書生のはつめいではないおとなの発明とはこうだ。

 

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大昌建設株式会社】急斜面で活躍する重機に世界が驚いた!千葉を拠点に将来の海外進出を目指す。

 
一部転載:

急斜面で活躍する重機に世界が驚いた! 千葉を拠点に将来の海外進出を目指す

重量5トンはあろうかというバックホー(油圧ショベルカー)が、ほぼ垂直に切り立った崖の中腹にいる。断崖絶壁にキャタピラを這わせているとはいえ、いつ滑り落ちてもおかしくはないように見える。見学者は一様に息を飲み手に汗握るが、オペレーターは慣れた手つきで黙々と作業をこなしている。常識では考えられない光景だ。こんな場所でこんな工事が事故もなくできるのは、世界広しといえどもただ一社、千葉県の大昌建設だけだ。どうしてこんな凄いマシーンを思いつき作れたのか、本部長の岡本成志取締役専務に話を聞いた。

国土と人々の暮らしを守るために活躍する特殊重機たち

当社の仕事を知ってもらうために、まず「法面」(のりめん)という言葉を説明します。例えば山間部や海沿いの道路を走っていると、斜面をモルタルで吹き固めた人工の「崖」を見たことがあるでしょう。あれが「法面」です。
法面は崖崩れ・土砂崩れを防いで、下を通る道路や線路、あるいは民家を守るために作られるものですが、皆さんはあれがどうやって作られメンテナンスされているか想像されたことがあるでしょうか? 高さ数メートル〜十数メートルであれば、ショベルカーが腕を伸ばして作業ができます。ところが数十メートル〜数百メートルにも達するものだと……。普通は重機が入れませんから、まず足場を組んで、作業員が崖の上から伸びた命綱に摑まりながら、少しずつ仕事をするしかありません。
当然ながらたくさんの人手、それも熟練した職人たちが必要です。危険と隣り合わせの現場で慎重に作業しなければなりませんから、平地の何倍もの日数がかかります。
ところが、当社の特殊重機はこうした法面でも、難なく作業をこなすことができます。ほかの現場が足場を組んでいる間にもう作業を開始して、人力とは比べものにならないパワーで仕事をこなし、足場の解体も必要なくスムーズに撤収します。作業に関わる延べ人数が圧倒的に少ないため、事故の危険が少なく、かつ工期短縮で予算も大幅に削減できます。
これらの特殊重機は当社が独自に開発・製造し、もちろん特許を有しています。近年は類似品も出ているように聞き及びますが、我々は「ロッククライミングマシーン」が完成してから15年、構想・開発段階まで遡れば25年を費やし、日々改良を重ねて進化させています。安全性・信頼性で類似品の追随を許すものではありません。
高所法面の掘削・整形作業を行う「ロッククライミングマシーン(RCM)」のほかにも、法面に杭を打ち込む「アンカーロックマシーン(ARM)」、ショベルカーでは到底届かないような高所にもバケットが届く「テレスコブームマシーン(TBM)」など約90台を所有しています。当社にしかない重機ですから、操作できるのも当社の社員だけです。
日本は国土の60%以上が山地である「山の国」で、崖や急斜面は無数にあります。そうした山々を切り開いて道路や鉄道を通し、その近くに人々が暮らしてきました。法面工事は狭い国土を有効に活用するための知恵であり、欠かせないインフラです。これを独自の工法で作り守るのが、当社の使命です。


創意工夫が生み出した技術が、全国で必要とされている

さて、そもそもどうして当社が、こうした特殊重機を使うようになったのかをお話ししましょう。
当社の前身は私の父が興した土建屋で、兄(現社長・岡本俊仁氏)と私が引き継ぎました。その時点で会社は事業の失敗などが続き約3億円(現在の価値で約25億円)の負債を抱えていました。マイナスからのスタートです。兄と私は正月三が日以外は休みを取らず、文字通り身を粉にして働き続け、10年かかって借金を返済しました。
主に林道工事を請け負っていたのですが、下請けゆえに割り当ての予算が非常に限られ、他社と同じことをやっていては生き残ることができません。何とか人件費を抑えながら高所作業ができないかと、知恵を絞って考え出したのが、バックホーの腕をクレーンに付け替えた改造重機でした。
もちろん資金はありませんから、中古重機パーツを寄せ集めて作ったポンコツです。毎日作業を終えた後、社長と二人ガレージに籠もってトントンカンカンやりました。そうして何とか作り上げたのが「テレスコブームマシーン(TBM)」で、当初20メートル程度の高さまで届く機械でした。その後メーカーに製作を依頼し45メートルの高さまで届くようになりました。
しかし、請け負う工事には高さ200メートルの現場もあります。どう考えても人力で作業するしかないのに、役所は機械作業の予算しか付けてくれません。かくなる上は重機を上げるしかない。バックホーの排土板をジープの電動ウィンチに付け替え、巻き上げて上っていく方式を考えました。考案からは10年近くかかり「ロッククライミングマシーン(RCM)」1号機が誕生しました。
役所の人たちは、もともとは自分たちが〝無茶ぶり〟をしたにもかかわらず、崖を上っていく重機を目の当たりにしてビックリしていました。それを運転していたのは、誰あろう私です。
噂を聞きつけて建設土木会社や地方自治体の問い合わせが相次ぎ、ロッククライミングマシーンは引く手あまたになりました。法面のモルタルは、40〜50年おきにいったん剥がして吹き替える必要があります。重機が使えればまさに百人力です。需要が尽きることはありません。
ロッククライミングマシーンは改良を加えながら、一台また一台と増えていき、現在は70台を揃えます。新型の開発・製造は子会社のマシーン商会が一手に担い、これを使った工事は当社が一手に引き受けます。この工法では間違いなく我々は独占企業と言えるでしょう。