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銀行にマネー滞留、預金超過145兆円 7月末は最高水準
 国内景気の減速を背景に、企業活動や株式市場に資金が向かわない傾向が鮮明になってきた。日銀統計によると、7月末の民間銀行の預金残高は貸出金を150兆円弱上回り、過去最高水準となった。リスクを敬遠するお金が銀行に集まり、「貯蓄から投資へ」の流れが停滞。一方、預金に対する貸出金の比率を示す「預貸率」は約7割に低迷している。株式市場や企業の設備投資にお金が回らなければ、日本の経済成長の足を引っ張りかねない。
 全国の銀行の預金は7月末で549兆円。これに対し貸出金は404兆円にとどまり、預金の超過額は最高だった6月末に比べやや減少したが、145兆円に達する。2000年に20兆円程度だった預金超過額は02年からの金融危機後に増え続け、預貸率は100%前後から70%台に低下した。



「資源高に耐久力」外需取り込み柱に 経産省が新成長戦略
 日本経済の中長期的な成長力を高めるための「青写真」として、経済産業省が打ち出す新経済成長戦略の原案が明らかになった。原油など資源高への耐久力を高め、新興国などの外需を取り込む輸出や投資の促進が柱。省エネ対応を促す設備投資減税などの具体策を盛り込んだ。2015年度までに物価変動の影響を除いた実質ベースで国民総所得(GNI)の年平均2.4%の伸び確保をめざす。
 二階俊博経済産業相が9日にも発表する。政府は06年に人口減や高齢化の下でも実質2%超の経済成長を可能にするための政策指針として最初の成長戦略を策定。原油高や世界経済の構造変化、地球温暖化問題などを踏まえ、大幅に見直すことにした。



鉄鉱石追加値上げ要請 ブラジル・ウ゛ァーレが12% 鋼材価格上昇も
 ブラジル資源大手のヴァーレ(旧リオドセ)が新日本製鉄など鉄鋼大手に対し、2008年度の鉄鉱石価格の追加値上げを要請してきた。今春に07年度比で65%値上げしたが、世界的な需給逼迫(ひっぱく)を受け、今秋からさらに約12%引き上げたい意向。年度途中の値上げが実現すれば異例で、鉄鋼業界全体で250億円前後の追加負担が生じる。鉄鋼各社は電機や造船会社と鋼材の値上げ交渉を進めており、止まらぬ資源高が鋼材再値上げに波及する可能性が高い。
 鉄鉱石で世界最大手のヴァーレは今年2月、ブラジル産鉄鉱石の値上げで鉄鋼大手と合意。4月から前年度より65%高い1トン79ドル弱に引き上げた。今回、さらに約12%高い1トン89ドル弱に値上げする意向を示しており、早ければ10月分から実施したい考え。鉄鋼大手は反発しているが、ヴァーレは追加値上げが通らなければ供給停止も辞さない姿勢のため、ある程度はのまざるを得ないとみられる。



外食・小売各社、外国人バイト教育に力 母国語も活用
 外食・小売各社が外国人アルバイトの教育・研修強化に取り組んでいる。吉野家ホールディングス傘下の吉野家は中国人アルバイトを他のアルバイトの指導役に起用。コンビニのローソンは中国人アルバイトの研修を都市部で定期化した。流通各社は依然人手不足に直面しており、外国人アルバイトは貴重な戦力。研修強化で、接客などのサービス向上を目指す。
 東京都や千葉県などの1都3県で約800人の外国人を雇用する吉野家は優秀な中国人アルバイト2人を、新規中国人アルバイトの採用面接などに活用し始めた。2人は中国人アルバイトの店舗研修にも立ち会う。中国語も交えて指導することで作業の習熟度を高める。



