「ねえ、ナイト様。」
しばし何か考えていたとわは、ナイトに声をかける。
「何です、お嬢?」
「ナイト様は、金と銀のリオ夫婦のこと、ご存じ?お詳しいようなら、ぜひお話を…。」
「……希少種のことですか?」
「ええ、そうですわ!以前、古龍観測所に資料を見に行った時にね、かなり古い本に記されていたのよ。
伝承めいた、たった十数行のものだったけれど。」
まるで、お伽話の世界。
分類は古龍種ではないものの、未だ完全には生態が解明されていない、希有な存在。
その体は、荘厳な銀色と、煌めく金色だという。
「おい、とわ。最近外出が多いと思ったら、お前…あんな所に行っているのか?」
「そうよ、何かおかしいかしら?」
大真面目に答えるとわに、ガロンは、うへぇ~という顔をした。
「いや…ああいうカビ臭くて肩の凝りそうな場所は好かねぇなぁって…。」
呆れた、というようにガロンを見やるとわ。
「あそこには、古龍以外のモンスターの生態の本もたくさんあるのよ。あんたも少しは勉強したら?
ジョン=アーサーの書いたものも、伝説の古龍の資料もたくさん揃ってるんだから!」
ガロンと言い争うとわに、ナイトは、改めて問う。
「お嬢は、古龍に興味があるのか?」
「あの…笑わないでくださいね。わたくし、王立古生物書士隊に入るのが夢なのです。」
瞳を輝かせるとわ。
「はぁ?お前が?」
手にした骨付き肉が思わずテーブルに落ちる。慌てて拾うガロンを横目にしながら、
「お嬢、本気か?」
ナイトはとわを見る。世間知らずのお嬢様の夢物語だろうか。
彼女は、まっすぐにナイトの目を見返し、頷いた。
そして、かばんの中から、何冊ものノートを取り出して並べる。
「ええ…。わたくしみたいな未熟者では、無理な話かもしれないけれど。勉強はしていますわ。」
ナイトは、ノートを手に取る。
彼女が観測所で聞いた話、調べた話が細かく書き込まれている。自分で戦ったモンスターの記述もある。
……一応、お嬢なりに頑張っているわけか……。
とわの真摯な眼差しに、ナイトは笑顔を見せた。
「無理ってことはないですよ。」
「おいおい…編み笠…。」
「編み笠じゃねぇ、俺の名はナイトだ。
いいですか、お嬢。確かに今のあなたでは、実力的には難しいでしょう。
しかし、まだあなたは原石。これからどういうハンターになるかという時です。
それに、まだ行動していないのに、やる前からあきらめてどうする?」
「……。」
「お嬢ができることをすべてやってみたら良い。納得できるまでやり尽くすんだ。
それでも夢に届かなければ……また、その時に考えればいいさ。」
「わたくしにできること…。」
「そうです。」
「そうね。わたくし、まだ何もしていないもの。スタートラインにさえ立っていない。
まずは、ハンターとしてもっと腕をあげて、凄い依頼を受けられるようにならないと!」
ナイトはとわの肩をぽんと叩く。
「頑張れよ、お嬢。俺は、頑張るお嬢を応援しますよ。」
「ありがとう、ナイト様。」
自分の前に、細いながらも道が開けたのを、彼女はうれしく思った。
そこに、朝早くから採取に出ていたジョウジ達が帰ってきた。
「おはようございます、お嬢様。昨夜はよく眠れましたかな?」
「…おかげさまでね。それにしても、黙って置いていくなんて酷いわ、爺や。」
脹れっ面のとわ。
ジョウジは苦笑いしながら、すみませんと荷物を下ろす。
「爺や殿、お嬢からお話は聞きました。兄上殿に祝いの品を贈りたいとのことで…。」
「ほう、お嬢様がお話しましたか。それで何か進展はありましたかな…?」
シオンが義足を外すのを手伝いながら、ジョウジは顔をこちらに向ける。
「ナイト様は、リオ夫婦の素材を使っての結婚指輪はどうかって。」
夫婦仲の良いことで知られるリオ夫婦。カップルへの贈り物には最適であろう。
「ふむ…そうですか。」
ジョウジの眉間に皺が寄る。
「どうしたの爺や、難しい顔をして。」
実は、と語り出すジョウジ。
最近この辺りで、銀火竜…リオレウス希少種の姿が度々目撃されていると言う。
「それ、本当なの、爺や!」
興奮気味にとわが立ち上がる。
「ええ、りんね殿の話では、おそらく金火竜も一緒にいるのではないかと…。」
シオンの妻りんねが、みんなにミルクを運んでくる。
「村でも何人もが目撃しているのよ。なんでも、頭部に傷のある奴だとか。」
――頭部に傷…。ハンターとやりあったことのある奴か。
ナイトは、腕を組む。
警戒心も人一倍強いかもしれんな…。
つづく
とわ&GG共著