あけましておめでとうございます。今日、元旦の昼食は昨夜近所のスーパーで買ってきた握り寿司にお吸い物をつけていただきました。正月三が日くらいお寿司を食べて、新年を寿ぎたいと思います。全然おめでたくないお正月ソングと、いかにもお正月らしい楽しい詩、さらに新年のときめきにふさわしい、口直しの名曲を上げておきましょう。
元旦
西脇順三郎
ああ
人間はまた
森やキツネや
ウグイスや五重の塔や
石炭やメノウや
コイやカマスも
火や水や空気や土と
いつしよにくるくる自転して
太陽を一回転した
すべて遠くにいたものは
またふるさとの桑畑へもどってくる
いかけやきこりもせきをしながら
いきを切って家へいそいだ
人間は土に酒をまいて
山川の神々をまつる
酋長も校長も
ドンブリでガブガブ飲んでいる
友人の家へアイサツに行つてみよう
甲州街道のタバコヤの店さきで
よった老母はミカンをしやぶつている
黄色い犬がこちらをみつめる
坂をくだると藪が
ドトウのようにおしよせる
五色のモヤがはつている
ああこの新しい野原はまた
新しいダエン形の神話をつくるため
太陽の方へ沈んでゆく!
(詩集『人類』昭和54年/1979年刊収録、「サンケイ新聞」昭和47年/1972年1月1日発表)