8月の倒産4.2%増 5年ぶり高水準 東京商工リサーチ
 民間調査会社の東京商工リサーチが8日発表した8月の全国企業倒産状況によると、件数は1254件で前年同月比4.2%増えた。増加は3カ月連続で8月としては5年ぶりの高水準。市況の悪化や原材料価格の高騰で不動産や建設業で倒産が相次いだほか、運輸業で息切れする企業が目立った。負債総額は前年同月に大型倒産があった反動で微減となった。
 集計は負債額1000万円以上の企業倒産が対象。業種別にみると全10業種のうち5業種で倒産件数が増えた。とくに運輸業は64.1%増の64件で5年2カ月ぶりに60件を上回った。燃料価格の上昇分を輸送価格に転嫁できていない企業が多く、「基礎体力による我慢が限界にきている」(商工リサーチ)という。
 地価の下落や金融機関の融資姿勢の厳格化などで不動産(23.5%増)や建設(13.8%増)の倒産件数の増加にも歯止めがかかっていない。上場企業もアーバンコーポレイションと創建ホームズの2件が倒産。上場企業の倒産は8月までに12件で、すでに昨年(6件)を上回っている。



8月の街角景気、指数5カ月連続低下 原油高が企業や家計圧迫
 内閣府が8日発表した8月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景況感を示す現状判断指数は28.3と前月に比べて1.0ポイント下がった。低下は5カ月連続で、水準は2000年1月に調査を始めてから2番目の低さだった。原油高が企業や家計を圧迫し、北京五輪の期間に百貨店などへの来客が減少。個人消費の本格的な回復には厳しい環境が続いている。
 内閣府は調査に基づく判断を2カ月連続で「景気の現状は厳しい」とした。指数は直近の景気後退局面だった01年10月(27.2)に次ぐ低さで、横ばいを示す50を17カ月連続で下回っている。
 調査は景気に敏感な小売店の店主やタクシー運転手、人材派遣会社の社員ら約2000人を対象に実施。3カ月前と比べた景気の現状や2―3カ月先の景気について「良い」から「悪い」までの5段階で答えてもらい、指数にする。



事務用品からビル管理まで、ネット市場で一括売買 ソフトバンク
 ソフトバンクはインターネット上で、オフィス用品や企業向けサービスなどを売買できる「ネット調達市場」を立ち上げる。約7000社の業者が参加し、印刷、ビル管理、引っ越しといった企業の管理業務に関連するサービスも幅広く扱う。利用企業は最も有利な条件を選んで契約できる。同社は個人向けに比べ、企業向けサービスは安定した収益につながると見ており、新サービスで企業顧客の開拓を急ぐ。
 ソフトバンク子会社のソフトバンクBB(東京・港)が「パーチェスワン」のサービス名で月内に営業を開始する。利用企業は百数十万円の専用ソフトウエアを購入すれば利用できる。



ベトナムの貿易赤字拡大 08年は60%増の200億ドルに
 【ハノイ=岩本陽一】輸出主導の経済成長を続けてきたベトナムで貿易赤字が拡大している。2008年1―8月の累積額は159億ドルとなり、通年では前年比60%増の200億ドルに達する見通し。外資系の製造業を中心に企業活動が活発になり、資機材などの輸入が大幅に増えたことが主因。貿易赤字の増加は高率のインフレと並ぶ同国経済の不安要因となっている。
 商工省のまとめによると、1―8月の輸出額は前年同期比39.1%増の433億ドル、輸入額は同54.1%増の592億ドル。輸入の伸びが輸出を大きく上回った。インフラ建設や製造業向けの機械、鉄鋼の輸入が拡大したほか、原油価格が高止まりしている影響で石油も増えた。
 政府は優先度の低いインフラ整備を先送りするなどして資機材の輸入増加を抑え、貿易赤字の拡大を防ぐ考え。ただ世界的な景気減速で輸出が大幅に伸びる可能性は小さく、ベトナム国営通信によると09年も今年と同程度の赤字が見込まれている。



