昨日(2013年4月12日)はランチのついでに佐賀のちょっと公共交通機関では行きにくいお菓子屋さんにつれていって頂く。シュガーロード(長崎街道)のお菓子を調べていることが、周りに認知されて、皆様、いろいろと協力をしてくださる。本当にありがたい。
すでに一部UPしている内容はこちら
シュガーロードのお菓子たち~中原(佐賀県) 綾部のぼた餅~
さて、今回の佐賀県のお菓子の調査のメインテーマは多久市北多久町の岸川地区に伝わる【岸川饅頭】を作っている、森上商店に行く事。
お菓子・・とくに和菓子を調べていると必ずでてくる饅頭。日常的にも、最も親しみのある菓子で、種類も多い。歴史をみると、実は福岡にも関係がある。その昔、宋から帰国した僧、聖一国師が伝えたというのである。饅頭の歴史はいずれまた詳しく書くことにして、今回は岸川饅頭についての話のみ書く
(今回の多久市はシュガーロード沿いの町ではない。こちらは、唐津街道の近く。唐津街道は唐津から福岡市内を通って北九州へ向かうルート。唐津の向こう(西側)には平戸があるので、南蛮菓子や砂糖の影響ももちろんある。ゆくゆくは唐津街道も調査するのだけど、ここではとりあえず、シュガーロード=長崎街道としているので、お菓子ストーリーにいれておく。)
岸川饅頭を作っているお店、森上商店。山間の小さな集落に有るおまんじゅう屋さんといった風情。森上公子さんの娘さんに来店客が切れた合間にお話伺うことができた。
岸川饅頭はみてびっくりしたのだけど、とても大きい。直径が10cmほどもある。そして、最大の特徴は、餡がはいっていないことだ。餡のない饅頭は、歴史から考えると、中国から伝来した当時の形・・つまり原形に近いものではなかろうか・・・といわれている。
素朴な外見。おおらかな印象の饅頭
中身はこんなかんじ。餡はなし。カットする為にナイフをいれたのだけど、跳ね返す力がかなりある。モチモチでこしが強い生地だ。そのせいか、高さは2.5cm~3cmほど。平べったい形をしている。餡がないと物足りない・・と思うかもしれないが、これが、麹を使っているせいなのか、かんでいると、ほんのりとした甘味がでてくる。朝食のパン代わりに食べる人もいる・・ときいたことがあったけれど、確かにそれは有りかも。蒸しなおすと、ふっくらとなる。ほのかにお酒のような発酵臭がするのが素朴でよい。
この饅頭を膨らませているものは、麹とごはんを代々伝わる酒のもとで発酵させたもの。素朴な香りはそこからくるようだ。
お店がある集落では、5月に御田祭あるのだが、その時に供する為につくっていたものらしい。娘さん曰く、「発酵しやすい季節になって作る・・」なるほど、確かに冬場の発酵は時間がかかる。イースト菌だって大変なんだから、酒だねだったら尚の事だろう。(私は趣味でパン作りをしているので少しだけ事情がわかるつもり・・・)
集落の各家庭で作られてきた岸川饅頭は、それぞれの味も違うし、製法も全然違っているらしい。森上商店の岸川饅頭は昔ながらの製法を忠実に守っている。
かつては良質の小麦がとれたことも、この地域で饅頭が作られることになった要因のようだ。
お店では、餡なしのほかに、あずきや高菜、よもぎ入りなども作っている。
(写真はサンプル(食玩)をとったもの。)これだけの種類が有る。人気は白い皮にあずき餡入り
だそう。よもぎはちゃんとよもぎの味がしたし、高菜は、以前、長野県で食べた野沢菜フランスパンを思い出させる味だった。他にはパンプキン レーズン 黒糖 にんじんなどバリエーションが豊富である。(11種類におよぶ)
岸川饅頭は、見た目は素朴だけれど、手間のかかった、真面目に誠実に、昔の味と先人の知恵を今に伝えてくれている饅頭。ずっと残っていって欲しい饅頭である。
余談ですが・・・
岸川饅頭の餡なし饅頭を食べながら、ふと長崎街道の起点、小倉の常盤橋のたもとの茶店、ときわばしで聞いた江戸時代にベトナムからやってきた象の話を思い出していた。
長崎から歩いて江戸まで行った象の好物が、饅頭とお酒だったという話。饅頭は餡が入っていないものだという。こんなのだったのかなあ~・・と思いは宙を飛び江戸時代へ・・・。歴史好きの妄想でした(笑)
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~長崎街道(シュガーロード)について~
長崎街道(シュガーロード)は江戸時代に整備された脇街道の一つで、小倉の常盤橋を起点として長崎にいたるまでの路線です。長崎の出島に入った砂糖はこのルートを通って大阪や江戸に運ばれました。この砂糖が通った道沿いには、さまざまなお菓子が生まれることとなります。そして、時代が下って、炭鉱が華々しい頃にそのお菓子たちは筑豊で大きく花開く事になります。今では全国的に有名になっている【ひよこ】や【チロルチョコ】などは筑豊生まれのお菓子です。
私はこのシュガーロードを歩いて、お菓子が生まれた土壌、文化などを調べたいと常々思っていた・・というわけです。小倉~長崎までの宿場町に繁栄したお菓子、今でも残っている古いお菓子、新しい時代のお菓子、絶滅しかかっているお菓子など調べますよ。そして長崎まで調べたら、南蛮菓子の故郷、ポルトガルへ・・・と野望をいだいております。
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