ドンドン!ドンドン!
風の音にしては規則正しい。
ガロンは親子に下がってろと合図し、そろりと木戸に近づいた。
大剣の柄に右手をかけ、威嚇するような低い声を出す。
「何者だ。」
すると、一瞬の間の後、聞き覚えのある声が。
「……もしや、その声。ガロンか?俺だ、ナイトだ!」
「ああ?編み笠ぁ?……なんでお前がこんな所に……。」
「とにかく開けてくれ。実はそこで女を拾っちまってよ。」
ーー女?
疑問に思うことは山ほどあるが、ガロンが少しだけ戸を開けてみると…。
そこには女性を担いだナイトが立っていた。
その女性を見て、ガロンは仰天した。
麓のキャラバンで出会った、あの妹であった。
「おい編み笠!そいつの姉はどうした!一緒にいたはずなんだ!」
ぐったりと意識の無い妹。
ナイトは彼女を降ろし、全身の状態を調べる。
「いや、彼女1人だったが?この先に、変な祭壇みたいのがあるだろう?あそこに捨てられていた。殴られたみたいだな、顔が腫れている。」
「祭壇?」
ガロンの疑問には、父親が口を開いた。
「もう少し登った所に、あるのですよ。人身御供を捧げる場所が。娘も一度、そこに連れて行かれました。」
父親いわく、監視に言われたとのこと。逃げるも殺されるも勝手だが、どちらにせよ、お前らの居場所はもうあの村には無いと。
父親は、愛する娘と共になんとか生きてこの雪山を降りようと、ここまで降りてきたらしい。
今度はナイトが口を開く。
「俺はとある村の村長から、この山のモンスターを掃討して欲しいと依頼を受けた。」
その頃、姉妹の姉は、キャラバンまで必死で走って戻って来ていた。
「妹を見ませんでしたか!?」
全身雪まみれで、息がかなり上がっている。
キャラバンの全員の視線が彼女に集中する。
その中から、操虫棍を携えた女性ハンターが進み出てきた。
「詳しく聞かせて。」
「おい、姫、食事中に離席するなんて行儀悪いぞ。」
女性の父親だろうか、大商人と言った風情の男が彼女を叱る。
「父さま、世の中にはご飯より、礼儀より大事なこともございます。
この方の妹さんが、この雪山で迷子になっていたらどうするのですか。」
快活な雰囲気の娘は逆に父親をたしなめ、大きく息をつく少女に問う。
「妹さんとはぐれたのですか?」
少女は語りだす。
ここキャラバンで話した大男の言葉が気になり、姉妹2人で後を追って山を登り始めた。
足跡が残っていたのでそれを追って来ていたが、途中、複数の男にすれ違いざまに襲われた。
親子が逃げ出して、供物の役割を果たさなかったら責任問題だとか言っていた。
そして、やはり大男の言うように、髪飾りがどうの、と聞こえた。
妹だけが連れ去られ、自分は悪戯されそうになったのを何とか撃退した。
男たちは、途中でのたうちまわっているだろう。
「わかったわ、あなたハンターよね?あたしと一緒に探しに行きましょう。」
虎姫は、アイテムポーチのベルトをキュッと締めた。
「ありがとうございます!」
「おいおい虎姫!」
慌てる父親。
「父さま。お聞きになったでしょう?同じ女として、これが行かずにいられましょうか。」
「しかし…お前は結婚を控えた身…何かあったら…。」
「父さま!いい加減になさって!心配も度が過ぎると迷惑だわ!」
父の心配はよくわかる。でも行かなかったら、きっと後悔する。
ワグナーも、きっと飛び出して行くだろう。
だから、あたしも、自分の思ったように生きるわ。
虎姫は、振り返らずにキャラバンを飛び出して行った。
「どっちの方?」
「あっちです!暗いので、あまり離れず行きましょう!」
娘たちは、駆け出した。もう暗くて、人の行き来の痕跡を辿る。
その頃、ナイトのオトモ、ジェット君は、主人の言いつけで、暗い道を4つ足でひた走っていた。
早く麓の人たちに知らせなければ!
ーーー大型モンスターが姿を現したと。
ガロンたちは、地揺れに思わず立ち上がる。
「近いか?」
「ああ…近そうだ…。」
ナイトが木戸を開け放つ。
このあばら家は、ちょっとの振動で簡単に出入り口が塞がれそうだ。開けておく方が良い。
「ぬ…主様が現れた…。」
怯える娘をしっかりと抱きしめる父親の声が、わずかに震えている。
ナイトは、聞き耳をたてる。
雪崩の地響きでは無い。しかし、何かが居るのは確かだ。
揺れは不規則で、時折吠える声が風に乗って届く。
少なくとも今の段階では、こちらを見つけて排除しようという風には感じられない。
ガロンは外に出た。
未知のモンスターだが、不思議と恐怖は感じない。
吠える声も、何だか無邪気ささえ感じられる。
地響きはどんどん近くなる。
親子を近くの大きな木のそばに避難させ、ガロンとナイトは、「主様」の姿を待った。
やがて現れたのは、かなり大型のドドブランゴだった。
ガロンたちを見ると、歩みを止める。
そして、一声、グォッと鳴いた。
つづく
とわ&GG共著