NHK朝ドラ「ブギウギ」の中に、次なようなセリフがあった。
「誰かが勝手に始めて、勝手に負けた戦争だろ?」
「アタイらは巻き込まれただけ」

第94回 2024年2月14日(水)放送 番組が始まって3分後。
20日か21日まで無料で「NHKプラス」で見ることができる。



この言葉は、「戦争の本質」を言い表している。


世界には、2種類の人間がいる。

「戦争を始めることができるごく少数の人間」

「戦争に巻き込まれて、命や青春を、そして平和な生活を奪い取られるとても多くの人間たち」

とに。


言い換えるなら、

「国家中枢にいて、戦争開始という国策を決定できる人間たち」

「戦争のための資金(税金)を巻き上げられ、戦争に巻き込まれて、命を奪われ、労働力を奪われ、不幸な生活を強いられ、ボロボロになる大勢の一般大衆」

とに。


今も、日々戦争が行われている。

ウクライナで。

ガザ地区で。


そして、過去には、

中国で、東南アジアで、日本で。


ウクライナで、ガザ地区で、

誰が始めたのか?


誰もが答えることができるだろう。

プーチンが。

イスラエル首相ネタニヤフが。


ところが、日本人は、日本の戦争のことを知らない。

日本の戦争を、誰が始めたのか答えることができない。


そもそも、日本の戦争が、日米戦争だけだと思わされている。


日本の戦争は、明治維新からの77年間もの戦争と言える。

特に、満州事変から始まる15年戦争が、問題であり、重要である。

15年戦争とは、日中戦争であり、アジア太平洋戦争(大東亜戦争)であり、日米戦争である。

その15年戦争の中でも、盧溝橋事件後の日中戦争の開始こそが、第二次世界大戦を引き起こしたし、日米戦争、大東亜戦争を引き起こしたとも言える。


15年戦争や日中戦争を始めたのは、そして継続したのは、日本陸海軍のトップたちである。

しかし、彼らだけでは戦争を継続できない。

日中全面戦争や太平洋戦争へと拡大することもできない。


戦争するにも資金が要る。


その金はどこからでたのか。

国家予算である。

一般大衆から集めた税金である。


戦争が始まれば、国民からより多くの金が巻き上げることができた。

戦争すると、国民は増税で金を奪われる。

若者は兵士となり命を奪われる。 

国民は平和な生活を奪われる。

最後には、アメリカ軍の焼夷弾空襲による一般市民の大虐殺であった。

しかし、その前に、中国大陸での、日本軍による中国人1000万人以上の大虐殺を忘れてはならない。


話を戻そう。

戦争するには資金が必要である。

その資金は、どこからでたのか。

国家予算である。


では、

誰が戦争予算を作るのか、 

誰が軍事費の支払いを決定するのか。


国会である。

すなわち.国会議員たちが決定したのだ。


軍事予算を無制限に出せる「臨時軍事費特別会計」を設置したのは、近衛文麿内閣であり、国会での国会議員たちによる決議である。1937年秋のことである。


この「臨時軍事費特別会計」こそ、軍事予算の無制限な増大をもたらした。

1937年から、多額の軍事予算が成立して、戦艦(大和、武蔵など)、戦闘機(零戦、隼など)、武器(新兵器であった戦車の増産、新型の大砲などなど)が、真珠湾攻撃までに増強され、増産されたことこそが、太平洋戦争を産んだ、と言える。


1937年7月7日の盧溝橋事件をきっかけとして、7月11日、近衛文麿内閣は、中国への日本軍の侵攻を閣議決定した。そして、昭和天皇が裁可して、中国への日本軍の侵攻が始まった。


それを利用して、1937年秋に戦時体制に突入したのである。


すなわち、先に書いた「臨時軍事費特別会計」の設置、そしてかの悪名高き「大本営の設置」である。

これも1937年秋なのである。


大本営が設置されたのは、太平洋戦争の時ではない。

日中戦争開始の年1937年の秋に設置された。

そして、その大本営は、敗戦まで続くのである。

日中戦争開始の年に設置された大本営こそが、1941年12月の日米戦争開始(真珠湾攻撃)、日本国民の苦渋の生活、敗戦へとつながるのである。



日中戦争開始(1937年7月11日の日本軍の中国大陸への侵攻)こそが、太平洋戦争を産んだのであり、日本国民を地獄に突き落としたのである。


(参考文献)
『臨時軍事費特別会計』鈴木晟(あきら)著、 2013年、講談社
『日本の戦時財政』A•ディンケビッチ著、三上正之訳、1965年、刀江書院
『キーワード日中全面戦争』太平洋戦争研究会著、2010年、新人物往来社
支那事変陸軍作戦1 昭和13年1月まで』防衛庁防衛研修所戦史室 著、1975年、朝雲新聞社