ディランとザッパに続くロックの2枚組アルバムが、よりによって謎の在米日本人アーティストHarumiのデビュー作にして唯一作であることは、もっと知られてもいいことです。これはまだ4月にして、2024年度のロック・リイシューCD大賞と言ってもいいかもしれません。