妊婦が味わう人の情
わずかにお腹が目立ってくる。
とは言っても、
「あの人ちょっと食べ過ぎたんじゃないか?」
って思う程度で、
下剤のCMなどで言う「ぽっこりお腹」というのがよく当てはまる。
服もお腹の締まらないワンピースが多くなるが、
お腹の辺りがはらまきの生地みたいになっている
特殊なジーンズなどもあったりもする。
どれもお腹が苦しくなく、楽に着られるように作られている。
ただ、
ワンピースには「妊婦だと気づいてもらいやすい」利点がある。
妊婦だとわかると、
周りがなんとなく優しい。(・∀・)ニパァ
特におばちゃん達。
買い物に行ったときなど、
店員さんや、警備員さん、
はたまた買い物に来ていた見ず知らずのおばちゃんまで
なにかと気を使ってくれるのだ。
声をかけてくれたり、
買い物荷物を車まで運んでくれたりと
けっこうサポートしてもらえる。

出産を経験したおばちゃんたちは、
妊婦のこういう苦労を良く理解している。
こういうときにこうしてあげると助かるというのを心得ている。
おばちゃんはすごい。
しかし、日本全国全てがそうかは知らないが・・・。(´Д`ι)
先日テレビで、
仕掛け人が道端でわざと転倒して袋の中のリンゴを道にぶちまけて、
周囲の人は拾うのを手伝ってくれるかという調査を
都道府県別で調べた番組をやっていた。
地方になるほど
通行人みんなでリンゴを拾っていたが、
都会に行くほど素通り率が高く、
都会の無関心が露呈していた。
(。・_・。)このお話の舞台は宮崎県です。
まぁそれもひとつのデータに過ぎないが。
福岡へ旅行したときこんなことがあった。
空港で搭乗待ちをしていると、
チェックインの際に「エリーが妊婦である」ことを確認していた空港側は
飛行機への搭乗を我々に優先させてくれたのだ。

飛行機に乗ってから席に座るまでの間は
確かにけっこう大変だ。
大勢であればあるほど、
席を探してウロウロする人
荷物を上の棚に載せたり出したりする人
新聞、雑誌を選んでいる人
後から窓際に座る人が来て通路側の人がまた立ったり座ったりで
人の渋滞が起こる。
こういう普段なら何でもない動作も
妊婦になると苦痛なのだ。
飛行機が飛び立ってからも
エリーの所に10分おきぐらいに来ては
体調を聞いたり、なにかとお世話をしてくれる。

これには痛く感心した。
(リスキーにはアメを一コくれただけだったが・・・)
('A`;)ガマンスルトコ?
とどめに、
飛行機のぬいぐるみまで特別にいただいた。
手のひらサイズではあるが、
中に鈴が入っていて
振ると軽やかに音が鳴る仕掛けだ。
それにしても、
産まれてくる子供に最初におもちゃを与えたのは、
父親でもなく、
母親でもなく、
祖父母でもなく、
キャビンアテンダントのお姉さんになるとは・・・

妊婦さんは無理のできない大事な時期。
ありがたいことに
周囲は申し訳ないくらいに気を使ってくれる。
でも
遠慮するほどの余裕はないので、
素直に甘えさせていただく。
このお礼は、
自分が後々に妊婦さんに出会ったときに今度は助けてあげることだと
エリーは思っているようだ。
つわりの終わりは突然に
ある一言を境に事態が急変した。
ピザが食べたい
クラッカーと水のみを食料源としていた彼女にとって、
それは明らかに変革。
ピザなんて
あれだけチーズがのっているのだ。
匂いの界王様ではないか(>_<)
「耳を疑う」とはこういうことを言うのだな。
それは、
つわりが終了したということだった。

