※ 掲載は一人5首にさせていただきます
生を知る(自生林賞)山崎博子
七草の全てを言える五歳児に吾も真似れば詰まる草々
新年の更なる重さの生を知る走りし過去も全て身のうち
末期です言葉の強さ身に受けて膝の痛みよ増して愛しき
病院の屋上近き大窓は太平洋の波も吸い込む
マスク無し早朝目指し野に遊び清涼の空気ただありがたく
コーヒーの湯気を揺らしてプレスリー「愛の哀しみ」耳に居座り
慈雨を待つ(第2回山名康郎賞)菅原琢子
詰草の低く靡きて香る丘 風に帆を張るわれを満たせよ
炎熱に病葉こぼす白樺と共に在りつつ慈雨を待ちをり
雲か霧か水平線の茫茫とわが身の揺らぐ感覚に耐ふ
向き合はねばならぬ己の病にて静脈無数の画像を見つむ
かまくらにばつちやんの甘酒待ちながら雪の匂ひを知りしわらしこ
画像診断終へ来しわれに今生の桜ひとひらほのかに温し
※ 今回をもちまして令和5年度の短歌年鑑に掲載されている歌の紹介を終わります。
本年3月末に発行されました令和6年度分については、あらためて紹介の予定でおりますので今しばらくお待ち下さい。