皆さん、こんにちは
最近衰弱している丹羽です
今日は予告通りのクロサンショウウオ(Hynobius nigrescens)
飼育個体:弘前市産/2013.4.28採集
東北、北関東、北陸、長野・岐阜北部の山地に分布する小型サンショウウオです。成体は全長120-180㎜ほど。和名・学名が示すように全身が一様に黒っぽく(茶褐色ぽいことも)模様はあまり認められません。
一方、腹側は白っぽいです。他種に比して四肢・尾が長くスタイリッシュです。
新潟県佐渡の個体群は以前、サドサンショウウオ(Hynobius sadoensis)として記載されましたが、現在ではシノニム(同物異名)として扱われ抹消されています。佐渡と本土の集団は比較的長い地理的隔離があったのにも関わらず、遺伝的に分化が起こらなかったようです(卵嚢の形態には差異が認められるが)。また、同じサンショウウオ科のキタサンショウウオ(Salamandrella keyserlingii)は両生類の中で最大の分布範囲をもちますが、地域間の遺伝的分化に乏しいことが知られております。この2種が示すように種分化というのはそう単純ではないということが感じられます。
産卵期は3-6月で地域や標高により異なります。弘前では4月末から5月。産卵場所は池や湿原など。
東北や北関東、新潟では場所によってクロサンショウウオと前回紹介したトウホクサンショウウオが同所的に見られます。この2種を比較してみましょう。
①成体の体型:クロは四肢・尾が長くスタイリッシュ、トウホクは四肢が短めでずんぐり。前肢を後方に後肢を前方に伸ばしたとき四肢が重なり合うのがクロ、重ならない(届かない)のがトウホクとなります。またクロの方がより大型。
②産卵場所:クロはより水深が深く、止水的な環境を好みます。対して、トウホクは比較的流れのある小川や湧水池を好みます。小型サンショウウオは産卵場所や幼生の形態・生息環境から(池塘・水溜りなどの)止水性と(山間の小渓流の)流水性の2タイプに大別されます。普通、クロ・トウホクは止水性とされていますが、トウホクは静水性と表現される場合もあります。
③卵嚢:クロは左下写真のように白濁しており、中の卵が観察できません(佐渡の個体群のように透明な卵嚢も存在する)。形状がアケビの実に似ていることからアケビ型と言われます。一方、トウホクは右下写真のように透明でコイル状です。
④幼生:クロの幼生は尾の鰭状部分が幅広く、トウホクは狭めです(写真が無くて悪しからず)。
......などなど
クロサンショウウオは多数の個体が集まって産卵することがあります(他にはエゾサンショウウオで見られる)。かわず合戦ならぬ山椒魚合戦といったところでしょうか。そのような集団産卵を見てみたいものです。
本種とトウホクサンショウウオは弘前で比較的よく見られる止水性サンショウウオです(トウホクの方が多い)。皆さんも彼らを見つけたら比較してみてはいかがでしょうか?
文責:丹羽