脳から母に還る
人間の体の器官の中で、とりわけ重要な役割を果たしているのは脳である。最近では脳の仕組みについての研究もかなり進んできた。
脳は、とにかく酸素を大量に必要とするが、同時に「脳は酸素の次にブドウ糖を必要とする」という。「脳の方程式ぷらす・あるふぁ」や「脳の方程式いち・たす・いち」(いずれも中田力著・紀伊国屋書店刊)によれば、脳の形式や脳のメカニズム、脳内の日常をひとつひとつ追っていくことでわかる圧倒的な事実だ。脳を知る上で貴重な情報の一部である。
先頃、岡山大学・松井秀樹教授(細胞生理学)らのグループが、「赤ちゃんが乳頭をくわえると母親の脳から分泌されるオキシトシンというホルモンが、母親の記憶・学習能力を高める効果がある」ことを突きとめた。「授乳時に赤ちゃんの記憶が母親の脳にすりこまれ、母性を強くしていくのではないか」(松井教授)という。
赤ちゃんは出来るだけ母乳で育てて、添い寝をしたり背負ったり、言葉をかけてあやしたりすることから親子の「信頼」関係が生まれる。安らかな、つまり安心安全の気持ちの交流の中から人格形成の素になるということもわかってくる。実に意味深いものを感じる。記憶のメカニズムをつかさどる「記憶の遺伝子」だけでは解明されない部分でもあろうか。しかし母親のお腹の中は大切な第一歩。
「3つ子の魂100までも・・・!」の意味は、母親の母体の中に育まれている時も重要だということ。その子の「人生の大きな礎」ともなる。
例えばやさしく撫でられ、声をかけられ、時に歌声も聞き、母親と添い寝の安らかさや栄養や血流、精神的にも栄養学的にも大変な「時間」だ。
私たちも、今一度、自分、家族、未来を創りゆく若者たちのことをゆっくりと見回してみようではないか。