年越しの狐火 ― 葛城きつね(2) ~ 【葛城のむかしばなし】より | 奈良ふしぎ歴史徹底攻略! 学校・教科書では教えてくれない奈良を親子でも100倍楽しめる観光ガイドブックブログ

年越しの狐火 ― 葛城きつね(2) ~ 【葛城のむかしばなし】より

二上山(にじょうざん)は、奈良県葛城市と大阪府南河内郡太子町に跨がる二つの山です。
二つの山(雄岳、雌岳)が連なって、フタコブラクダの背中の様な姿をしています。
ふるくは”ふたかみやま”とよばれていたことが有名ですね。
”ふたかみやま”は、”二神山”も意味していたそうです。
二上山のふもとの村々は「岳の郷」といわれていました。
地元の人は二上山を「ダケサン」と呼んでいました。
日照りのときには山の上の神社へ雨乞いに参ったそうです。

さて今回は二上山と狐たちの不思議なお話です。


大みそかの晩のことです。
一人の男が二上山の真っ暗な山道をのぼっていました。
男は暮らし向きがよくなく、貧乏で独り身であることをいつも嘆いていました。
ゲンを担ぎにお正月の御来光を拝みにきたのでした。

ずいぶんと登ったときです。
向こうの木のかげに、ちらちらと赤い火が見えます。
近づくにつれにぎやかなお囃子が聞こえてきます。
「だれやろ、今時分にこんなところで踊っているのは?」
不思議に思い、男は木のかげからそっとのぞいてみました。
するとどうでしょう。
大きな焚火を囲み、大勢の狐が踊っているではありませんか。
男はびっくりして一目散に逃げ出しました。

なんとか遠くまで逃げると男はひといきつきました。
すると下の方から、ひとりの娘がのぼってきました。
娘は男をみるなり、
「どないしはりましたんや。顔が真っ青ですなあ」
と心配そうにたずねました。
男はさっき見たことを娘に話しました。
すると娘はニッコリわらっていいました。
「ああ、それやったら狐が伊勢音頭を踊ってましたんやろ。
それを見たお人には次の年にええことがあるて、聞いたことがありますわ」

そうこうして二人は二上山の雄岳と雌岳の間の馬の背まで連れだっておとずれました。
ふと麓の真っ暗な中に大きな火の玉がポカンと見えたかと思うと、パラパラと小さい火の玉みくだけました。
それがあちこちへ飛び去っていきました。
「こないに狐の火がぎょうさん見えたら、来年はきっと豊作ですなあ」
男は、にこにこ笑う娘の笑顔に、きもちのええ娘さんやなぁと思いました。

やがて東の空が白みかけて、向こうの山から日が昇り始めました。
御来光を拝んで、さて帰ろうとかと振り向くと、あの娘の姿がありませんでした。
狐につままれたようやと、男は首をひねりました。

その年は娘が言ったとおり豊作となりました。
その上、男には庄屋さんの仲立ちで隣村からお嫁さんを迎えることになりました。
なんとそのお嫁さんは、あのとき山道でいっしょになった娘でした。
二人は子宝にめぐまれ、末永く幸せにくらしたそうです。






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