コズミック・ジョーカーズ - プラネッテン・シット・イン (Kosmische, 1974)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20211021/20/fifth-of-july/c3/c9/j/o0600060015019278253.jpg?caw=800)
コズミック・ジョーカーズ&ステルンマッシェン The Cosmic Jokers & Sternenmädchen - プラネッテン・シット・イン Planeten Sit-In (Kosmische, 1974) :
Released by Metronome Records GmbH, Die Kosmischen Kuriere KM 58.013, 1974
Musik von Dierks, Dollase, Gottsching, Grosskopf, Schulze
Remixes von Dieter Dierks
Produktion von Rolf-Ulrich Kaiser, Sternenmädchen
(Seite 1)
A1. Raumschiff Galaxy Startet - 1:04
A2. The Planet Of Communication - 0:55
A3. Elektronenzirkus - 0:37
A4. Der Narr Im All - 1:16
A5. Raumschiff Galaxy Fliegt In Die Sonne - 2:12
A6. Intergalactic Nightclub - 4:08
A7. Loving Frequencies - 3:18
(Seite 2)
B1. Electronic News - 3:56
B2. Intergalactic Radio Guri Broadcasting - 4:24
B3. Raumschiff Galaxy Gleitet Im Sonnenwind - 0:40
B4. Interstellar Rock: Kosmische Musik - 3:11
B5. Raumschiff Galaxy Saust In Die Lichtbahnen - 0:44
B6. Der Planet Des Sternenmädchens - 8:21
[ The Cosmic Jokers & Sternenmädchen ]
Manuel Gottsching - guitar
Dieter Dierks - recording, synthesizer
Jurgen Dollase - piano, organ
Harald Grosskopf - drums, percussion
Klaus Schulze - electronics, percussion
Gille Lettmann - lyrics, voices
Rosi Muller - lyrics, voices
Brian, David , Liz - voices
(Original Kosmische Musik "Planeten Sit-In" LP Liner Cover & Seite 1 Label)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20211021/20/fifth-of-july/13/0c/j/o0600058715019278280.jpg?caw=800)
コズミック・ジョーカーズ&ステルンマッシェン(星の乙女たち)名義の本作は、楽曲区分の多さからも推察できるように、さらに楽曲の断片化が進んだ過激なアルバムです。曲区分はされていても、もはや楽曲の体裁をなさないサウンド断片が現れては消えて行くアルバムで、これほど過激なリミックス・アルバムは'70年代末のダブや'80年代末のハウスにならないと現れなかったので、同時代にあってはサウンド・エフェクト的なトリップ・ミューザック的な際物にしか映らなかったと思われます。コズミック・ジョーカーズ・セッションの一連の作品は楽曲らしい楽曲性はなくともアンサンブルによってスペース・ロックとしての完成度を楽しめるものでした。リミックス・アルバムである本作ではアンサンブルは楽器トラック単位に解体され、シンセサイザーのピュンピュン飛ぶサウンド空間にウィスパー・ヴォイスが聞きとれない歌詞をよぎるように現れては消え、B1でようやく推進力のあるサウンドが現れますがそれも始めだけで、アルバム最終曲B6だけは8分半近い長さがあり、ここでやっとバンドらしいサウンド・ミックスが現れますがそれも始めだけで、当時は8トラック・レコーダーを2台同期させた16トラックから単独で16トラックのマルチトラック録音ができるレコーダーへの移行が最新技術でしょうが(32トラック・レコーダーの開発は'70年代後半、64トラック・レコーダーの開発は'80年代初頭です)、ミキシング卓のほとんどのフェイダーを落とし、ごくごく極小部分だけをイン/アウトして作り上げた作業は、通常のロックのアルバムでは考えられないことだったでしょう。本作はそういう意味でも、いわば音源素材を素に今日のDTMのように作られたアルバムです。
コズミック・ジョーカーズ作品最終作になる本作と『ジルズ・ツァイツシフ(Gilles Zeitschiff)』'74の2作の姉妹作のリミックス・アルバムではすでに、原型になったコズミック・ジョーカーズ作品『コズミック・ジョーカーズ』『ギャラクティック・スーパーマーケット』はほとんど元の形をとどめていません。それどころか解体の度合いが行き過ぎていて、完成アルバム2作があってのリミックス・アルバムというのは一種のアリバイ工作で、まだしも音源の推定が可能だった『サイ・ファイ・パーティー』どころではない電子音のサウンド・コラージュ・アルバムという構想が平行して意図して企画されていたのではないかと思われます。おそらくこれはセッションからの未発表音源リミックス集と見せておいて、リハーサル段階での楽器単位のサウンドチェックが大量に紛れこませてあり、また未完奏テイクからのサウンド断片がフラッシュバックのように抜き出してあると考えられます。楽曲の体をなしていないのはもともとそういう断片ばかりを集めてきたからで、実験的なアート作品としての音楽ではなくポップス畑のロック・ミュージックの文脈の発想では、普通こうしたものは出てこないでしょう。本作と『ジルズ・ツァイツシフ』はミュージシャンたちの音楽ではなくディーター・ダークスというサウンド・エンジニアの作品であり、ダークスはシンセサイザー奏者でもありますがミュージシャンではなく、サウンド・オペレーターとしてシンセサイザーを扱っているだけで、電子音ノイズを抽出してきただけのサウンド編集・構成をコズミック・ジョーカーズというロックのセッション・アルバム企画の中で試してみた、純粋にサウンド・エンジニアとしての探求心が生んだアルバムでしょう。クラウス・シュルツェはダークスとの共同作業で多くを学んだはずで、コズミック・ジョーカーズ作品のあとのサウンドの間を生かしたシュルツェ作品『ブラックダンス』'74、『ピクチャー・ミュージック』'75には密集したサウンドの『イルリヒト』'72、『サイボーグ』'73からの大きな変貌が見られますが、シュルツェの音楽はシュルツェというミュージシャンの人格に根ざしたものであり、サウンドのみに着目したダークスのリミックス・アルバムとは対照的なのを認めずにはいられません。また本作は時代を先取りしすぎた面白いアルバムですが、本作と次作『ジルズ・ツァイツシフ』のリミックス・アルバム2作にシュルツェの姿は見当たらないとも感じずにはいられません。
(旧記事を手直しし、再掲載しました。)