レッド・ツェッペリン - デストロイヤー (DRGM, 1982) | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

レッド・ツェッペリン - デストロイヤー (DRGM, 1982)
(Reissued The Swingin' Pig CD Front Cover)
(Enhanced DRGM LP Box Set Sleeve Cover)
レッド・ツェッペリン Led Zeppelin - デストロイヤー Destroyer (DRGM, 1982) :  

Originally Released by Smilin' Ears 77-300, 1977, Switzerland
Enhanced Reissued by DRGM 505, 4LP, 1982, US
Reissued by The Swingin' Pig, TSP 059-3, 2CD, 1990, Luxemburg
Reissued by Last Stand Disc LSD-22/23/24, 3CD, 1999, Japan
Engendered by Giorgio Phorgal
Technician : Bob Kevins, Cliff Chucks, M. Mauss
Produced by Richard Cole
(3 CD Version Tracklist)
(Disc 1)
1-1. The Song Remains The Same (cut in) (Page, Plant) - 3:46
1-2. The Rover / Sick Again (Page, Plant) - 6:13
1-3. Nobody's Fault But Mine (Page, Plant) - 6:31
1-4. In My Time Of Dying / You Shook Me (Page, Plant, Jones, Bonham / Willie Dlxon, J.B.Lenoir) - 10:58
1-5. Since I've Been Loving You (Page, Plant, Jones) - 8:24
1-6. No Quarter (edit) (Page, Plant, Jones) - 20:18
1-7. Ten Years Gone (Page, Plant) - 8:53
(Disc 2)
2-1. The Battle Of Evermore (Page, Plant) - 7:10
2-2. Going To California (Page, Plant) - 4:24
2-3. Black Country Woman (Page, Plant) - 2:30
2-4. Bron-Y-Aur Stomp (Page, Plant, Jones) - 5:11
2-5. White Summer (Page) - 4:00
2-6. Black Mountain Side (Page) - 1:33
2-7. Kashmir (cut out) (Page, Plant, Bonham) - 8:34
2-8. Over The Top (Out On The Tiles / Moby Dick) (edit) (Page, Plant, Bonham / Page, Jones, Bonham) - 7:33
(Disc 3)
3-1. Guitar Solo (cut in) (Inc. Star Spangled Banner) (Page) - 9:45
3-2. Achilles Last Stand (Page, Plant) - 9:40
3-3. Stairway To Heaven (Page, Plant) - 10:10
3-4. Rock And Roll (fade in) (Page, Plant, Jones, Bonham) - 3:26
3-5. Trampled Underfoot (Page, Plant, Jones) - 6:51
[ Led Zeppelin ]
Jimmy Page - guiters
Robert Plant - vocals
John Paul Jones - bass, acoustic guitar, Mellotron
John Bonham - drums, percussion
(Enhanced DRGM Box Set Plastic Carrying Case & Inner Sleeve)
 本作はカリフォルニア州イングルウッドのロサンゼルス・フォーラムでの1977年6月23日公演を収録した『For Badgeholders Only』や、のちに公式ライヴ盤『How the West Was Won』2003として発売されたやはりロサンゼルス・フォーラムの1972年6月25日公演を収録した『Burn Like A Candle』とともに、レッド・ツェッペリンのパイレート・リリースのライヴ盤としてはもっとも有名なものです。『For Badgeholders Only』と本作『Destroyer』はともにジミー・ペイジ直々にスタッフに命じてミキサー卓からライン録音されていた、いわば編集前の公式ライヴ録音がそのまま流出してリリースされた最高音質のマスターテープがソースになっていることでも知られ、演奏やセットリストの充実でも1973年収録・1976年リリースの(ライヴ映画のサウンドトラックのためリリースが遅れた)公式ライヴ盤『永遠の詩 (The Song Remains The Same)』より優れた内容と定評あるほどです。この1977年のツアーは1976年3月に発売されたツェッペリン7作目のアルバム『Presence』(Swan Song, 1976)に伴うツアーで、『Presence』はレコーディング直前のロバート・プラントの交通事故、レコーディング中のプラントの長男の急死を押して制作された難産のアルバムで、ツェッペリンのアルバムではもっともソリッドな印象を受けるアルバムであり、いつもはベーシストのジョン・ポール・ジョーンズがメロトロン、オルガン、ピアノを担当する楽曲が一切ないストイックなサウンドでアルバム全編が統一され、楽曲も攻撃的で陰鬱なムードの曲が並ぶため、セカンド・アルバム以降すべてのアルバムを英米チャートNo.1にしてきたトップクラスの人気バンドでしたから『Presence』も英米1位になりましたが、売り上げはレッド・ツェッペリンの全9作のスタジオ・アルバムのうち解散後リリースのアウトテイク集『Coda』1982に次いで下から2番目(その次が『Led Zeppelin III』1970)となっています。しかしレコーディング・ブランクが長引いた分1年半にもおよぶヨーロッパ~全米ツアーは盛況で、ローリング・ストーンズ、ザ・フー、またピンク・フロイドと並ぶコンサート動員数を誇るツェッペリンとしても、観客動員数記録を塗り替えるものになりました。

