息子は赤ちゃんの頃、とても泣き虫でした。

朝でも夜中でも、抱っこして立って揺すってあげないと、すぐに泣いてしまう。

外に出るときもベビーカーに乗るのを嫌がってギャーギャー泣くので、いつも抱っこ。

今思えば、あの頃の私はちょっとノイローゼ気味だったのかもしれません。

 

そんな息子、小学校に上がる頃になっても、ひとりでトイレやお風呂に入るのを怖がる子でした。

「お風呂に男の人がいる」

「こわい……」

最初のうちは一緒にお風呂までついて行っていました。

でも、毎回となるとだんだん面倒になってきて、

「お化けなんて家にはいない!」

と叱って、ひとりで行くように促していました。

「こわい~」

という息子の声を聞きながら、台所から

「大丈夫よ~」

と返事をする

今思えば、もっとちゃんと息子の話を聞いてあげればよかったのですが、

その頃の私は「子どもなんだから怖がっているだけ」と思っていたのです。

ところが、そんな私が思い知らされる出来事がありました。

 

たしか息子が小学2~3年生の頃だったと思います。

朝、いつも通り家族を送り出した後です。

食卓テーブルの上に四つ折りにされた紙が置いてありました。

表には

「おかあさんへ」

と書いてあります。

なんだろう?

そう思って紙を開いてみると……

そこには、こんなことが書かれていました。

「おかあさん、ぼくをせいしんびょういんに連れて行ってください。

ぼくの中にもうひとりいます。

学校にいるとき話しかけてきます。」

 

一瞬で頭の中が真っ白になりました。

 

「どどど、どうしよう……」

 

だって今朝も、何事もなかったかのように家を出て行った息子。

いや、何事かあったけれど、それを言えないまま学校へ行ったのです。

手紙を書くほど、一人で悩んでいたのでしょう。

それなのに私は、何も気づかず、いつものように息子を送り出していました。

「学校に迎えに行ったほうがいいのだろうか」

一瞬そう思いました。

でも、学校でいじめられているわけではなさそう

とりあえずその日は帰ってくるのを待つことにしました。

そして帰宅した息子に、手紙のことを聞きました。

 

すると息子は、

学校にいると急にイライラすることがあること。

授業中に、頭の中で声が聞こえてくること。

時には、

「こんなとき、なんて言えばいいの?」

などと聞いてくること。

友達と話しているときにも、自分の中の誰かがしゃべっていること。

そんなことを話してくれました。

 

私は、

 

「息子の身を守ってもらわなきゃ!」

 

とパワーストーンのお店お店を探し、すぐに相談に行きました。

 

そこは、30代くらいの優しい顔立ちをした男性が迎えてくれました

その人は、息子の話を静かに聞いてくれました。

息子も、この人なら大丈夫だと思ったのでしょう。

普段は私にも言えなかったことを、少しずつ話していきました。

そして話を聞き終えたその人が、息子にこう言いました。

 

「誰にも話せないで、つらかったね。」

 

その言葉を聞いた息子の目から、涙があふれました。

その涙を見て、私は胸がいっぱいになりました。

 

小さい頃から、私には見えないものが見えてい

怖い思いをしてい

でも私は、

「お化けなんていない!」

と叱ってしまっていた。

だから誰にも相談できず、一人で抱え込んでいたのでしょう。

息子

「ごめんね」

と謝りました。

 

その後、息子はパワーストーンのブレスレットを作ってもらい、それを身につけました。

帰る頃には、少し笑顔も戻っていました。

 

 

そして、

「体に誰かが入ってこないようにするには、土の中で育っている食べ物を食べるといい」

というアドバイスもいただきました。

土の中で育っている食べ物……。

ごぼう?

じゃがいも?

にんじん?

玉ねぎ?

……ということは、

「今夜はカレーかな」

なんて思いながら帰ったことを覚えています。

 

その後もしばらくは、何か見えていたのでしょうか。

ある日、お風呂上がりの私を見た息子が、私の後ろをじっと見て言いました。

「男の人がいる」

「えっ、見えるの!?」

思わず聞き返しました。

すると息子は、

「うーん……見えないけど、いる」

どうやら、目で見ているわけではないらしい。

目ではないもので見ている」という感じなのでしょうか。

その後、息子中学生になると、そんな話はだんだんしなくなりました。

 

時々、私が

「最近、そういうのは大丈夫?」

と聞こうとすると、嫌そうな顔をします。

どうやら本人としては、もうそんな話はしたくないらしい。

それなら、それでいい。

母としては、息子が普通毎日を過ごせるようになったことが何より嬉し

 

そういえば――。

息子がまだ赤ちゃんだった頃のお盆の時

私はリビングで息子を抱っこして、あやしていました

突然、息子が庭のほうを見てにっこり笑いもいない何かに向かって手を振ったのです。

「もしかしたら、ご先祖様が息子の顔を見に来ていたのかな」

ということがあったのを思い出しました

 

あんなに泣き虫で怖がりだった息子、今では立派な社会人になりました。

 

そして

 

「長男だから、仏壇は自分が引き継ぐ」

 

と言ってくれま

あの小さかった息子が、そんなことを言うようになったのかと思うと、なんだか感慨深いものがあります。

 

息子がこれからも、ご先祖様に見守られ、穏やかで幸せな人生を歩んでいけますように。