ポールのクリスマス&ウィンター・ソング | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

ポール・マッカートニー - ワンダフル・クリスマスタイム (Parlophone/Columbia, 1979)
ポール・マッカートニー Paul McCartney - ワンダフル・クリスマスタイム Wonderful Christmastime (Paul McCartney) (Parlophone/Columbia, 1979.11.19, UK#6/US#28) - 3:45 :  

ポール・マッカートニー  Paul McCartney - ひとりぼっちのロンリー・ナイト No More Lonely Nights (Paul McCartney) (from the album “Give My Regards to Broad Street”, Parlophone/Columbia, 1984.9.24, UK2#/US#6) - 4:42 :  

ポール・マッカートニー Paul McCartney - ワンス・アポン・ア・ロング・アゴー Once Upon a Long Ago (Paul McCartney) (from the album “All the Best!”, MPL/Communications/Parlophone Records, 1987.11.16, UK#10) - 4:08 :  

 ポール・マッカートニー(1942~)のシングルから、クリスマス・ソングまたはウィンター・ソングを3曲ピックアップしてみました。アルバム未収録シングル「ワンダフル・クリスマスタイム」は夫人のリンダ・マッカートニーのコーラス以外はポールの一人多重録音になる、ビートルズ解散以降32枚目にして1970年代の掉尾を飾る可愛らしいクリスマス・ソングで、同年のウイングスのアルバム『バック・トゥ・ジ・エッグ』のチャート不振を埋め合わせるようにリリースされて好評を博しました。

 次の「ひとりぼっちのロンリー・ナイト」(突っ込みたくなる邦題ですが)はポール主演映画『ヤァ!ブロード・ストリート』(この邦題もあんまりです)のサントラ盤(UK#1/US#21)からシングル・カットされた名曲で、ピンク・フロイドのデイヴィッド・ギルモアがリード・ギターに参加し、巧みな転調でピンク・フロイド1980年の全米No.1ヒット「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール・パート2」とそっくりの長いコーダを弾いていることでも評判になりました。映画はポール・マッカートニーが本人役で主演し、盗難に遭った制作途中のマスター・テープを奪還しに奮闘するという軽いコメディ映画でしたが、ウイングス解散後の1982年の『タッグ・オブ・ウォー』、1983年の『パイプス・オブ・ピース』の大成功を受けて制作された主演映画とサントラ盤『ヤァ!ブロード・ストリート』とこの「ひとりぼっちのロンリー・ナイト」を最後に、新作を出せばトップ3やNo.1ヒットというポールのキャリアは渋滞してしまいます。この「ひとりぼっちのロンリー・ナイト」は9月発売ながらアルバム発売、映画公開に合わせて1984年秋~冬のヒット曲になったので、当時古書店でアルバイトしていた筆者はだるまストーブに手をかざしながら、ラジオから流れてくるこの曲に聴きいったのを忘れられません。

 それから3年後のポール40枚目のシングル「ワンス・アポン・ア・ロング・アゴー」はベスト・アルバム『オール・ザ・ベスト』(UK#2/US#62)のために録り下ろされたウィンター・ソングで、『ヤァ!ブロード・ストリート』を最後に1980年代後半からチャート不振に陥っていたポールにあっても起死回生の大ヒットには届きませんでしたが、当時45歳のポールがまだビートルズ級の新曲を書けたのを示す、雄大な曲想のバラードです。一聴して地味な曲なのでベスト・アルバム用の新曲としては失敗だったかもしれませんし、おそらくライヴで披露される機会もない楽曲だったでしょうが、ポールの隠れた名曲のひとつとして時たま無性に聴き返したくなる、忘れ難い曲の一つです。ポール・マッカートニーほど名曲を連発してきたヒット・メイカーは、そのほとんどがジャズ・スタンダードになっている1930年代アメリカのミュージカル作曲家以外には見当たりないくらいで、その上ポールはビートルズ以来基本的には自作自演(ピーター&ゴードン、メリー・ホプキン、バッドフィンガーらへの提供曲を除く)のパフォーマーでもありました。この見事なウィンター・ソング「ワンダフル・クリスマスタイム」「ひとりぼっちのロンリー・ナイト」「ワンス・アポン・ア・ロング・アゴー」を聴いてもポールの神がかり的な才能は圧巻で、逆にこれだけのことをなしとげてしまえば自分自身のキャリアが障壁になるのもやむを得ないことでしょう。ポールの健在を祈る限りです。素晴らしいこの3曲をお聴き直しいただければ幸いです。