 またローリング・ストーンズ、ザ・フー、ピンク・フロイドと並んでレッド・ツェッペリンは'60年代末からほとんどのコンサートが観客、または会場側スタッフによってライヴ収録されており、ツアー・リストがそのまま海賊盤カタログにもなるほどですが、この『Presence』後のツアーは初期から最新作までの代表曲が並ぶセットリストからも人気の高いツアーになりました。初期からのジャムセッション的な定番曲「Dazed And Confused」や「How Many More Times」はすでに外され、やはりライヴでは中間部が即興のロックンロール・メドレーになる「Whole Lotta Love」もすでに外されていますが、ツェッペリンはこのツアーのあとレコーディングに入り1979年8月発売の新作『In Through the Out Door』までスタジオ・アルバムとしては3年ぶりのリリースを行うものの、1979年のコンサートはアリーナ・クラスの会場で4回きり、翌年1980年夏から開始されたヨーロッパ~全米ツアーの予定はアルコール依存症になっていたジョン・ボーナムの飲酒中の窒息による急逝からほんの1週間ほどの日程で中止を余儀なくされます。また3年ぶりの新作『In Through the Out Door』を挟んだブランクはライヴの出来にてきめんに表れ、バンドのテンションや演奏力の低下も目立ってしまったため、1977年ツアーはライヴ・バンドとしてのツェッペリン最後の輝きが最高のセットリストで聴けるもの、しかも1977年4月27日オハイオ州クリーヴランドのリッチフィールド・フォーラムで収録されたこの『Destroyer』は、先に触れたロサンゼルス・フォーラムでの1977年6月23日公演を収録した『For Badgeholders Only』ともども、ミキシング・コンソールから直接マスターテープが残された、公式録音のライヴ・ソースと変わらない最上の高音質のパイレート・リリースになりました。

 本作の最初のリリースはスイスのSmilin' Earレーベルからの1977年の4枚組LPリリースでしたが、ドラム・ソロ曲「Out On The Tiles / Moby Dick」を始め数曲の欠落がありました。ほぼ完全版リリースとなったのは1982年の、豪華プラスチック・キャリング・ケース入りのDRGMレーベルからの4枚組ボックス・セットで、このDRGM版でのクレジットによって録音者はボブ・ケヴィンズ、クリフ・チャックス、M・モウスと明かされ、またDRGM盤ではリチャード・コールのプロデュースの下ジョルジオ・フォーガルが三者のテープからマスターテープを作成したと堂々(全員偽名かもしれませんが)と明記されました。「Song Remains The Same」の冒頭が切れてカットインから始まる、20分にもおよぶ「No Quarter」はどうやら三者のテープとも不完全収録だったらしく(5月後の11月の『For Badgeholders Only』ではこの曲は31分を越える長さで演奏されています)複数の音源(大会場のため、複数のミキサー卓が使われたようです)をつなぎ合わせてある、ドラム・ソロ曲「Over The Top (Out On The Tiles / Moby Dick)」も同様に複数ソースからの編集ヴァージョン、「Achilles' Last Stand」の前奏をなす「Guitar Solo」も冒頭欠落のカットイン、アンコール演奏曲「Rock & Roll」も冒頭欠落でカットイン、と複数ソースから編集しても完全版にはならず、またDRGM盤の4枚組LPはアナログLPの収録配分上曲順が必ずしも演奏順でない、という難点がありました。以下に記載するのがDRGM盤アナログLP4枚組の曲目です。

