真っ赤な視界に、躍り出る影。一つでない。いくつも。
なにこれ…熱い……。
逃げなきゃ…、
逃げなきゃ…。
本能が逃げろと命令する。
しかし、幼子の体は鉛のように重く、金縛りにあったように微動だにしなかった。
ああ…
父上みたいな声がする……
ぼくを叱りにきたのかな……ごめんなさい……
地を交う様々な音を、幼子は朦朧としながら聴いていた。
大人の男の声、耳につく何かの鳴き声、足音、何かが倒れる音。
やがて、金属音が勝ち鬨をあげ、辺りから耳障りな音が消えた。
幼子が意識を失う前に最後に聞いたのは、走り寄る人間の足音だった。
ランポスというのは、この辺りの森に住む、青い体の鳥竜種である。
肉食で攻撃性が強く、集団で狩りを行う。
ハンターならばよく相手をするが、一般人が出会ってしまったら、それこそ生きて帰れる確率は低い。そんな厄介なモンスターだ。
目をあけると、誰かが自分を覗き込んでいた。
「生きてるか、ぼうず?」
幼子はびっくりして、ぎゅっと目をつぶった。
もう一度、おそるおそる目を開ける。
やっぱり同じ顔が覗いていて、思わず口から出た言葉がこれだった。
「きゃーーー!!」
少々面食らったような男。
「おいおい、俺はお前を食べるつもりは無いぜ。
それより…何でお前みたいなチビが、こんな所に一人でいるんだ?」
未知の樹海。
ハンター達でさえ相応の支度を整えてから、足を踏み入れる場所だ。
そんな場所になぜ。
聞いてきた青年に、子どもはたどたどしく話した。
皆でピクニックに来たこと。
丸い大きな鳥を追いかけていたこと。
「それにしても…」
青年は子どもを見回す。
「お前、よく生きてたなー…」
良家の子息なのか、真っ白なドレスシャツに可愛らしい蝶ネクタイ、サスペンダーで吊られたズボンに、作りの良い革靴。
さらさらとした銀の髪に、くりくりした真っ青な瞳。
白シャツは出血で所々赤く染まり、あちこち破けている。
「もう怖いのいないから大丈夫だぜ。」
青年は子どもの頭を撫でてやった。
とわ&GG共著