ネズミは歌い、新しい調べを覚える




ネズミのオスは自分の歌の調子を変えることができるという。




音史のブログ-ネズミ

パイプから顔をのぞかせるハツカネズミ(資料写真)。



Photograph from Juniors Bildarchiv GmbH/Alamy





 アメリカ、デューク大学の神経生物学者エリック・ジャービス(Erich Jarvis)氏と同僚のグスタボ・アリアガ(Gustavo Arriaga)氏、エリック・シュウ(Eric Zhou)氏が発表した。



 ネズミの“歌”は2005年に初めて確認されていた。ミズーリ州セントルイスのワシントン大学で神経生物学と解剖学を研究するティモシー・E・ホーリー(Timothy E. Holy)氏と、プログラマーのゾンシェン・グオ(Zhongsheng Guo)氏の発見である。



 ネズミの声は非常に高音で人間には聞こえないので、ホーリー氏らは録音をスロー再生して分析した。オスはメスに求愛する際、メロディーとフレーズの繰り返しで構成される曲を歌うと明らかになった。チューチュー鳴くだけでなく、多彩な音節が含まれ、繰り返し登場するテーマもあった。



 ジャービス氏のチームはさらに踏み込んだ調査を実施。マウスを訓練すると、さまざまな調子で歌うようになった。ヒトやイルカ、クジラなど、限られた種だけが持つ能力だ。



◆ネズミの“歌合戦”



 ジャービス氏らの研究では、血統が異なる大人のオス2匹をメス1匹と同じ空間に置いた。8週間にわたり実験を続けた結果、オスは互いに歌う高音や低音をまねて、それぞれの歌が変化したという。



 ネズミの歌の研究は、発話や言語障害の解明につながる可能性がある。ネズミはイルカやクジラに比べ、繁殖や飼育下での調査がはるかに容易だ。遺伝子操作を伴う研究にも適している。



 また、そもそもネズミはなぜ歌うのだろうか。メスをうっとりさせる以外の目的もあるかもしれない。ジャービス氏によると、敵意などの感情を伝えている可能性があるという。「下等だなんてとんでもない。意外と頭が切れるんだ」。



 研究の詳細は「PLoS ONE」誌で10月10日に発表された。











<ナショナルジオグラフィック 記事より>