(1982 DRGM 4LP Tracklist)
(LP 1)
A1. Song Remains The Same
A2. Sick Again
A3. Nobody's Fault But Mine
B1. In My Time Of Dying
B2. SInce I've Been Loving You
(LP 2)
C1. No Quarter
D1. Ten Years Gone
D2. Battle Of Evermore
D3. Going To California
(LP 3)
E1. Guitar Solo
E2. Achilles' Last Stand
F1. White Summer
F2. Black Mountain
F3. Kashmir
F4. Stairway To Heaven
(LP 4)
G1. Bron-Y-Aur Stomp
G2. Rock & Roll
G3. Trampled Under Foot
H1. Out On The Tiles
H2. Moby Dick

 やがてCDリリースがパイレート・リリースの標準となった80年代末以降、1枚に80分弱まで収録可能なCDは片面20~30分が限度のアナログLPより長い連続収録が可能なため、実際の演奏順に復元されてCDリリースされるようになりました。長尺の「No Quarter」やドラム・ソロ曲「Over The Top (Out On The Tiles / Moby Dick)」、「Guitar Solo」、冒頭欠落の「Rock & Roll」などをカット、または短縮編集してCD2枚・1時間20分程度に収めたリイシューもありましたが、CD3枚組ではDRGM盤で集成されたほぼ完全な2時間50分の演奏(実際には「Song Remains The Same」や「Guitar Solo」「Rock & Roll」の冒頭欠落、「No Quarter」や「Over The Top (Out On The Tiles / Moby Dick)」の複数ソース編集がなければ3時間以上におよんだコンサートだったでしょう)曲目を、演奏順に復元した3枚組CDヴァージョンがもっとも完備したものとされます。実際この『Destroyer』は『For Badgeholders Only』とともに、レッド・ツェッペリンとしては標準的なコンサートだったとされるニューヨークの1973年7月27日~29日のマディソン・スクエア・ガーデン公演から収録された公式ライヴ・アルバム『Song Remains The Same』を演奏内容、音質、セットリストともにしのぎ、解散22年後に公式ライヴ盤『How the West Was Won』2003として発売されたロサンゼルス・フォーラムの1972年6月25日公演に匹敵します。ストーンズ、ザ・フー、ツェッペリン、フロイドはあまりに膨大なライヴ・ソースのパイレート・リリースがあり、お粗末なオーディエンス録音からエクセレントなミキサー卓録音までピンキリですが、やはり膨大なライヴ・ソースのあるジミ・ヘンドリックス、短命ながら集中的にライヴを遺したザ・ドアーズ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ジョイ・ディヴィジョンらとともにスタジオ・アルバムではうかがい知れなかった演奏が聴けるため、こうしたアイテムも欠かせません。幸いこうしたものは新品はオフィシャル盤より高価、中古盤では捨て値で出回ることが多いので、みすみす新品に手を出して業者を儲けさせるよりは型落ちの中古がお薦めです。また代表的なものはYouTubeにアップされていますので、欲しくなるかはYouTubeで試聴してから決められます。ツェッペリンの場合は、まず本作あたりがファースト・チョイスかと思われます。