ザ・デヴィアンツ - プトゥーフ!(Underground Impresarios, 1968) | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

ザ・デヴィアンツ - プトゥーフ!(Underground Impresarios, 1968)
Reissued Japanese Captain Trip Records CD
ザ・デヴィアンツ The Deviants - プトゥーフ!Ptoof! (Underground Impresarios, 1968) :  

Originally Released by Underground Impresarios IMP 1, 1968
Distributed in 1968 in the UK through 'underground music' retailers of the time, as well as via mail-order ads in OZ and International Times (in which Farren was also a contributor). Some 8, 000 copies were sold before its reissue on Decca.
Japanese CD Reissued by Captain Trip Records CTCD-311, 2001
A&R by Stephen Sparkes
Recording Engineer by John Pantry, Victor Gamm
Cover Artwork by Kipps
Liner Notes by John Peel
Producer by Johnathon Weber
(Side 1)
1. Opening (Sid Bishop, Mick Farren, Russell Hunter, Cord Rees, Steve Sparks) - 0:08
2. I'm Coming Home (Sid Bishop, Mick Farren, Russell Hunter) - 5:59
3. Child of the Sky (Farren, Cord Rees, Hammond) - 4:32
4. Charlie (Sid Bishop, Mick Farren) - 3:56
5. Nothing Man (Mick Farren, Moore) - 4:21
(Side 2)
1. Garbage (Sid Bishop, Mick Farren, Russell Hunter) - 5:36
2. Bun (Cord Rees) - 2:42
3. Deviation Street (Mick Farren) - 9:01
[ The Deviants ]
Mick Farren - lead vocals, piano
Sid Bishop - guitar, sitar
Cord Rees - bass, spanish guitar
Russell Hunter - drums, backing vocals
Duncan Sanderson, Stephen Sparks, Jennifer Ashworth - vocals & mumbling
(Original Underground Impresarios "Ptoof!" LP 3-Fold Cover, Liner Cover & Side 1 Label)
Liner Cover
Side 1 Label
 1960年代末、ミック・ファレン(1943-2013)は、サイケデリック・パンク・グループ、デヴィアンツを結成。彼のビートニク的散文詩と荒々しいロックン・ロールの融合を試みた。デヴィアンツの活動の拠点であったノッティングヒルゲイトには、シド・バレット、スティーヴ・トゥック、レミー(のちホークウィンド~モーターヘッド)、ラリー・ウォリス(ピンク・フェアリーズ~UFO)など、当時のロンドンのシーンを彩る多くのミュージシャンやアーティストが集まっていた。ミック・ファレンは、デヴィアンツを足がかりにファンジンやレコードを通してロンドンのサイケデリック・シーンの活性化に一役努めた。また、ファレンは文筆家でもあり、現在までに多数の暗黒小説を執筆している。変わったところではバイカー/ロックン・ロール文化としての革ジャンの本なども出版している。デヴィアンツは、ミック・ファレンの歴史であり現在も継続中である。 
(2004年・キャプテン・トリップ・レコーズによる日本盤発売時のインフォメーションより)

 ファレンは15枚のアルバムと50冊あまりの著作を残し、2013年の7月13日に逝去した。享年69歳。ディヴィアンツとしてロンドンのボーダーライン・クラブに出演した直後だった。
(アメリカ版ウィキペディアより)

Mick Farren and Russell Hunter had met 21 year old millionaire Nigel Samuel who funded the £700 required for this recording. Eight thousand copies were sold on their own Impressario label via mail order through the UK Underground press, such as Oz and International Times, before being picked up and released by Decca Records.It was re-released in the mid-1980s by Psycho.
 (拙訳)ミック・ファレンとラッセル・ハンターが21歳の相続成金ナイジェル・サミュエルから700ポンドを録音費用にまきあげたことで、このアルバムは制作された。デッカ・レコーズに注目されて市場に一般用プレスが出回る前に、バンド自身の自主制作レーベル“インプレッサリオ"から8000枚を『オズ』や『インターナショナル・タイムス』などのイギリスのアンダーグラウンド雑誌の広告により通信販売で売り上げている。また80年代半ばにもインディーズのサイコ・レーベルから再再発された。

The cover came in a 6-panel foldout with extensive notes, including a review by John Peel: "There is little that is not good, much that is excellent and the occasional flash of brilliance".There are two quotations in the cartoon drawing that fills three panels; one of them, "When the mode of the music changes, the walls of the city shake!!" is adapted from a quote in Plato's Republic.
 (拙訳)アルバム・ジャケットは6面開きになり、膨大な解説文が掲載され、そこにはジョン・ピールによる「欠点のほとんどない、素晴らしいひらめきに満ちたアルバム」という評も含まれている。三面分にたっぷり描かれている漫画には二つの引用文があり、そのうち「音楽の様式が変わる時、都市の壁は震撼する」はプラトンの『国家』からの引用になる。
(アメリカ版ウィキペディアより)
(Transatlantic Records TRA 204 "The Diviants (Third Album)", 1969 Front Cover)
Reissued Japanese Captain Trip Records CD
 ディヴィアンツはサード・アルバムまで出して一旦解散しますが、Transatlantic Recordsから発表されたサード・アルバムはなんと当時日本盤も出ました。帯には「ユニークな才能!これほどまで「ロック」と「芸術」を融合させた音楽があっただろうか!驚異のサード・アルバム!!」とあり、ライナーノーツには「ミリオンセラー」と、とんでもない出鱈目が書いてあります。イギリスの元祖アンダーグラウンド・ロックには違いありません。音楽的にはフランク・ザッパ&マザーズ・オブ・インヴェンジョンの影響が強く、ガレージ・パンク的な面は後に交流を持つアメリカのMC5やストゥージスに似ていますが、アルバム・デビューはデヴィアンツの方が先でした(MC5は1969年2月、ストゥージスは1969年8月)。

 ただの馬鹿騒ぎをやっているだけではロック史上最悪のバンドとも言えるし、最悪=最高とすれば最高のデビュー・アルバムでもあるでしょう。内容がとりとめもなく気まぐれなのはジャンキーだから仕方ないので、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのような覚醒した攻撃性ではなく気楽なお祭り騒ぎにすぎない、とも言えます。700ポンドは、当時のレートで70万円ですが、現代に換算すればその10倍にはなるでしょう。それだけのお金を投じたのは、勢を凝らしたジャケットとレコーディング時のパーティー代が大半だったと思われます。たまたま引っ張り出して聴き返していただけですが、ミック・ファレンさんの8年目の命日がそろそろ近づいているとは調べるまで気づきませんでした。ロックの世界には、ファレンさんのように一生面白おかしく生きていただけのような人もいると思うと実にめでたい気もします。