はがき二枚に一杯書いて送って頂きました。全部読み取ることができませんでした。
昭和五年 遠友夜学校中等部合格
昭和九年 中等部四年卒業
昭和十三年 ノモンハン、支那事変参加
昭和十五年 北京四水戸飛行学校入試合格
昭和十六年 同校卒業
昭和二十年 南西諸島航空学校参加
新渡戸稲造博士の門下生として一生懸命生涯の勉強に努力、お慶び申し上げます。夜学校時代は満州事変、数多くの兵隊は満州へ。札幌駅より見送り、また帰ってくる方をお迎えする時代。世は不況の時代、四年間の夜学校生活は長いようでしたが、あの頃の勉強の思い出は数多い。
① 『遠友夜学校』に当方の記事が出ています。
② 札幌農学校新評論蝦夷名賢造 紀伊国屋書店 八千二百四十円
③ 写真集北大百年 1876～1976 （北海道大学図書館）
以上の中に有島武郎、半澤洵の記事が出ています。
旧陸軍総長上級職一つ星 営外職業軍人 農業 七十六歳 北海道文学会会員。靖国神社奉賛会会員 勲七等旭日章賜る。
「学問より実行」懐かしい。遠友夜学校は今はなく巣立った方も少ない。同窓はたくさんいると思う。今どこにいるか分らない。多くの方は他界されていると思う。卒業生の中にも北大教授、商大（小樽）の方々がいます。学問とは面白い。頭の良い方は北大在学中学費も要らない。故人木原均生物学博士（北大）はノーベル賞候補でありました、東大・京大教授。
『思い出』発行されました。新築の家出来ました。国鉄貨物車五台あります。市外北区域です。以上お知らせまで。良い年をお迎えください。
《田中正二氏は、『遠友夜学校』の第三章 回顧に「六キロの砂利道」という題で寄稿した文があります。》
私が遠友夜学校に入学したのは、昭和五年のことでした。当時、遠友夜学校は四年生の中等部と六年生の初等部に分かれていました。中等部に通っていた私は、家が白石村米里で農業を営んでいましたので、その手伝いを終えてから、六キロの砂利道を自転車に乗り，提灯を下げて登校したものです。道は悪い上暗い夜道だったのでよく転んだこともあります。また冬は馬橇の通った後を滑らないように走ったものでした。「学問より実行」を掲げた遠友夜学校には男子の生徒会として「リンコルン会」がありました。その中でも弁論部の活躍は目覚しいものがありました。「働きながら学ぶ」という主張が、全道樺太中等学校弁論大会でも認められ連続優勝の栄誉に輝き、優勝カップや賞状がところせましと飾られたものです。遠友夜学校で出会った多くの人々は忘れることが出来ません。ことに、代表校長だった半澤洵先生のことは忘れることが出来ません。
半澤先生はお忙しいにも拘らず、片時も忘れず来校され、私どもに訓話されました。
訓話は、言葉が明瞭なうえ気高さが感じられ、感動させずにはおられませんでした。
中等部四年に進級した春、私は図書部長を任じられました。読書室には、先生方が夜学校を去られるときに寄贈されていった本が数多くあり、二千余冊の蔵書がありました。
また、この年新しく大型読書机もおかれましたが、この読書室は少し殺風景で淋しい感じがしていました。しかし、ある日半澤先生が読書室にこられ、筆をとって、半紙に「静粛」と書かれ、二枚に捺印し、そのうち一枚を「あなたに」と私に手渡された。半澤先生の臨書を手にした私は嬉しくてたまりませんでした。と同時に、読書室はこの「静粛」の扁額が飾られただけで見違えるように明るくなったのです。また、中等部四年の三学期は、期末試験も頑張らねばなりませんが、立て看板やポスター等を作り、それを市街の要所に立て、新入生徒の募集を行いました。生徒が生徒の募集を行う、これこそが働きながら学ぶ遠友夜学校の精神でした。
昭和九年、この遠友夜学校を卒業する時がやってきました。卒業証書を、そしてその年はただ一人の精勤賞を、直接半澤先生から頂いたときには、六キロの砂利道を雨の日も風の日も通ったことがいっぺんに報われた思いと同時に、遠友夜学校に学んだという誇りで胸が一杯になりました。最後に、私が在学中、新渡戸稲造博士が来校されるという幸運によくしたことを思い出します。昭和六年五月、夕陽が沈む頃、私どもは紅白の幕を張って新渡戸稲造博士を出迎えました。やがて車が正門前に停まり、半澤先生が先導されて降りてこられました。新渡戸稲造博士の訓話を感無量の思いで拝聴し、そして記念撮影を終え先生は去られましたが、それが新渡戸稲造博士最後の来校とは思いもよりませんでした。博士の揮毫された二枚の扁額「学問より実行」“Ｗith malice toward none，With charity for all”はいまもなお、遠友夜学校跡に建てられた中央勤労青少年ホームの新渡戸稲造記念室に保存されています。《昭和五年から九年まで在学》
《コーヒーブレイク二夜学校斷片参照》