チャッ!
BICの100円ライターでマルボロメンソールに火をつけ、窓を少し開けると、タイヤと風の音でラジオは聴こえなくなった。晩秋の冷たい雨と湿気ぽい空気が車内に流れ込んでくる。街中が禁煙エリアになった今となっては車の中はゆっくり一服できる至福の空間でもある。周りの皆が、禁煙だの嫌煙だのと言って煙草の煙が街から消えれば消えるほど煙草が美味く感じるようになっていく。只の天の邪鬼か、単に空気がきれいだと美味いのか、荘太にも分かっていなかったが、世の禁煙傾向は悪くなかった。
ラジオのボリュームを上げると The Who の My Generation が聴こえてきた。The Who は好きだった。ストーンズよりビートルズよりザフーが好きで、それぞれマイベストのテープを作った事があったが、ザフーを一番よく聴いた。今でも歴代アイポッドには必ず入っているアーティストだ。
荘太はアクセルを踏んで高速を飛ばし、鎌倉にある弟の家まで走らせた。
マンションの玄関で弟がダンボール箱を車に積んでいる。