久遠の誓契 (くおんのちかい) 2 | 徒然とわ日記

徒然とわ日記

日々の暮らしの中、心に留まった事を綴ります(^-^)
雑記帳みたいなものです。
見てくださったら嬉しいです(^_^)/

式は晴れの日と決めていた。
せっかくのドレスや花々が、濡れて台無しになってしまうから。
太陽のように笑う姫には、晴れの日こそ相応しい。


「姫、入るよ。」
控え室の扉が開き、声の主が滑り込むように入ってきた。
真っ白なタキシードに身を包んだワグナーは部屋の中央に視線を移す。

純白のドレスに身を包んだ虎姫が、髪に花を挿しているところだった。

「うん…できたわ。」
壁に立てかけた姿見を前にして、様々な角度で自分を映しながら最後の確認をする。

─ー最高の自分。
花嫁は満足げに小首を傾げ、鏡に映る自分を眺める。
装身具と小一時間格闘し、こだわってこだわって、ようやく満足のいく出来になった。
どう?くるりと回って、ポーズを決める虎姫。

「わあ…とても綺麗だ。…ああ…なんかこう、良い言葉が見つからないな…。」
花嫁の傍に立ち、花婿は彼女の肩をそっと抱いた。
2人で並び、鏡に映る互いの晴れ姿を見る。

「あなたも素敵よ。誰よりも…。」
虎姫がにっこりとワグナーを見上げたその時。

……さらっ。

花婿の銀の髪が、花嫁のドレスの胸元に滑る。
肩に落とされた、優しい口づけ。

「これまでで生きてきた中で、今が一番幸せかもしれない。」
虎姫の頬にそっと手を添え、愛おしそうに撫でるワグナー。
透き通るようなブルーの瞳が、まるで宝石のようだ。

「ずっとずっと…キミを大切にすると誓うよ。」
「ワグナー…。」
視線を交えたまま…、
ゆっくりと互いの顔が近づき……。

そっと重なった影は、しばらくの間その動きを止めた。
髪飾りの真っ白なバラの花びらが1枚、ふわりと宙を舞う。



「ちょっと、にーにが食べてどうするの!お客様のお料理足りてる?」
とわはざわめくホールを小走りで駆け回りながら、客席でこんがり肉にかぶりつくガロンをトレーで小突いた。
「あん?俺たちも食っていいんだろ?」
今にも、着慣れぬスーツのボタンが弾け飛びそうだ。
「食べて良いけど、手伝いが落ち着いてからにして!…あ、はい!」
客に呼ばれて対応に向かうとわ。

ガロンはホール内を見回した。
何かとびきりうまそうなものはーーと。

オトモアイルー達が客の合間を縫って、忙しそうに給仕に当たっている。
よく見れば、スーツを着込んだナイトらしき男が、ホールの隅で腕組みをして壁によりかかっていた。
「お、ナイトの野郎もいるじゃねーか。」
ガロンは思わずにやりと笑い、そちらに近づいて行った。
巨体に気づいたナイトも、片手をあげて挨拶する。

とわは、ホールの中央、虎姫の両親と言葉を交わすつかさの元へ向かう。
彼女の執事も、そのテーブルのグラスが空にならぬよう、手伝ってくれていた。
とわは彼に会釈して、特別に焼いたお茶菓子をテーブルに乗せる。
「わたくしからの皆様への気持ちです。お祝いと感謝を。本日はご出席下さり、ありがとうございます。」
つかさが、そっととわの頭を撫ででくれた。
相変わらずの美しい微笑み、その優雅な仕草に、つい見とれてしまう。
「あなたも少し休んだら?」

ちょこん。
とわも彼女の隣に席をもらって、その輪に入る。
朝から走り回った脚は、ジンジンしていた。
人が集まる場所を管理するのは、こんなにも大変なことだったのか。
改めて、自分の生きてきた世界がいかに狭いかを思い知ったとわであった。


ふう。ティーカップをテーブルに置いて一息ついた頃、会場にざわめきが起こった。
とわはそちらへ顔を向ける。
歓声の中、兄・ワグナーと、義姉・虎姫の姿が見えた。
寄り添って歩く真っ白な2人。

ーーーああ、ものすごく綺麗だわ…。お人形みたい…。

愛おしげに虎姫をエスコートするワグナー。その腕に身をまかせ、幸せそうに笑う虎姫。
いつか自分もああいうものを着て、ああして笑う日が来るのかな…。
いや…自分には真っ白は似合わないだろう…。
輝く光を目の当たりにし、己の闇を実感せざるを得ない。
とわは思わずため息をついた。


ワグナーと虎姫は2人揃って、来客に挨拶してまわる。
親族、友人たち、通りすがりの村人たちに、見知らぬハンターたち。
彼らは一様に、新郎新婦に餞けの言葉をくれた。
途中、キスやお姫様抱っこの披露を求められ、若き2人は赤くなったり。

会場を一周し、最後に、虎姫の両親と師匠・つかさ、とわの元へたどり着く。
挨拶と握手を交わす。
そして、彼らの見守る中、ワグナーと虎姫は、金銀火竜の結婚指輪を交わし、夫婦の誓いをたてる。

これで、晴れて、彼らは夫婦となった。
虎姫の母は、そっと目元を拭った。
いつもは饒舌な彼女の父は、なんだか口数が少ない。
彼らを囲むように人の輪ができ、大きな大きな喝采があがる。

自分たちで考えた式。
なるべく簡素にと思ったのだが、お色直しだけは、どうしてもしたかった。
幸せをかみしめつつ、ワグナーと虎姫はお色直しのために控え室に向かった。



つづく
とわ著