(加筆あり)ジョン・レノン没後40周年 | 人生は野菜スープ~アエリエルのブログ、または午前0時&午後3時毎日更新の男

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元職・雑誌フリーライター。バツイチ独身。午前0時か午後3時に定期更新。主な内容は軽音楽(ジャズ、ロック)、文学(現代詩)の紹介・感想文です。ブロガーならぬ一介の閑人にて無内容・無知ご容赦ください。

ジョン・レノン John Lennon - スターティング・オーヴァー (Just Like) Starting Over (John Lennon) (Geffen, 1980)YouTube Starting Over MV

 命日の12月8日を逃しましたが、ちょうど40年前の今頃この曲がジョン・レノン(1940-1980)の急逝を受けて大ヒットしていたのを忘れることはできません。5年ぶりのカムバック・アルバム『Double Fantasy』はジョン・レノンとヨーコ・オノの新曲を半分ずつ(LP収録順では交互に収めた)共作として前月の11月に発表され、アルバム冒頭曲にして第一弾シングル「スターティング・オーヴァー」(B面はヨーコさんの怪作「Kiss Kiss Kiss」)はアルバムより少し早めに先行発売されました。曲調にはロイ・オービソンの数々の名曲ややビーチ・ボーイズの「Don't Worry Baby」(特にメロディーの一部がまったく同じ)との類似が見られます。アルバム発売前にNHK-FMでアルバム収録曲からジョン・レノン分7曲がオン・エアされ、カセットテープに録って(LPレコードが高価で輸入盤との時間差があった昔は、ゆかしい「エア・チェック」という風習がありました)くり返し聴き、シングル盤は発売当日の放課後に本厚木の有隣堂の隣にあったレコード店に買いに行きました。アルバムの方は買うのをためらっていました(ラジオで流されエア・チェックした7曲以外はヨーコさんの曲でしたから)。アメリカのビルボードのチャートでは1位のブルース・スプリングスティーン「ハングリー・ハート」がアルバム『ザ・リヴァー』とともにロング・ヒットを続けており、「スターティング・オーヴァー」はトップ3内にとどまっていた記憶があります。殺害事件の訃報を聞いたのはそれから半月も経たない頃でした。下校して家に着き自室のラジオを点けたら報道が流れてきて、茫然自失としてわけがわかりませんでした。居間のテレビを点けたらやはり同じ報道、すぐに学校でロックのレコードを貸し借りしあっている連中から電話がかかってきました。連絡網のようにぼくも友人たちに電話しました。当時自分の父はまだ存命でしたが、父の訃報を聞いたらこんな気持になるんじゃないかと思いました(実際2年後に母を亡くした時はそれどころではありませんでしたが)。

 1980年はジャズではビル・エヴァンスが亡くなった年ですが、春先に予定されていたポール・マッカートニー&ウィングスの来日公演がポールのマリファナ所持逮捕で流れたりと情けない事件もありましたから、ジョンの突然のカムバック(アナウンスされたのはアルバム発売の半年前でした)とその直後の殺害事件ほど劇的なクライマックスはありませんでした。2020年、もしジョン・レノンが長らえてこの年末に逝去していたら、世間の話題はその功績よりも経済的波及効果ばかりになっていたでしょう。幸い1980年の世間にはレノン急逝による経済効果などという浅ましい発想はありませんでした。40年間で人の心も変わったものです。変わらないのはレノン夫人(未亡人)を演じ続けてきたヨーコさん(「(今夜のパーティーには)またヨーコが新しい恋人を連れて来た」『アンディ・ウォホール日記』より)だけです。生誕80周年・没後40周年でジョン・レノンが特に話題になることはなく、今年も間もなく年が代わります。今年はジャズ界ではマッコイ・タイナー、ロックではフローリアン・シュナイダー、加部正義、リック・オケイセック、アンディ・ギルが亡くなっています。5年、10年、20年、30年、40年刻みで否応なしに風化していくものはあるのです。