ガロンは構えていた大剣を降ろし、ドドブランゴの目を見つめた。
………………。
静寂がその場によぎる。
どうやらドドブランゴには争う気が無いようだ。
まるでガロンに話しかけるかのように、グォ、と声を出す。
ナイトは太刀の柄に手を添えたまま、注意深く、ドドブランゴの一挙手一投足を見守る。
さて、こちらはジェット君。
雪に足を取られ、小さな雪の玉になりながら、斜面を転げ落ちていた。
「アニャニャニャニャ~~!ホニャニャ~~!」
ゴロゴロゴローー!
斜面を勢いよく転げ落ちてきた雪玉が虎姫の足にぶつかる。
「きゃ!」
雪玉が割れ、
「ウニャ~、ひどい目にあったニャ~。」
中から姿を現したのは…。
「え?ジェット君?なんでここに…。
じゃなくて、ナイト様が近くに居るのね!」
「ニャ?」
ジェット君が顔を上げると、虎姫と見知らぬ少女ハンターが彼を見下ろしていた。
「ちょうど良かった!ナイト様の所へ連れてって!」
月が昇って来た。
雪道が、ほのかに光る。
暗いところにも目が慣れてきて、娘ハンターたちは、オトモの誘導でひた走る。
「もうすぐですニャ!」
やがて、男の雄叫びとモンスターの咆哮が聞こえて来た。
虎姫が虫を飛ばす。虫の飛んで行く方に、走って行くとーーーー。
「くっそーーー!強ぇな、おめぇ!」
虎姫が目にしたのは。
参ったぜと転がるガロン、腕組みをして頷くナイト。
2人とも着衣はヨレヨレだが、清々しい表情(かお)をしている。
真ん中に樽がドーンと置かれ、親子と見られる男女2人、それから白い髪飾りの少女。
「メイリン!良かった!」
虎姫と一緒に来た娘ハンターが、髪飾りの少女に走り寄る。
「痛いところはない?何かされなかった?」
妹は、頷いた。
虎姫は、軽く混乱していた。
ーーえーっっと……?
「よーし、次は俺だ!」
ナイトがユクモ装備を片肌脱ぎにする。鍛えられた上半身が露わになり。
ーー樽に腕を乗っけて……3、2、1、GO!って、ええ~~~??
真っ白で厳つい牙のでっかいゴリラみたいなモンスターとナイトが、腕相撲を始めた。
ガロンが転がったまま、こちらにひらひらと手を振る。
「よぉ、お嬢ちゃん。なんだなんだ、こんな山奥なのに、よく知り合いに会うなあ…。」
「………。」
虎姫の目はとうとう、点になった。
がたーんと、ナイトの身体が飛ばされる。
「うおっ、強ぇ!」
痛てて…ナイトが起き上がりながら挨拶してきた。
「あら。姫、お久しぶりです。」
焚き火で肉を焼き、みんなでかぶりつく。
「ってわけでよ、なーんか、こいつの言いたいことわかるんだよな、俺。
単に、力比べで遊びたかっただけらしい。」
ガロンが、隣のドドブランゴに肉を渡す。
「言葉が通じているわけじゃねーんだが、こいつも俺の言ってることがわかるみたいだぜ?」
「やっぱりお前、ゴリなんだよ。案外親父だったりしてな(笑)。」
ナイトの発言に、ガロンが、わははと笑う。
「さっきもそこの嬢ちゃんに話したんだが、こいつは人間は食ったことは無いそうだ。
今までここに供物として置いて行かれた者達は、こいつが発見した時にはすでに事切れていたらしい。
……哀れな話だよな……。」
ガロンの言葉に、虎姫は言う。
「戻って皆に伝えて、そんな間違った風習は無くさなきゃ!」
「でも、それがこいつの言葉だって、ここにいる俺たち以外の誰が信じるよ?」
ガロンは神妙な顔をする。
「俺が聞いたって言ったところで、『頭おかしい人』でお終いだぜ?」
「…私たちが居ます。」
父娘が言う。
娘は、きちんと正座して穏やかに話す。
「供物として捧げられた私なら、実際は主様は人を喰らう化け物では無いと証言できます。」
「だがなぁ…逃げ出して生きて帰って来たんだろって言われねぇか?」
と、ガロン。
「レンリンとメイリンも証言できるわ。」
虎姫が言うと、ナイトが思いついたように顔を上げた。
「芝居を打つのはどうだ?
その親父さんの話だと、紫の髪の娘はモンスターと意思疎通できるって噂なんだろう?
我らの知り合いに、いるじゃないか。うってつけの娘が。」
「とわか…。」
ガロンがちょっと考え、うーんと唸る。
「今でも結構狙われてるからなぁ。あんまり、不穏要素は作りたく無いんだが。」
「うーむ…。大臣はもう居ないのに、お嬢はなぜいつまでも狙われるんだ?」
「元々は、俺はそれを調べにこの土地に来たんだ。
あいつをよく思わない、かつての使用人なんかもいるだろうしな。
伸びてきた触手をぶちのめすことはできるが、大元を締めないと、いつまでも続くだろう?」
ガロンがまともなことを語っている。
虎姫もナイトも、ちょっと驚いた。
それに気づいたのか、ガロンは失礼なヤツらだなと笑った。
「あいつは妹なんだよ。」
「俺も同行しよう。彼女はもう、1人の女として生きるべきだと思う。」
「あたしも行く!妹だもん!」
ちょうど気合が入ったところで、
ブゥゥゥッゥゥゥッ。
「くっせぇーーーー!このゴリ!何すんだ!」
「俺じゃねえよ!あいつだろ?!」
見ると、ドドブランゴが気持ち良さげにかました後だった……。
「おーし、負けていられねぇぜ!」
気張るガロンの脳天にナイトの拳がめり込み。
ブラック虎姫がガロンを踏みつけるのを見て、主様が怯えたのは、内緒の話…。
つづく
とわ&GG共著