文盲への宣言

 日本國民の三大義務の一つに教育があります。僅か六年間の初等義務教育がどんなに日本の國を進歩發達させたことでせう。

 字というものが讀めるようになってどれだけ我々は面白く生活が出來る樣になったことでせう。又數字の計算を知ってどれだけ我々は便利になったことでせう。

 こうした恩惠に浴し過ぎてゐる我々は兎角學問の必要を忘れ勝ちです。しかしそれは大きな誤りで、どんな仕事をしてゐても學問によって得た知識は見聞を廣め人間を落ち付かせ、字を讀む事を知った時と同じ樣な樂しみと便利を與へて呉れるものです。更に更に熱心に勉強する事によって古い色々の經験を習得し之を基礎として更にそれ以上の仕事を打ち立てる事が出來るでせう。立派な學校を出ればそれで偉くなれた時代は過ぎ去り、努力と実力が認められて來てゐます。

 あの世界的偉人新渡戸稻造先生は早くからこうした状勢を知って、晝、學問をする暇のない人の味方となって此の遠友夜學校を設立されました。それ以來四十有余年一千名餘りの有為の人々を世の中に送りました。それ等の人々は心から叫んでゐます。

 「熱心に勉強しませう。努力は最後の榮冠です」と

          本校の特色

一、世界で一つの學校。これ程どんな人でも入れる學校はありません。

一、社会事業團体として諸君の勉強に最大の誠意と關心とを持ってゐます。

一、勉強は夜六時半から九時十五分迄。

一、働きながら勉強できます。

一、幾ら年をとっていても差支へありません。

一、六年を終へてゐない人でも十三歳以上では小學校へ行けませんし、小學校を卒業しても分からなかった處をもっと勉強したい人は初等部に來て下さい。

一、男でも女でも構ひません。

一、いつでも入れます。(初等部だけ)

一、月謝は要りません。

一、學用品はあげます

一、先生は諸君の友達です。

一、中等部の方は中等學校の勉強をします。中學校へいけない人のために設けてあります。   札幌市南四條東四丁目財團法人 遠友夜學校 電話四八〇八

《以上の文の漢字にはすべてルビがうってありますが省略いたしました》