アシュ・ラ・テンペル - ベルリン1971ライヴ (Seidr, 2014) | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

アシュ・ラ・テンペル - ベルリン1971ライヴ (Seidr, 2014)
アシュ・ラ・テンペル Ash Ra Tempel ‎- ベルリン1971ライヴ Berlin, May 19, 1971 (Seidr, 2014) :  

Reissued Released by Seidr Records SEIDR019, 2014
Originally Released by Manikin Records as "Manuel Gottsching: Private Tapes" Vol.2(MRCD 7012), Vol.3(MRCD 7013), 1996
(Tracklist)
1. Soiree Academique - 24:17
2. Le Bruit Des Origines - 32:04
[ Ash Ra Tempel ]
Manuel Gottsching - guitar, vocals, electronics
Hartmut Enke - bass
Klaus Schulze - drums, percussion, electronics 

(Reissued Seidr "Berlin, May 19, 1971" CD Liner Cover & CD Label)

 本作もライヴ収録後25年あまりを経て発掘発表されたモンスター級のサイケデリック・ロック・アイテムです。このクラウス・シュルツェ(1947-2022)のアルバム紹介は20世紀中にリリースされたシュルツェのソロ・アルバムを第33作『Dosburg Online』(WEA, 1997)まで紹介してからバンド・メンバーとしてのデビュー作、タンジェリン・ドリームの『Electronic Meditation』'70にさかのぼってご紹介していますが、公式単独アルバムとしてはアシュ・ラ・テンペルの『Ash Ra Tempel』'71の次にシュルツェのソロ・デビュー作(紹介済み)『Irrlicht』'72に続いてコズミック・ロッカーズ・セッション第1作、タロット研究家・タロットカード作家ウォルター・ウェグミュラーの『Tarot』'72('73年初頭説あり)というのが従来のディスコグラフィーでした。ところが1996年になってアシュ・ラ・テンペル~アシュ・ラのリーダー、マニュエル・ゲッチング(1952-)が一気に6枚リリースした未発表音源集『Manuel Gottsching: Private Tapes』Vol.1~6に、シュルツェ在籍時のアシュ・ラ・テンペルのライヴ録音が5曲、3時間分も収録されていたのです。内訳は1971年5月のベルリンのライヴが2曲1時間、1971年9月のスイスの首都ベルンのライヴが1曲1時間、1973年2月のケルンのライヴが2曲1時間10分という誰もが驚嘆したもので、ゲッチングは自主レーベルから全6枚とも1,000枚限定で廃盤にして初回プレスのみで再プレスしないので、うちアシュ・ラ・テンペル音源が含まれているのはVol.2~Vol.6ですが、ゲッチングのソロ、ヘルトムート・エンケ(ベース)脱退後のアシュ・ラ時代の未発表音源が混在した『Private Tapes』からはさまざまな海賊盤が編まれることになりました。

 これも1996年にシュルツェ、ヘルトムート・エンケ(1952-2005)の承認の上でリリースされたライヴ音源なので、重要性も鑑みてご紹介しますが、シュルツェはアシュ・ラ・テンペルのデビュー作の1971年と、1973年のアシュ・ラ・テンペルの第4作『Join Inn』の時だけ在籍(参加)していたのがライヴ音源の分布からもわかります。またエンケ在籍時のアシュ・ラ・テンペルはゲッチングもエンケもSeven Up(LSD)をキメてステージに上がっていたそうで、まるで裸のラリーズを思わせるような、スタジオ録音のアシュ・ラ・テンペルのデビュー作以上に阿鼻叫喚のサイケデリック地獄となっており、おそらくドラムスのシュルツェだけは素面でスタジオ盤以上にテクニカルなドラミングを披露していますが、ぶっ飛んだゲッチングとエンケをしっかりフォローしているためにこれまたスタジオ録音以上に凄まじいドラムスを聴かせてくれます。この5月のライヴはデビュー作が同年3月に録音されて、まだ発売以前のプレミア公演だったと思われますが、2曲で24分と32分の長尺演奏が、アルバム発表後の9月のベルンのライヴでは1曲1時間のさらなる即興サイケデリック地獄にエスカレートするのです。これに素面でつきあったシュルツェのど根性を思うと案外シュルツェもクレイジーなロックンローラー気質があり、アシュ・ラ・テンペルやコズミック・ジョーカーズ・セッションで思い切りロックした分極端に重厚なソロ・デビュー作『Irrlicht』に向かったこのアーティストの振幅の大きさをよりいっそう感じられる、廃盤のままではもったいない必聴のライヴです。曲が曲にもなっていないクラウトロックの混沌を追体験するにはトップクラスの音源として、そろそろゲッチングさんも正式再発売してくれないものでしょうか。

(旧記事を手直しし、再掲載しました。)