きのうのある電話から今日までのこと


『菊地さん、ご無沙汰してます、Eです・・・・ゴホゴホ』


『こちらこそ、ご無沙汰しています』


『皆さんお元気ですか・・・・・ゴホゴホ』


『Eさんはお変わりありませんか』


『三途の川の岸で船を待っているところです・・・・・ゴホゴホ』


Eさんはワテより6歳年上で不動産業を営んでいる方


用件はワテを明日大地主さんに紹介したいとのこと


そして今日、大地主宅に向かう車中


『菊地さん、わたし肺がんなんですよ』


『エーッ』


『転移もしています』


『・・・・・・・・』 ワテ無言


声と顔に悲壮感はない、かといって虚勢を張っているわけでもない


目前に迫ってくる死を前に驚くほど冷静である


ワテだったらきっとジタバタするであろう


冗談までとびだす明るい病人だ、でもそれはワテへの気遣いでしょう


別れ際に車中で一本づつタバコに火をつけた


閻魔さま、Eさんが来たら高い船賃を請求して追い返してください。