波間の別離。ヤマトタケルの哀 | 奈良ふしぎ歴史徹底攻略! 学校・教科書では教えてくれない奈良を親子でも100倍楽しめる観光ガイドブックブログ

波間の別離。ヤマトタケルの哀

更に東へ進むヤマトタケル一行に、また苦難が訪れます。
それはヤマトタケルにとって最大の悲劇です。

浦賀水道を渡航中に、海が荒れ、波に船が激しく翻弄されます。
「海の神のたたりだ!」
誰かが叫びます。
そう思えるかのように、船はいっこうに前に進むことができず、波はおさまる気配がありません。

数多のまつろわぬ神を討ちとったヤマトタケルも、大海原相手では、手が出しようがありません。

そのとき…

「わたしが海の神の怒りを鎮めてみせましょう」

オトタチバナヒメが言いました。

エッと言う間もなく、オトタチバナヒメは船縁から身を乗り出します。
引き留める手を、スルリと抜けて、オトタチバナヒメの笑顔が波間に飲み込まれていきます。

やがて…

うそのように、

波はおさまります。


無事に上陸を果たしたヤマトタケル。
茫然と波打ち際にたたずんでいると、

寄せる波にのって、コツンと足先に、あたります。


櫛です。


ハッとヤマトタケルの目が見開かれます。

かき抱くように櫛を握りしめ、その場に崩れ、嗚咽をもらします。

まごうことない。

愛する人の櫛でした。



つづく。