番外編・ある職人 7 | 徒然とわ日記

徒然とわ日記

日々の暮らしの中、心に留まった事を綴ります(^-^)
雑記帳みたいなものです。
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今日もまた1人、見送った。
まったくハンターってやつは…。

風吹く荒野の墓地には、無数の小さな墓標が並ぶ。

あたし達はもう何代も前から…つまり爺さんの父ちゃんくらいの代から、依頼に失敗し(モンスターに敗れ)て狩場に置き去りになっているハンター達の遺体回収を生業にしていた。
まぁ、言ってみれば観測隊の下請け業者とでも言うべきかな。

え?よくそんな仕事を生業にしているよなって?


確かに始めた頃は、そりゃもう精神的にキツかったさ。
なにしろ死体…それもモンスターによってバラバラにされた死体が目の前にあるんだからね。
噛み砕かれた防具からはみ出した内臓、頭や手足の欠けた身体、五体満足な状態の死体なんてありゃしない。


それにね…彼等の中には、あたしらが到着した時にまだ息がある者もいた。
もがき苦しみながら息絶えるのを見たのも…一度や二度じゃない。
誰かの名を呼びながら逝く者、死にたくないとあたしにすがろうとする者。
もう助からない奴を楽にしてやったことも、実は…ある。

流す涙なんて、とうの昔に枯れ果てた。
彼等の無念を思うと今でも胸は痛む。
けれどいつしか、生命の循環の一部として死というものを見られるようになった。

千切れた肉体をできる限り回収し、残した道具なんかを持ち帰り、もしも遺族がいれば形見の品としてそいつに渡してやる。
髪の毛ってのがダントツで多いんだ。指や目ん玉なんか欲しがる遺族はほとんどいないだろ?

まともな人間なら二日と持たない…そんな作業を淡々とこなせるあたしの心は、もはや正常ではないのかもしれない。


実はね、あたしは父ちゃんの後を継ぐまでハンターだったのさ。
本当は、このままずっとハンターとして生きていきたかったんだよ…。




「オレのこの身体はこいつの血肉となって、こいつが死んだら、また次の誰かの糧になる。
そうやって生命の循環の輪に入っていれば、オレはずっと1人じゃないんだ…。」

途中鈍いうめき声を挟みながら、あいつはあたしの目の前で生きたままモンスターに喰われた。
あたしは…情けないことに、指一本動かせなかった。声すらも出せなかった。
腰が抜けて、ああ…魂も抜けていたのだろうか……。


あいつの残した武器は、新米ハンターの手に渡って、その危機を救ったという。
あいつの残した防具は、小動物の住みかとなった。

あたしはあいつの嫁さんでも恋人でもなかった。
あいつがあたしに残したのは、どうしようもない悲しみと、ただ一度の優しい唇の感触だけだった…。


身寄りの無かったあいつの墓標の後ろには、ずらっと小さな石群が並ぶ。
今日葬ったのは、長身の男のハンターだった。
妻だという女が、遺品の仮面を自ら埋めて、ずっと墓石にしがみついていたっけ。

隣に立つ初老の男は墓石を見つめながら、小刻みに肩を震わせていた。

「この……大馬鹿野郎が……!!」

……あたしらみたいな独りもんじゃないハンターも多くいるわけで、なんつーか、こう、うまく言えないや。



さて、あたしもいつまでこの仕事ができるかな。
死ぬまで縛られるのかな。まあ、あたしの代わりなんかいくらでもいるんだろうけど。
それでも身体が動くうちは、傷ついた戦士たちをせめて、綺麗に眠らせてやりたいな。


「旦那しゃん、お仕事ですにゃ。」
元オトモが依頼を持ってくる。
「ああ、じゃ、行ってくる。夕飯はあっついシチューが良いなあ。」
「了解ですニャ、あつあつニャ!」
見送るアイルー。あたしのたった1人の身内。
あたしが死んだら、こいつが不自由なく暮らせるようにしてやりたい。
死んだあいつの、忘れ形見。


今夜は月が一層キレイだ。





とわ&GG共著






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