突然、味の濃いものを欲しがるようになった。
チーズバーガーやピザなどのこってりしたもの、
からあげなどの塩コショウの効いたもの、
ジャンクフードに炭酸飲料・・・
いままでの反動のように食べ始めた。
学生の頃以来、ほとんど食べてなかった、
ピザやハンバーガーを
しばらく毎日のように食べていた。
この調子だと
映画「スーパーサイズ・ミー」の日本版が作れそうだ。
そのすごさたるや、
つわりの時期に減った体重(4.5kg)が、
わずか5日間で元に戻ったことでお分かりいただけるだろう。
つわりが終わってしばらくして、
エリーは実家からもどってきた。
約、2ヶ月ぶりの帰還。
体調も良好。
その後、
食事に出かけた。
二人で外食など、
つわりで苦しんでいるときは不可能だったので、
かなり久しぶりな感じだ。
つわりご苦労様の意も込めて、
ちょびっとだけオシャレなレストランへ行った。

エリーは相変わらず食べる気マンマン。
つわりが終わったことが
よほど嬉しいとみえる。
それが油断だった。

料理をすべて食べ終えるころ、
そのスイッチが押された。
顔色が一気に変わり、
呻吟(しんぎん)する様が見てとれた。
トイレに駆け込むエリー。
10分ほどトイレにこもった後、
彼女はようやくでてきた。
すっかり疲弊(ひへい)してしまっている。

つわりは完全には終わっていなかったようだ。
確かに全盛期とは異なり、
「食べたい」という意志があるのだ。
匂いも問題なく、好き嫌いもない。
しかし、
その意志に体はまだついていけてなかったと思われる。
その後も何回か吐いた。
食べられるのに吐く。
そのスイッチはいったいどこなのか分からぬまま
つわりは完全に終焉を迎え、
このなぞは迷宮入りとなった。
ケイゾク。
匂いとの戦い
妊婦の約70%に訪れると言われるつわり。
(漢字では「悪阻」と書きます)
赤ちゃんを「異物」と判断する母体が、
劇的に変化する体に対応しようとするあまり
ホルモンバランスが崩れ
一種の更年期障害にも似た症状に見舞われるもの。
主な症状が、
みなさんも御存知
ドラマなんかで妊娠発覚の代名詞ともなっている
吐き気と嘔吐
これも個人差があるが、
エリーは
つわりがひどかったため、
仕事を一時休み、
実家に戻って静養することになった。
煙は勿論、食べ物全般、湯気、香水、石鹸、ボディソープ・・・
匂いのあるものは全てダメ。
しかも時は8月。
匂いは
温度が高いほど飛散性が上昇するため、
最も匂いが広がりやすい時期なのだ。
そんなエリーのもっぱらの主食は
冷水とクラッカーだった。

食欲はまったくないが、
食べなくてはいけない。
嘔吐が続き、胃の中が空っぽになると、
次に吐くものは胃液になる。
これがかなりつらい。
だから、
胃液を吐かなくていいように、
食べ物を詰め込んでおかなくてはいけないという
なんとも理解しがたい状態だ。
汗もかくので
お風呂だって入らねばならない。
湯気と石鹸の匂いのダブルインパクトで、
苦しみながらの入浴の日々。
気づけば、
体重は4.5kgも減少していた。
更につわりはエスカレート。
TVで食べ物の映像が出たり、
食べ物の事を考えただけで
吐き気に見舞われる始末。
精神的にも不安定になり
泣いてばかり。

世間では祭り、海水浴と
夏のイベントが目白押し。
むなしく聞こえる遠くの花火の音が重ねてむなしい。
自分はなんでこんな目にあうのだろう。
つらい、苦しい、もうやめたい。
エリーの精神が臨界点を突破しようとしたその時、

「遊びに行ってないのはあなただけではないの!
お母さんもお父さんもリスキーもみんな
生まれてくる子供のため
そしてあなたのためにどこにも行かず
一生懸命やっているのよ!」
そこになぐさめの言葉はなく、
母となる我が子への
母親からの愛のムチ・・・。