自民総裁選、与謝野・小池氏が出馬表明 山本氏は断念
 自民党総裁選は8日、与謝野馨経済財政担当相と小池百合子元防衛相が立候補を正式表明した。石原伸晃元政調会長も9日に記者会見を開き、表明する。一方、棚橋泰文元科学技術担当相と山本一太参院議員の一本化は失敗し、山本氏は出馬を断念した。10日の告示を控え、既に出馬表明した麻生太郎幹事長、石破茂前防衛相を含む5氏で争う可能性が強まった。
 与謝野氏は8日、党本部で記者会見し「我々こそが国を背負って立つんだという気概を十分に持って総裁選に臨みたい」と表明。「改革を行うにしても心優しい温かい改革を目指さなければならない。格差や社会福祉、地方経済疲弊の問題に目をつむることがあってはいけない」と訴えた。
 同時に「消費税だけでなく税制全般、財政全般に国民の理解を得られるようにきちんと物事を説明したい。楽観論を述べて誤解を与えるようなことは決してしてはいけない」と指摘。消費税率引き上げを総裁選の争点にする構えを示した。



自民「開かれた総裁選」演出に躍起 10月解散視野、無党派に照準
 自民党が「開かれた総裁選」の演出に躍起になっている。全国47の都道府県連がすべて予備選を実施するほか、党総裁選挙管理委員会は決選投票にも地方票を反映することにした。与党内で衆院の10月解散の機運が高まるなか、「劇場型総裁選」を通じて国民の関心をひきつけ、カギを握る無党派層を掘り起こす狙いだ。
 自民党総裁選は党所属国会議員の387票と、47都道府県連の代表者各3人(141票)の合計528票を争う仕組み。有効票の過半数を確保する候補が出なかった場合は、上位2人の候補者で決選投票を実施する。



日経社説 米国の金融不安解消はまだ道半ば(9/9)
 米国が経営難に陥っていた米住宅公社2社の救済に動いた。政府の管理下に置くとともに公的資金を注入することを決めた。これにより、米住宅公社の信用不安に伴う世界的な金融危機は回避される形になった。
 ただ、米国の金融不安の解消はなお道半ばである。住宅価格の下落は止まっておらず、資産内容が悪化したままの民間金融機関が多いからだ。信用収縮と実体経済悪化の悪循環が進む恐れは消えていない。
 米政府が、苦境にあった米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)を政府の管理下に置くことを決めた最大の理由は、世界的な金融危機を回避することにあった。
 米政府は7月、必要なら住宅公社に公的資金を注入するなどの対策を発表したが、市場の動揺は収まらず両社の債券利回りは高止まりしていた。米国債に準じた高い信用度があるとの前提で海外の中央銀行などが大量に両社の債券を保有していたが、購入手控えの動きも出ていた。
 両社が破綻すれば、米国の住宅ローン市場の機能が事実上停止してしまう懸念もあった。住宅市場の冷え込みが続く中で、両社は最近では住宅ローンのおよそ7割を買いとったり、保証したりしていたという。
 今回の対策では、政府が両社に融資したり、両社が発行する債券を政府が買い取ったりする仕組みも用意した。一方、経営者は責任を取って退任させるほか、既存の株主も配当停止などの形で責任を負う。
 両社の経営不安が長引くことによる負の影響の大きさを考えれば、政府の管理下に置く救済策は当然の措置と言える。だが、半官半民のあいまいな経営形態が両社の経営に甘さをもたらしたのは間違いない。金融不安が解消された後は、抜本的な組織の見直しをすべきだろう。
 今回の措置で金融不安がすべて収まるわけではない。多くの金融機関の体力はなお低下したままだ。価値が急落した住宅関連証券の損失処理が道半ばであることや、景気悪化で消費者ローンなどの焦げ付きが増えていることによる。金融機関同士の貸し借りも正常化にはほど遠い。
 金融システムに多大な影響を及ぼす民間金融機関の経営危機が新たに表面化した時にどうするかは、まだ見えてこない。米証券、ベアー・スターンズ救済時のように、米連邦準備理事会(FRB)の資金を活用する策には限界もある。米政府は、住宅公社救済策が市場に好感されたことに安住せず、金融不安の沈静化に向けて万全の措置を模索すべきだ。


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