児童の権利に関する委員会からの懸念や勧告。

原本は、外務省のHPのここ を参照。

それにしても、懸念や勧告が多いこと多いこと。
まあ、子の連れ去り問題で司法の怠慢は痛感してるところだから、
さもありなんという感じではあるが。

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第1回政府報告審査後の委員会の最終見解(1998年)。
C.主な懸念事項
7.委員会は、児童の権利に関する条約が国内法に優先し国内裁判所で援用できるにもかかわらず、
実際には、通常、
裁判所がその判決の中で国際人権条約一般、就中、
児童の権利に関する条約を直接に適用していないことを懸念をもって留意する。

14.委員会は、法律が、条約により規定された全ての理由に基づく差別、特に出生、言語及び障害に関する差別から児童を保護していないことを懸念する。
委員会は、嫡出でない子の相続権が嫡出子の相続権の半分となることを規定している民法第900条第4項のように、
差別を明示的に許容している法律条項、及び、公的文書における嫡出でない出生の記載について特に懸念する。

D.提案及び勧告
31.委員会は、締約国が、条約の全ての分野に取組むために、また、一層の行動が必要とされる分野の確認及び達成された進歩の評価を促進するために、
データ収集のシステムを発展させ、適切な細目別の指標を確認するための措置をとることを勧告する。
33.委員会は、条約の規定が児童及び成人の双方に広く知られ理解されることを確保するために一層大きな努力が締約国により払われるよう勧告する。
警察の構成員、治安部隊及びその他の法執行官、司法職員、弁護士、裁判官、全ての教育段階の教師及び学校管理者、ソーシャルワーカー、中央または地方の行政官、児童養護施設職員、心理学者を含む保健・医療職員を含め、
全ての職業集団に対し、
児童の権利に関する体系的な訓練及び再訓練のプログラムが組織されるべきである。
権利の完全な主体としての児童の地位を強化するため、委員会は、条約が全ての教育機関のカリキュラムに取り入れられるよう勧告する。

35.委員会は、条約の一般原則、特に
差別の禁止(第2条)、
児童の最善の利益(第3条)及び
児童の意見の尊重(第12条)
の一般原則が、単に政策の議論及び意思決定の指針となるのみでなく、
児童に影響を与えるいかなる法改正、司法的・行政的決定においてもまた、
全ての事業及びプログラムの発展及び実施においても、適切に反映されることを確保するために一層の努力が払われなければならないとの見解である。
特に、嫡出でない子に対して存在する差別を是正するために立法措置が導入されるべきである。

40.委員会は、締約国が、家庭内における、性的虐待を含む、児童の虐待及び不当な取扱いの事案に関する詳細な情報及び統計を収集することを勧告する。
委員会は、この現象についての理解を促進するために、
児童の虐待及び不当な取扱いの事案が適切に調査され、
加害者に制裁が加えられ、
とられた決定が周知されるよう、また、
これを達成するために、児童にとって容易に利用でき親しみやすい不服申立手続が確立されるよう勧告する。

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第2回政府報告
(裁判での条約の直接適用)
8.条約の規定を直接適用し得るか否かについては、これまで児童の権利条約を直接適用しうるか否かを明示的に判示した裁判例はないが、
政府としては、当該規定の目的、内容及び文言等を勘案し、具体的場合に応じて判断すべきものと考えている。

(家事審判)
106.家事審判法1条及び家事審判規則1条は、
各々児童の最善の利益を考慮することが前提とされている。
家事審判は、これらの規定にしたがって行われており、
児童の最善の利益が考慮されているといえる。
⇒法律でうたってても、実際に運用されないと無意味。


第2回政府報告審査後の同委員会の最終見解(仮訳)(2004年)

子の奪取
41.委員会は、子の奪取に関する保護措置が十分でない点について懸念する。

42.委員会は、締約国に対し、1980 年国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約を批准し、実施することを勧告する。

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第3回日本政府報告に関する児童の権利委員会からの質問事項に対する日本政府回答(仮訳)(2010年)
問1.条約は日本の法律の一部であるとの情報をふまえ,
裁判所において本条約(条文)の使用及び参照を促進するためにとられた措置についてお示し願いたい。
(答)
裁判官の研修を担当する司法研修所では,
毎年,
任官時を含めて,
新しい職務又はポストに就いた裁判官に対して実施する各種研修の中で,
児童の権利に関する条約に係る諸問題(適用関係も含む。)についての理解を深めるため,
国際人権問題を専門とする大学院教授や,
人権擁護に携わっている機関の職員(国際機関の職員を含む。)
等を講師として招き,各種講演を実施しているものと承知している。

⇒でた!「承知している」発言!つまり、「そう聞いてます」ってことだよね。
回答なら、きちんと調べてしないかな~。
「調査の結果、こういう状態です」っていってほしいな~。
「聞いてないよ~」って言うつもり満々だな。

さらに,その他の研修においても,
少年事件や
子の監護をめぐる諸問題に関する共同研究等,
児童の権利,保護及び福祉に関する諸問題を取り上げたカリキュラムが行われており,
その中で,児童の権利に関する理解を深めているものと承知している。

⇒カリキュラムが行われてるかもしれないけど、
だからといって「児童の権利に関する理解を深めている」とは言えないね。
逆に、条約を無効化する方法を教えてる気がするのだが。

また,裁判官,検察官及び弁護士になるいずれの者も,
原則として,司法研修所において司法修習を受けた後,
法曹資格を取得するが,
この司法修習においても,
児童の権利に関する条約を含む国際人権全般に関する講義を行っているほか,
少年事件や
子の監護が問題となる事件を取り上げたカリキュラムを実施し,
さらに,関心のある修習生に対し,
その理解を深化させるために児童の権利等をテーマとする選択制のプログラムを提供し,
児童の権利,保護及び福祉について学び,理解を深める機会を設けているものと承知している。

⇒どうなんだろうね。「理解を深める」というよりは、
最高裁による言論統制が行われているとしか思えない。

第3回政府報告審査後の同委員会の最終見解(仮訳)(2010年6月)(PDF)

51.
委員会は,締約国が,
子育ての責任を果たす家族の能力を確保できるように
男女双方にとっての仕事と家庭の間の適切な調和を促進すること,
親子の関係を強化すること,及び,
児童の権利に関する意識を啓発すること
などにより,
家族を支援し強化するための措置を導入することを勧告する。

児童の養育費回収
68.
児童の養育費の回収の促進を目的とする
2004年の民事執行法の改正に留意しつつ,委員会は,国を離れた親を含む
多数の別居又は離婚した親,多くは父親,が自らの扶養義務を果たさないこと,及び
未払い養育費を回収する現行の手続が十分でないことを懸念する。

69.委員会は,締約国に対し,以下を勧告する;

(a)婚姻の有無に関わらず,双方の親が子どもの養育費を等分に負担し,
どちらかがその義務を果たさない場合,
養育費を効果的に回収することを確保する現行法及び措置の実施を強化すること,

(b)支払い不能の親の養育費支払い義務に応じ,
適当な場合には,後から民事又は刑事法規を通じてその未払い分を回収する,
いわば国家基金のような新たな機構を通じて養育費が回収されることを確保すること,

(c)親責任及び子の保護措置についての管轄権,準拠法,承認,執行及び協力に関するハーグ条約(1996年)
を締結すること。
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養育費の不払い問題は、親子断絶司法と大いに関係あるので、
ここが攻めころかな~。