爬虫類、両生類講座~ツシマサンショウウオ | 弘前大学 フィールドサイエンス研究会(F研)

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弘前大学公認サークル「フィールドサイエンス研究会」(F研)のブログです。 弘前大学を拠点に,海・川・山林で生物の観察や採集をしています。
毎週月曜日18:00~農生棟203で定例会を行っています。

こんばんは。連投のルーキー丹羽です


最近朝晩はえらく寒いですね。南方系の私は冬眠したくなります。でもサンショウウオたちにとっては快適な気温なのです。



さて本日はツシマサンショウウオHynobius tsuensis)の御登場です~


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 オス成体 対馬産


 

 名前の示す通り、対馬にだけ生息しています。ではまず彼らの故郷対馬の紹介から。


 対馬は九州本土から北北西におよそ130㎞、韓国からは約50㎞の日本海に位置する長崎県の離島です。上島と下島を中心に多くの島から成っていますが、重要なのはこの対馬は大陸(朝鮮半島)から切り離されることにより誕生していることです。そのため、この島には大陸との共通種や近縁種が数多く生息しているのです。「大陸には広く生息しているが、日本国内で見られるのはここ対馬だけ」という種類もけっこういます。代表例としてはツシマヤマネコが有名ですね。このヤマネコも旧満洲地域から朝鮮半島に生息してますが日本では対馬だけに住んでいます(ツシマヤマネコはベンガルヤマネコの亜種アムールヤマネコの変種という位置づけなので動物命名規約などからしますと亜種アムールヤマネコになります...簡単にいえば「生物学的に分類すると」という話です)。その他にはアムールカナヘビチョウセンヒラタクワガタなど。またツシマアカガエルツシママムシなどの固有種も多いです。


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長崎県対馬 浅茅湾2009年3月下旬...たしか手前が上島で奥が下島だった気がする



 ではツシマサンショウウオの話を始めましょう。ツシマサンショウウオは全長100~140mm程。対馬の上島・下島両島に生息しています。上島と下島の個体では差異が見受けられるようです。前回紹介したカスミサンショウウオに近縁です。尾に黄色の条線がはいる個体もよく見られます。実はこの種は私が最も好きなサンショウウオの一つです。その理由は...


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飼育個体                               メス撮影後リリース
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飼育個体                        飼育個体
この体色のバリエーションです。この4個体は全て同じツシマサンショウウオです。特に上段と下段は全くの別種にみえますが、ほぼ同じ場所で同時期に確認しました。右上以外はたぶん全てオスです。ちなみにメスは上段のような明るい体色が多く、オスはわりと暗い体色になると聞いたこともありますが一概には言えなく体色での性判別は難しいと思います。右上の個体はがっつり抱卵(下腹部の膨らみ)していました(つまりメス)。サンショウウオ類の雌雄は主に繁殖期の総排出腔と頭部の形状などで見分けます(...がその方法が使えないような種もいます)。




次は繁殖について。本種の繁殖期は3~4月で渓流中の石の下に卵嚢が産み付けられます。川幅は1m以下、水深も深いとこで20cmほど。魚類は生息していません。川底は砂利でした。


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                (卵嚢 2009年3月下旬 長崎県対馬下島)
 綺麗ですね。水中では右写真のように青く輝きさらに美しいです。

 

 中に見える乳白色のものが卵です。1房の卵嚢に30個程度はいってます。(右写真のように)サンショウウオ類は1匹のメスが1対(2房)の卵嚢を産みます。ツシマサンショウウオの卵嚢は(サンショウウオ類の中では)丈夫です。流されないように卵嚢の片端を石にしっかりと付着させています。


 孵化した幼生は渓流でヨコエビ、水生昆虫などを食べて成長し、夏ごろに変態し、陸に上がります。しかし越年して翌年上陸することもあります。


 

 私は現在4個体飼育しています。中学生の頃に対馬まで採集に行き、持ち帰ったものです。対馬は山地が非常に多く、またツシマサンショウウオも個体数は多い(個体数密度が高い)ように感じます。しかし砂防ダムなどの工事、開発によっては生存が危ぶまれる種になりかねません。対馬だけに生息する貴重な生き物なので今後も見守ってあげたいですね。



文責:丹羽