第二章その1!Nagisaの国のアリス・第六回 | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。



 (11)

 第二章。
 正月、真昼、場所は川辺。あと必要なのはサルとイノシシとキジね、とアリスは言いました。私そんなこと言いません、とアリス。どうしてかね、旅のお伴は多い方が楽しくないかい?だから水玉の服も着なくちゃね、とドジソン先生は言いました。どうしてです?フィリピンのお正月ではそうするんです、同じ島国として共感するものがありませんか?ちなみにエクアドルのお正月は人形を殴って燃やす、アメリカとオーストラリアでは何もしない、デンマークでは椅子から飛び下りる、スペインでは葡萄を12粒食べる、ペルーでは人と人とが殴りあいます。国はさまざま、世界は広いですねえ。
 そのうち風呂なし木造アパートだらけの国があります。ヤポネシアです、とエディス8歳(即答)。正解、エディスにはご褒美にリデル家ご令嬢の長女の地位に就任していただきましょう。堪忍願います先生!勝手に他人の家の家族構成をいじらないでくださいませんか、と敬語がでたらめなロリーナ13歳。
 もうやめて!とアリス(10歳)が割って入りました。私がイヌとサルとキジを探せばいいんでしょう?ちょっと違う気もしますが、とイナバさんは言いました、とにかく前向きにやる気を出したのはめでたいことです。気が変わらないうちにさっさと行きましょうか。ですが無事にたどり着けるとは保証はしませんよ。
 無責任な道案内に頼んじゃったわね、とアリスは心の底から後悔しました。もちろん私に心なんかないけどね。でも心がなければ底がないとは限らないわよ。とにかく問題はもう解決したも同然ね、とアリスはオホホホホホのポーズをイメージしました。
 ウサギ!とアリス。イナバです、とウサギ。いいからイヌとサルとイノシシを連れてきなさい。噛めない肉はよく揉んで持ってくるのよ。麺棒で叩いてほぐす手もあるけどね。
 都合良くスーパーカブが路傍に乗り捨ててありました。盗ってけと言わんばかりですねえ。とお!とアリスが蹴飛ばしました。だんだん快感になってきました、とイナバさん。そりゃどうも。じゃ次に良い目が出たら上がりよ、とアリス。んじゃ行くわよ。
 話はまとまりましたか、とドジソン先生。いえ全然、とロリーナ(即答)。まだ全然、とエディス。もうすっかり、の間違いじゃないですかあ、とドジソン先生は投げやりな態度でやにさがってみせました。ほら、アリスはもう原チャリまで手に入れましたよ。ヘイ!
 手に入れてません、とアリスは言いました。手に入れてません、とアリスは言いました。


 (12)

 家族を人質に取られてはねえ、とドジソン先生、そう軽々しく動くわけにはいかないでしょう。この国では本当は他人のことなどどうでもいいくせに、国際問題というとやたらと頭に血がのぼる人が多い。それに乗じて一気に強気な外交政策を掲げて支持層を集めようとする政党が出てきます。ところが選挙に大勝した後は何もしない。まるで南方戦没者遺骨収集団体のようだ。そういうわけで、私は政治と宗教のことは話題にしないことにしているのです。となると話題はひとつしかない。
 つまりセックスですが、とドジソン先生は言いました、しかし13歳と10歳と8歳の姉妹にセックスの話などして私はどうしようというのでしょうか?やばい性癖が露見してしまう危険に近づいてしまうにせよ実りのある話になるわけなどありません。とにかく川の向こうに渡ったアリスの行方を追ってみましょう。それがあなたがた家族の義務であり、責任ということです。
 ロリーナは自分の両親ならともかく、未成年者である自分やエディスに義務や責任が問われるとは思えず、他人とはいえ状況的に成人男性であるドジソン先生こそ監督責任者ではないか、と思いましたが、今ドジソン先生に逆らったらアリスにはどんなバッドエンドが待ち受けていないとも限りません。そんなロリーナの心配をよそに、アリスは柳の枝をびゅんびゅん振り回していました。柳の枝は風を切り、アリスのためにうねり声を上げました。鈍くさいウサギに仲間(?)集めを命令してから、もうどのくらい経ったのかしら?それも腕時計をしているウサギに聞かなければわかりません。
 川の向こう岸とこちら岸で、子供がキャッチボールをしていました。川幅は一定していないのかもしれません。アリスは退屈して、つまんない!と叫びましたが無駄なので、スカートの腰に挟んできた愛読書を読み始めました。
・愛読書「今日から楽しむ100円おかず」
 内容は、
・主菜 = かぼちゃのそぼろ和え、子持ちカレイの煮つけ、鶏唐揚げの酢豚、薄切り豚ゆでしゃぶサラダ、じゃがいもの牛すき煮、ほうれん草とベーコンの薄口バター炒め、etc。
・副菜 = 温奴豆腐オクラの小口切り乗せ、 豆腐の玉子とじステーキ、簡単レンジ蒸しひねりナス、キュウリとワカメの甘酢あえ、etc。
・汁物 = 細切り玉ねぎとかき玉の味噌汁、薄切り豚肉と細切り野菜の豚汁、簡単ミネストローネ、簡単ボルシチ、簡単ポトフ、etc。
 アリスはこういう貧乏人の食生活に、何となく興味がありました。
 続く。

※「Nagisaの国のアリス」は今年1月1日から始めた全5部・全200回予定の偽童話シリーズ『偽ムーミン谷のレストラン』の第5部・完結編です。前4部「偽ムーミン谷のレストラン」「荒野のチャーリー・ブラウン」「戦場のミッフィーちゃんと仲間たち」「夜ノアンパンマン」(各40回)は、記事カテゴリー「シリーズ童話」にまとめてありますので、もしよければ、拾い読みしていただければ幸いです。ひたすらくだらない内容ですし、自分で言っては何ですが、またまりえさんに描きおろししていただいたイラストのおかげですが、けっこう面白いですよ。

⬇イラストのお問合せはこちらまで。