つわりのつらさが分かっている人だからこそ伝えられる
重みのある言葉だ。
さすが母親ですね、エリーママ。
ビシッとキメていただきました。

それから
エリーは変わる。
重い病気で苦しんでいる人たちは
いつ治るかも分からぬ状態で、
治ることを願いながら療養生活を続けているが、
自分は違う。
時期が来れば必ずこの苦しみから解放され、
そして、
新しい命を授かることができるのだ。
自分はなんて幸せなのだろう
前向きなエリーがそこにいた。
つわりは平均的に1~1ヶ月半で終了する。
それをぬければパッタリとつわりは止む。

しかし、
それまではやっぱり匂いはきつい・・・
良い産婦人科は足で探すべし
と言い出したエリー。
ホントならめでたいことだ。
あやふやなまんま考えてても仕方がないし
こういうことは早いところハッキリさせておいたほうがいいので
もちろんリスキーは産婦人科行きを勧めた。
数日後、
産婦人科から帰ってきたエリー。
妊娠2ヶ月と判明した。
('目')おおおお!
と、驚いてはみたものの、
正直、実感というものはほとんど無い。
妊娠しているという目に見える確固たるソレがないので、
なんかぼんやりした感じ。
「超音波写真」とやらを見せられたものの、
白黒写真で、真ん中に黒いマルがあるだけのもの。
リスキー「この黒豆みたいなのが赤ちゃんなの?」
エリー「いや、これは赤ちゃんが育つための袋みたいなものらしいよ。」
リスキー「赤ちゃんは?」
エリー「まだちっちゃすぎて見えないんだって。」
・・・( ̄目 ̄ι)・・・
実感できない。
その後、エリーは調べ事を始めていた。
どうやら今回行った産婦人科があまり良くなかったらしい。
「建物も古くてね、部屋もパイプベッドにパイプイスで
いかにも病院の病室って感じなのよ。なんか、気がめいるわ。」
確かに、妊娠や出産というのは病気ではないし、
これから1年以上お世話になるわけで、
大変な時期に入院するわけだから、
できるだけ快適な環境のほうが良いのだろう。

それからしばらく情報収集が続いた。
医師、看護師、受付、建物、設備、金額にいたるまで余念が無い。
しかし、
情報だけではぬぐいきれない落とし穴があった。
周囲の評判もよかったため、行ってみた某産婦人科では
つわりで苦しみながら行ったにもかかわらず、
3時間半待たされ、
看護師にも相手にされず、
隣の子供にちょっかいを出され続けた(これは病院のせいではない)。

またしても失敗。
色んなうわさを聞くことは大切だが、
鵜呑みにしてはいけない。
どんなに評判が良くても
要は
本人がそこの医者や看護師とあうかどうかということです。

本当にいい産婦人科を探すには、
結局は
自分で実際に行って、見て、感じるのが
一番の方法ということだ。
足で探すこと1ヶ月、
エリーはようやく納得のいくソレを見つけることができた。
「Tレディースクリニック」

待合室はホテルのロビーのようで、
イスもフカフカソファー。
天井にはシャンデリア、庭には噴水、
食事はレストランの料理みたい、
部屋は全て個室で、ホントにホテルに泊まってるかのような感じをうける。
ここに限らず、
最近の個人経営の産婦人科は
病院と言うイメージをまるで感じさせない。
繰り返すようだが
出産前で一番大変なときに入院するわけだから、
つらい気持ちを少しでも緩和させるようにできているのだろう。
先生もとても優しい方で、
看護師さんもとてもテキパキしていて、
愛想がよかったらしい。
看護師さんの表情でも病院の雰囲気を感じ取れるものだ。

色々探し回ったが、
結果として満足度100%の病院に出会え、
エリーは舞い上がっていた。
その表情は達成感に満ちあふれていた。
が
この時点で、すでに
エリーに第2の難関迫っていようとは・・・