「啐啄同時」(そったくどうじ)


卵の殻を破って、いざ生まれ出ようとするヒナは、内側から一生懸命に殻をつつき、外に出ようとします。その音を聞いた親鳥は、外側から殻をつつき、ヒナを助けます。その両者のタイミングがぴったり合う事の大切さを説いています。親鳥がまだ孵化する気配のない卵をつついて割ってしまうと、恐らくヒナは死んでしまうでしょう。また、外側からつつくのが遅すぎてもヒナは力尽きてしまうかもしれません。その絶妙なバランスやタイミングのことを啐啄同時と称します。


スポーツの現場に置き換えると、ヒナは選手、親鳥は指導者と例えることができます。選手に良い結果を出してもらおうと急がしても何も効果が得られない所か悪影響を及びしてしまいます。かといって時期を逃してしまうと、取り返しのつかない場合も出てきます。


この絶妙のタイミングで働きかけてこそ、指導成果が効果的に発揮されます。選手は1人1人違いますから、当前、殻をつつくタイミングも違います。強要していても選手に準備が出来ていなかったら、まったく意味を持ちません。これは、指導者=選手だけではなく、先輩=後輩、親=子でも該当する例えですね。


殻を破るためには、殻を作ってもらわなければなりません。それは自分と向き合わせることでしょう。親鳥である我々は、まずは地道な観察です。何を基準にするかはそれぞれのヒナ(お子様)の成長過程です。「つつける状態」かどうかの判定要素を沢山仕入れるのです。これが時間がかかります。しかし、それが一番大切なことです。指導者としても、親としても、先輩としても、とても忍耐が必要だと思います。常に褒めても、常に厳しくてもダメなんですよね。相手に合わせた指導が求められます。


日頃の練習では、小学4年生の桐吾がまさにその状態になりつつあります。練習に対して意欲的でとても真面目に練習しています。人一倍声を出し、周りを盛り上げようと努めてくれます。身体が細く、何度レスリングをやめようかとモチベーションが低下する時期もあったでしょう。いま、彼はのびのびとレスリングを楽しんでいます。


こうなるまでに、沢山の時間や沢山の心労をかかえるでしょう。けど、「成長」や「変化」って、そんなに短期間では感じられないものです。毎日、身長をはかっても伸びない自分に苛立ちを抱えた経験をされた方は少なくないのではないでしょうか(笑)。


ただ、啐啄で大切なことは、環境です。ヒナが安全に安心して生まれてこれる環境です。FFCでは、その環境を選手保護者1人1人が温かく見守ってくださり、その温かい環境があるからこそ、子供が伸び伸びと成長することができます。失敗したり、時には挫折したりしますが、それでも自分と向き合い、取り組むことができます。桐吾には、1つ年上の涼馬や晴紀という素晴らしいお兄ちゃんがいます。「環境が人を育てる」と言いますが、まさにFFCとして大切にしていきたい特徴の1つです。是非とも良き風習を受け継いでもらいたいものです。