あけまして中華丼 | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。


 初春のお喜びを申し上げます。皆さまにおかれましては、良い正月を迎えられましたでしょうか。学生時代から年末年始に読み返すことが多いのは人文書院版『ボードレール全集』(全四巻)、春秋社版『高村光太郎選集』(全六巻)、新潮社版『萩原朔太郎全集』(全五巻、併せて全一巻の人文書院版『萩原朔太郎全書簡集』)、小説はレイモン・クノーの『きびしい冬』、人文書院版『牧野信一全集』第一巻(生前刊行全短篇集)といったあたりですが、この年末年始には長年再読したかった大和書房版『蔵原伸二郎選集』(自選定本全詩集・詩論集)と奥武蔵文芸会版『蔵原伸二郎小説全集』(全短篇集・全エッセイ集)をようやく入手し(萩原朔太郎が自分の詩集に序文・跋文を載せたのは、北原白秋、室生犀星、萩原恭次郎、蔵原伸二郎の四人だけでした)、新潮社版『木山捷平全集』(全二巻)と永田書房版の全集未収録短篇全集『木山捷平ユーモア全集』(全1巻)、また辞書みたいな薄紙に辞書並みにぎっしり組版してある春陽堂版『モーパッサン全集』(全三巻、各巻1000ページ!)を拾い読み仕直し、青土社版『安東次男著作集』(全10巻)を1巻ずつ読み、立風書房版『高柳重信全集』(全三巻)をワイズ出版刊の全集未収録全時評集『俳句の海で』とともに読み返し、さらにちくま文庫版『泉鏡花集成』(全14巻)の持っていなかった巻を買い足して全巻揃いを達成し、半年前から再読し続けているサミュエル・ベケットの長篇三部作『モロイ』『マロウンは死ぬ』『名づけえぬもの』、また泉鏡花作品を目についたものから一章読んでは蔵原伸二郎詩集や木山捷平詩集、安東次男詩集・句集や『芭蕉七部集評釈』や古典和歌評釈、高柳重信句集を読み返す、と気が向くままの読書を楽しんでいます。安東次男の批評によると蔵原伸二郎詩集は『蔵原伸二郎選集』の改訂版定本全詩集と初版詩集では改稿が大きいようで、限定部数の自費出版初版詩集は古書相場で高騰しているようですから、この先読む機会はないかもしれません。数日前の朝はモーパッサンの『ピエールとジャン』を読み返している夢の途中で起き、あれ?これって『ピエールとジャン』と全然違うぞ、異父兄弟に悩むピエールとジャン兄弟すら出てこないじゃないかと狐に包まれた気がしたら、夢の中で読み返していたまったくの別物でした(ちなみに『ピエールとジャン』はメキシコ時代のルイス・ブニュエルの映画化が最高で、ブニュエル版の映画を観るとモーパッサンの原作も見え方が一変します)。モーパッサン、ベケット、泉鏡花、蔵原伸二郎、木山捷平、安東次男、高柳重信と平行して再読しているとそんな訳のわからない夢も見る、ということでしょう。以上、この年末年始の(現在進行中の)読書メモでした。前年の年末年始が床上浸水被災の直後でのんびり読書もできなかった反動でもありますが、ちょっとこの年末年始は欲ばりすぎてしまった、せいぜいこの半分にとどめた方がよかったような気がします。

 ちなみに読書のBGMには、平成3年夏~秋の床上浸水被災以来いまだに倉庫入りのままで聴けなかったビートルズの、Mobile Fidelity Sound Laboratoryリマスターによる全集(13アルバム・CD10枚組)を新たに購入して聴きました。このアナログ・マスターによるMFSL版LP時代の通販限定1982版リマスター(をマスターにしたCD化)は、ダイレクト・マスターかファースト・ジェネレーション・マスターかと見まがうような生々しい音質において、1987年のEMIグループによるCD化はおろか、はっきり言って現行の2009年版のParlophone/Apple盤デジタル・リマスターをしのぎます(MFSLはヴェルヴェット・アンダーグラウンド作品のLPマスター・リマスタリングでも同様の偉業をなし遂げています)。惜しむらくはアナログLP時代には『Rarities』Vol,1, Vol.2として出ていた、公式CD化ののちは『Past Masters』Vol,1, Vol.2としてまとめ直されたアルバム未収録シングル、EP集がMFSL盤全集には含まれていないことですが、それは1987年EMI盤の『Past Masters』Vol,1, Vol.2か、現行のParlophone/Apple盤2CD『Past Masters』で補えます。長年ビートルズを日本盤LP、日本盤CDで聴いてきたリスナーとしても、1982年リマスターのMFSL盤13CDボックス全集『ザ・ビートルズ/ザ・コレクション』の高音質や英米別マスター(『Revolver』『Sgt.Peppers'~』『Let It Be』の3作は二種類のLPマスターが存在するため、 2ヴァージョンずつ収録されています。つまり2in1CD仕様で10枚組に実質15作が収録されています)は驚きでした。何より悄然とするのは、集めるまで中学生時代いっぱいかかった(当時LPは2500円、2枚組の『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』は4400円。ビートルズ以外にも友人との買い食い、ガールフレンドとのデート、読みたい本や観たい映画など、いろいろお金はかかります)ビートルズのアルバム全13作が、MFSL盤13CDボックス全集『ザ・ビートルズ/ザ・コレクション』では現在送料含めてかつてのLP2枚以下の価格で買えることです。アナログLP時代にビートルズを聴き始めた中学生には、ビートルズのアルバムを全部聴く、借りてコピーしたカセットテープで聴くだけではなく自分の所有LPに揃えるのが生きる目的ですらありました。それが今では通販サイトで、二か月分のおこづかいよりも安価に、一度に(CDながら)全13作が買えてしまう。しかしおそらく、それは良いことなのです。たとえ現在の14歳が、かつて14歳だったリスナーが胸の張り裂けるような感動で「Here, There And Everywhere」や「For No One」「Got To Get You Into My Life」(これらはどれもポールの名曲です)を聴くことはないとしてもです。
 さて、ようやく本題に入りますが、病気療養中の一人暮らしで365日自炊の身としては、年末年始くらい自炊もサボりたくなります。こういう時に冷凍食品やレトルト食品ほど便利なものはありません。鬱病にはストレス性の過敏性腸症候群は持病みたいなものなので、胃腸に刺戟の少ない方を選んでレトルトカレーよりレトルトハヤシ、レトルトカレーより値はやや張りますが中華丼の素、親子丼の素、牛丼の素をこの年末年始には選びました。いろいろウンチク話にすれば中華あんかけについて話題はもっと引き延ばせるでしょう。しかしそれも面倒なので、画像の通り美味しく中華あんかけ丼を食べてすごしている寝年末、寝正月といったあたりで話は済ませたいと思います。ちなみにこの中華あんかけ丼は、市販の中華あんかけ丼の素にカニかまぼこを加えたものです。一手間とも言えない程度の工夫ですが、それだけのトッピングで、多少なりともおせちご飯らしさになっているのではないかと思います。今年も冴えない一年を無事にすごしたいと思うばかりです。
The Beatles - Here, There and Everywhere (from the album "Revolver", Parlophone, 1966.8)